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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
61/503

変わるかもしれない未来

混乱していても、時間が経てば自ずと冷静になっていく。

まさしく今の状態の私だ。


「中学生に惑わされるなんて、私もまだまだだね。うん」


口に出して話すと、自嘲したくなる。

明智くんは動くなと言ったんだ。ならば動かなければ何も起きる事はない、気をつけるだけ。彼は確かに有言実行型だけれど、犯罪となったら別だ。犯罪ゲームの内容を実行するわけがない。冷静に考えればただの脅しと気付くのに、まともに受け取って動揺してしまった。


「はぁ、私の理想の大人になるにはまだ程遠いな」


体は子供だけど、考える力は大人のはず。もっと思慮深くならないとね。そう思ったら、小説なんか読んでいる暇は無いような気がした。


「さてと……」


私は改めて服に着替えると、受話器を持って居間に移動する。


「おはよう、花音」

「おはよう、お父さん」


さっき起きたのだろう、お父さんの髪が寝癖ではねていた。


「電話だったのか? 朝から早いな」


早すぎる電話に少し難しい顔をしている。


「時差が違うからね、向こうは日本が7時過ぎと思って掛けたみたいよ」

「外国からか?」

「うん。明智くんから」

「彼は外国に行ってしまったのか」

「今、家族と一緒に住んでるみたい」

「家族で……お父さんが海外転勤になったら、花音はついてきてくれるかい?」

「うーん、国次第かな? 馨も小さいし、お父さんに何か遭った時私がみんなを守れるかどうか」

「そ、そうだな」


お父さんがしょんぼりする。いかん、そんな具体的に聞いた訳じゃなかったのか。素直について行くよが正解?


「危険地域じゃなかったら、ついていくから落ち込まないで?」

「はは、ありがとう」


難しいな、父親とのコミュニケーションは。

テーブルに座ったまま新聞を読んでいるので、ご飯はまだのよう。私が用意してもいいのかな?


「ねぇ、お母さんは馨を寝かしつけてるの?」


私は台所へ行くと、昨日のシチューに火を掛ける。


「ああ、馨が眠ってしまったから」

「分かった。ご飯はシチューとパンでいい?」

「あるものでいいよ」

「温めるから、ちょっと待ってね」


焦げないようにシチューをかき混ぜながら、台所を見回す。うん、サラダが作りかけだから、シチューをお父さんへ出したらやっておくか。


「そうだ。昨日ね、知り合いがテレビに出てたんだよ」

「ほぉ」


新聞を広げて相槌をしてくれる。こりゃ話半分しか聞かないな。


「どっかの国のバイオリンの大会で優勝したみたい」

「花音は外国に友達が多いな」

「友達じゃないよ、知り合い」

「そうなのか?」

「だって道端で一回会っただけだもん」

「へぇ」


昔お父さんとお母さんの前で、貰ったキーホルダーについて説明したんだけど、もう忘れているんだろうな。


「ほら、小学生の時に銀色のキーホルダーを貰ったって言ったでしょ」

「そんな事あったか?」

「あったよ。その持ち主」

「友達じゃないか」

「違うよ、知り合いだよ」

「ははは」


新聞を読みながらなので、真剣に取り合ってない。まぁ、どうでもいい会話だから。温まったシチューを器に入れて、スプーンと一緒にテーブルに運ぶ。


「パンは焼くけど、チーズかバターを乗せる?」

「いや、焼くだけでいいよ」

「はーい」


固くなってきているパンを切り、トースターに入れるとサラダの続きを。といっても後はきゅうりやトマトを切るだけだろう。のんびりと切っていると、お母さんが台所へ戻ってきた。


「あら、花音。寝るの止めたの?」

「なんとなくね」

「あらあら。明智くんに何か言われた?」

「ははは、怪我しないでって」


サラダはお母さんが続きをするようなので、焼けたパンをお父さんへと届けに行く。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


新聞を読みながら、パンにかじりつくお父さんを横目にテレビをつける。土曜日特有の情報番組を見るためだ。今なら食事と新聞で手が一杯なので、チャンネル権は私にある。


「花音もシチューを飲む?」

「そうだね。自分で注ぎに行くよ」


リモコンをそっとお父さんから離れた場所に置き、シチューを貰いに行く。さりげなく替えられる事もあるので、油断は出来ない。


「そうだ、お母さん。私ちょっと出かけるね」

「体は大丈夫なの?」


魔法の眼鏡を掛ければ青あざは消えるだろうから、平気だ。


「明日愛梨ちゃんが来るからさ、クッキーの材料や色んなものを買っておきたくて」

「私が代わりに買っておくわよ?」

「平気よ。病気じゃないんだから」

「おいおい、それより試験が近いんじゃないのか?テスト勉強はいいのか?」

「そうだね、昨日休んじゃったから授業で何をしたか知りたいな」

「誰かノートを借りれないのか?」

「愛梨ちゃんから聞いてみようかと」

「クラスが違うんだろ?」

「でも同じテストを受けるもの」

「なら、同じなのか?」

「うん。それにテスト範囲だってもう発表されているから、教科書を復習すればだいたい大丈夫」


温かいシチューを器に盛ると、そっと口付ける。うう、美味しいなぁ。

期末テストはまだ大丈夫だけど、これから高校に入っていくとなると本腰入れて勉強しなくちゃ。いくら予備知識があるといっても難しくなってくるからなぁ。


「おはようございます!」


玄関から大きな声が聞こえ、人が居間まで入ってきた。もちろん咎められないのは、お隣の要だからだ。


「おはよう、要くん。朝早いね」


朝の急な訪問なので、お父さんがさすがに驚く。


「花音、さっきテレビで名前が出たぞ」

「へ?」


いきなりの話で戸惑う。どういう事?


「天ヶ瀬司がテレビで花音の名前を言った」

「は?」

「さすがに名字は言わなかったけど、花音にって」


ちょっと待て。どういう事だ?


「何で私の名前だと? 他の『かのん』さんかもしれないよ?」

「どう考えても花音だろ?」

「いやいや、私なんて彼にとってモブ同然」

「そのモブ同然の花音の名前を挙げたんだって」

「なんで」

「俺も驚いたよ。テレビを見てたら、昨日話してくれた天ヶ瀬司が出ててさ」

「うん」

「一位を取った事を誰に伝えたいかって、インタビューで聞かれたら」

「聞かれたら?」

「友達の花音にって、これからもっと色んな大会で頑張るから見ててって」

「ほら、友達のかのんちゃんがいるんだよ。私は一回会ったっきりの」

「それは小学校の時のお友達かな? と聞かれたら、一度会っただけの友達だそうだ」

「げ」

「ヤツがいた小学校は隣だぜ? ここ付近にかのんという名前が他に居なかったら」

「い、いなかったら?」

「伊賀崎花音に決定だな」

「ひぃいいいい」


怯える私に、要がこっそりと両親に聞こえないよう追撃してきた。


「もしかしたら、ゲームの天ヶ瀬司は最初から花音の事を知っていて、わざと忘れた振りをしていたのかもしれない」

「え、なんで?」

「だって外国で天才ぶりを発揮できなかったら、恥かしいじゃん。ゲームで無視されたのはそれが原因なのかもな」

「なら今も無視するはずじゃ」

「キーホルダーを拾ったんじゃなくて、渡されたんだろ?」

「う、うん」

「だから変わったんじゃないか?」

「変わる?」

「そう、出会いが変われば未来も変わる。花音のアクションであいつは変わったんだ」

「変わったって」

「国際コンクール、勝ってるじゃん。挫折しなかったな」


彼が同情するようにトントンと私の肩を軽く叩いて頷く。


「すごいじゃない、花音。やっぱり友達だったのね」

「そうか、友達か……」


両親が驚き、温かく笑う。お父さんなんか、チャンネルでその番組を探し始めた。優雅な土曜日が、どうしてこんな事に。ほんの少し現実逃避してベッドに入りたくなった。


「や……っぱり少し寝ちゃおっかな」

「それがいいよ」


要が同意してくれるが、手に持ったノートが気になる。それは私の恥かしいマル秘ノートじゃないですか! そう目立つように持ち歩かないで。


「ねぇ、『かのん』って名前、ポピュラーだよね?」


この場に居る三人に聞くも、少し頭を捻られる。


「今まで同じクラスで居なかったけど」

「命名ランキングでは高い方だったわよ?」

「ああ、そうだな、大丈夫だ花音。何かあったときはお父さんにいいなさい」


な、なんだかな。話が変な方向に進みつつないか? 眼鏡でお出かけを楽しみにしていたけど、そんな気分になれない。


「それじゃ、おやすみなさい」


とぼとぼと居間を出て、階段へ進むと要がついてきた。もう放って置いてください。


「大丈夫? 花音」

「ちょっと計画練り直す前に、夢の世界へ逃亡させて」

「それもいいけど、朝はなんだよ? 突然帰って」

「背が……身長負けたくないのよ」

「は!? 俺は男なんだから、追い抜くの当たり前じゃん」

「それでもよ。ゲームでも年下の要に頭を撫でられるシーンが多かったから、そうならない為にがんばろうと思ってたのに」


さっきさっそく頭に手を置かれてしまった。悔しいけど、混乱の方が頭を占めてる。


「なに、それ」

「年上は年上なりに負けたくないものよ」


階段を上りきり、部屋に入る。もちろん要も入ってきた。


「鉛筆借りるね。天ヶ瀬司、現在花音の為にコンクール制覇中っと」


私の机を使って痛い事を書き足している。嫌味ですか?


「私の事なんて忘れてていいのに……」


のっそりとベッドへ上がると、布団の中に入り込む。要は私の椅子を掴むと、ベッドの側へ持ってきて座った。頼むよ、少し休ませてくれ。


「でも彼は花音の為にいるようなもんなんだろ? ライバル居ないし」

「それは極端じゃないかな? あんな華麗な経歴を持つ人なら、隣は私じゃなく別の人が立つべきよ。それにそんな気力なんてない」

「夢がないねぇ」

「夢なんか無くていい」


私のことより、遥ちゃんたちが優先です。


「そうだ、水原くんは大丈夫そう?」

「怪我の事だろ? そんなに毎日言えないよ」

「うう、不便だなぁ。こんな事になるんだったら、もっとゲームを勉強してやりこんでいれば」

「毎回そればっかりだな」


要が笑い飛ばす。


「はぁ。幸せそうなカップルが見たいだけなのに、どうして天ヶ瀬司が」

「ついでに明智も忘れんなよ?」

「明智くんはお父さんだから」

「それが油断な気がするけど」


彼は責任感の塊だから恋愛とは遠い所にいるんだよ。自分のファンクラブにも興味ないからな。彼の前世は悟りきったお坊さんなのかもしれない。


「明智から逃げたかったら言えよ? 出来る限りなんとかするからさ」

「ありがと」


要には悪いが無理のような気がする。なんでだろうね。


「それにしても、花音の周りはすごいね」

「何がよ」

「王子様に騎士に貴公子と、派手なあだ名を持つ男がいてさ」

「王子様……みょ……明智さんか」


冥加さんと呼ぶくせを止めないと危険だな……要は知らないんだから。でもどうして外でその名を呼んだら駄目なんだろうか?


「明智と明智と天ヶ瀬、天ヶ瀬も明智だったら、面白かったのに」


何も面白くないぞ。正しくは、冥加と明智と天ヶ瀬なんだよ、秘密だから言えないしノートにも書けない。


「そういや明智くんから電話あったんだ」

「また? 彼もマメだね」

「私のお父さんだもん」

「それで、何か言われたの?」


言われたも言われたよ。私を労いつつ、釘をたんまりと刺されたさ。


「そうだ、クリスマスにコンサート行こうって誘われた」

「また明智来るの?」

「みたい」

「航空券代馬鹿にならないのに、すごいね」

「うん。責任感の塊だからね、彼は」


ああ、本気で眠くなってきた。冬の布団の温もりは睡魔の力が凄すぎる。


「何度も聞くけど、花音は王子様と騎士と貴公子誰が好きなの?」


頼むからその別称で呼ぶのは止めようよ。王子様が冥加さんなら、騎士は明智くんだよね? なら……。


「貴公子って天ヶ瀬司のこと?」

「テレビでそう呼ばれてた」

「恥かしい呼び名だね」

「それは俺も同情する。んで、誰か気にならないの?」


ああ、そうか。これはゲームでも在ったな。気になる人確認。これでほんの少し好感度に変化が現れるんじゃなかったっけ。下校中に会い易くなったり、デートに誘われ易くなったり。


「もう明智くんでいいよ」

「投げやりだな。本気で?」

「明智くんならそういう事にならないから、安心だもん」

「そういう事って、付き合うこと?」

「うん」


目を閉じていると、彼のため息がまた聞こえた。最近お互いため息ばかりこぼしてる。世の中って難しいよね。


「クリスマスにデートなんて、付き合ってるもんでしょ」

「違うよ、明智くんが気晴らしに誘ってくれたんだよ」


行動を制限してしまうお詫びなんだと思う。


「特別だって。年に一回の聖なる夜にデート」

「特別でもなんでもないよ。ちなみに夜じゃなく昼間だから」

「ゲームじゃそんなイベント無かったのかよ」

「うん。学校でノエルパーティがあったから」

「ノエルパーティって……」

「ボタン長押ししてたから、詳細はよく知らない。でもプレゼント交換とかもあったんだっけ?」

「おいおい」


あくびがでてしまった。睡魔の攻撃が激しいよ。


「もうさ、考える事が多すぎて疲れたよ。寝る」

「考える事って、まだ何もないだろ? このくらいで潰れたら高校やっていけるの?」

「想定外ばかりで、てんてこ舞いだらけさ」

「花音。逃げないの?」


逃げる? 何から?どこへ?


「そういえば、私、モブみたいに居たかどうかわからない存在になりたかったんだった……」

「は?」

「あの子いたっけ? 誰か知ってる? 知らないって言われたい」

「何寝ぼけた事ほざいてんの」


寝ぼけさせてくれ、眠い、すごく眠いの。


「もともと目立つ人間じゃないのに、目立つ事させられて……仕事とでも思わなきゃやってらんないよ」

「じゃ、俺と逃げる?」

「無理」

「どうして」

「要の幸せも見てみたい」

「俺と幸せになろうって思えない?」

「想像つかない」

「ちぇっ」


調査が面倒くさくなったんだな? 恐らく本当に発明一本に搾る気だ。それは絶対に阻止しなくては。

君は女子に人気のサッカー少年として眩しい未来を掴み取って欲しいんだからね。

あれ? そうなると水原くんとキャラが被っちゃったりするのかしら?


「サッカーする要はカッコいいから、辞めないでね」

「見たことあるのかよ」

「うん。いつかの日曜の試合を学校で見た」

「あー……あの時か」

「お隣さんが有名人になったら、サイン欲しいので、止めないでね」

「有名人にならなきゃ欲しくないのかよ」

「価値が違うからねぇ」

「おいおい」

「要も一緒に星雲高校へ行って学校生活を楽しもうよ」

「わかったよ。高校までキャラになりきってやる」


よし、いい感じ。これで本当にいいのかな? 彼の人生なのに私都合で振り回して。本気で機械作業が好きなら止めるべきではないのかもしれないのに。


「卒業したら、好きな事をするからな。絶対に憶えてろよ」

「はいはい」

「どうでもよさそうな返事はすな!」


でも出会いが変われば未来も変わるか。宇留間さんは無事と聞いたけど、今どうなっているのかな? 海堂一真の側で、一生懸命秘書になる為に勉強中なのか? 気になると少し目が覚めてきた。


「ねぇ、要」

「ん?」

「宇留間さんは誘拐されて感情を表に出さない人になった」

「あ、うん」


要がマル秘ノートを開いて確認する。


「なら誘拐されなかったらどうなるんだろう」

「明るいままじゃないの?」

「うん。そうだよね」

「どうしたの」

「明智くんが、宇留間さんを助けたら、別の人が誘拐されたって」

「は!? 明智って宇留間さんに近づけれたの?」

「SPみたいな所があるから、こっそり守ったのかも」

「ストーカーと勘違いされないといいな」

「警察に捕まってないから、日本に来れたんでしょ? たぶん」

「やっぱりすげー。普通に敵に回したくない」

「それは同意する。というか、どうやったら勝てるのか想像つかない」


明智くんを何とかしようとして、何とかできるのかな? どう考えても無敵に見えてしまうけど。そうだ、江里口くんなら勝てるかも!


「で、その別の人は大丈夫だったの?」

「うん。今は療養所で安静にしてるって」

「うわー。すげえ、助けたんだ」


どんな活劇があったのか、気になる所だけどこちらの未来も気になる。


「これだと、宇留間さんの未来は何か変わってしまうのかな?」


要が両腕を組んで悩む。


「どうだろ。誘拐に遭わなかったからって何か変わるもんか?」

「例えばだけど海堂一真だけが彼女の表情を変えられる、というのが消えるのかな」

「あー、まぁ理由はなくなるな」

「なら天ヶ瀬司も変わるよね」

「花音の名前を出してるのに?」

「高校に来ていた天ヶ瀬司はバイオリンから離れて遠巻きに王子様扱いされてた。けれど今の彼は挫折せずにバイオリンを頑張っている。ならば」

「ならば?」

「高校は日本を選ばないんじゃないかな?」

「なるほど。本場は向こうだもんな」


もしかして、これって成功例になるかも!


「これからもコンクールに出るつもりなら、日本への帰国なんてあんまりしないイコール私達に係わらない」

「高校卒業したら来るかもよ」

「高校でこっちに来なきゃそれでいいの」

「ふーん、そんなもん?」

「このゲームは高校卒業でエンディングなんだから」

「その先は?」

「本人達に頑張ってもらうんじゃない?」

「わぁお。結構手放し」

「お見合いだって最後まで手伝わないでしょ。それと一緒よ」

「お見合いと一緒にするか。でも出来るの?」

「やるわ」

「プライド高い海堂一真坊ちゃまと鉄面皮の宇留間七海お嬢様のお見合いセッティング、平気?」


改めて聞くと、躊躇したくなる2人よね。


「なんかちょっと冷静になった」

「なんか熱くなってたから、それは良かった」

「そうなのよね。向こうはお坊ちゃまにお嬢様なんだ。SPとか居そうな」

「世界が違う二人に近づくのも仲良くなるのも大変そうだし、彼らの背中を押すのは更に大変そう」


私、大それた事をしようとしていないだろうか。情熱だけでなんとか出来そうにない事も弁えておこう。


「まずは水原くんと遥ちゃんから始めるよ」

「まぁ、一番くっつく可能性高いしね」

「本当!? 水原くんの好みは遥ちゃん?」

「さぁな」


ええ! 知らないの? 無責任に喜ばせないでよ。一瞬、中学生でカップル成立を夢見てしまったのに。


「その前に傷だな。今の顔で近づいたら怖がられる事間違いなさそうだし」

「頑張るわ」

「おう。頑張れ」


要はノートを閉じると、ベッドに近づき私の髪をわさわさと撫でる。慰めてくれたのかなと思いきや、違った。


「学年上がる頃には身長追い越されてると覚悟しとけよ」

「なにぃ?」

「そしたら、たくさん花音の頭撫でてやるからな」


軽く私に向けて舌を出すと、笑いながら部屋を出て行った。


「くぅうう、今度体重掛けて頭を押さえ込んでやる~」


明日の朝を見てろよ。3センチは縮むと思え!!


「それにしても7組のカップルか」


ゲームの中じゃない、現実にいる登場人物たちだ。私みたいに動いて生きている。


「…全員を無事くっつけることが出来るかな」


彼らのこれからの行動を少し知っているのに、まだ先を見通せない。

中学二年生の二学期が終わるのに。



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