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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
59/503

天ヶ瀬司2

加納さんに家まで送ってもらいました。

いつもの怪しい黒い車しか知らない私は加納さんが車を回してくる間、駐車場で少しどきどきしてたけど普通の白い乗用車でした。

某国のスパイが使用する車の様に改造されてたり、暗闇の中を暗躍する某ヒーローみたいな特殊な装甲もない。安心しつつもちょっと物足りない気持ちになってしまうのはなぜだろう? 何を期待しているんだか。

ちゃんと道路交通法ってものがあるんだから、規則は守らなきゃいけないのに。

外国にはそういう規則あるのかな? 映画は平気で道路を走っていたけど、あれは無許可になるのでは?


「お待たせしました、どうぞ」

「は、はい」


車から降りると後部座席のドアを開けて華麗にエスコートする加納さんに、お母さんはがちがちに恐縮した。

気持ちは十分にわかります。こんな綺麗な人にそういう事をされたら、緊張しちゃうよね。私も車に乗りこむとドアを軽く閉めた。あれ? 閉まってないよ? といいかけた瞬間、カチャリとドアが閉まったのだ。

今の車ってすごい! そんな簡単に閉まるんですか! ファミリー車だけじゃなかったんだな。


「……」


運転席を見ると、ハンドルの側に異様な所が。

なにやらカードやらメモリースティックやら差し込んでいるのは、何の為だろう? 最近の車は知らないので、ちょっとわからない。

加納さんはシートベルトを締めると、静かに車を走らせた。ハンドルを握ったら不敵な顔になったり、他の車に追い越されたら性格が変わることも無く、お手本のような安全運転だった。


「すみません、無理に誘ってしまって」

「いいえ、娘を気遣ってくださったりと本当にありがとうございます」

「花音ちゃんはいい子ですから」

「そんな、注意力散漫で……まだまだ心配です」


分かってる、分かってますよ? 褒められたら、否定するのは世間話みたいなものだって。ご近所付き合いはそういうものなんですよね……。

私は口を閉ざして外でも見てますので、お2人で会話をお楽しみくださいな。

お母さんも加納さんとお喋りしていると緊張が解けたのか、楽しそう。

加納さんはミセスにも受けがいいのか。

これは完璧だね。化粧品から最近の話題まで、……加納さんは幾つなんだろう? 女性に年齢を聞くのは失礼だけど、今度聞いてみたい。

冥加さんと同じ年には見えないが成人はしてそう。お酒やタバコも似合いそうだ。きっと夜はワイングラスに綺麗にカットしたチーズをおつまみにして飲むんだ……似合う、似合います、加納さん! 私が成人したら是非とも飲みに連れてってください!


「……むぅ」


いや待て、それはなんのコメディだ。

私なんかが加納さんの横に並んだらおかしいって! 洗練された女性のとなりにイケてない女子がいたら、誰もが残念がるだろう。

悔しいけれど、己を知っているだけに認めざるを得ない。

自宅に着く頃には、お母さんも加納さんが好きになっていたと思う。終始にこやかで加納さんの車を見送った後、とてもいい人ねと笑っていたからだ。すごいです加納さん、お母さんの疑心暗鬼を見事払拭しました。これなら12月のデート(?)を快く許してくれるかな?


家に入ると適当に昼食を食べて、馨と居間に寝転んだ。食事の片づけを申し出たけど、今日は断固として拒否された。

本当に体は万全なのに……。

暖かな日差しの中、私の側でタオルで遊ぶ弟を構いつつまどろむ。なんて贅沢な時間。身じろぎすると火傷が痛いけど、平和を実感しつつ目を閉じた。今日は私の真の休日、全てを忘れて過ごそう。


 -プルルルルルル


眠っていた私を起こしたのは、電話の音だ。

ほんの少し寒気を感じるのは、夕方近いから。冬になると太陽が早く沈むからすぐに寒くなる。弟は私の側にいて赤ちゃん用毛布に包まれていた。

敷布団から落ちて床の上で震えていたら、風邪を引いてしまうからホッとする。


「そうだ、電話…」


弟の安否を確認した後、早く電話をと起き上がろうとして、体が固まった。なぜなら『電話=明智』の方程式が私を押し留めたのだ。

つまり、怒られると。

幸せな午睡から説教タイムに突入なんて嫌だ。どうしよう、音を止めたいけど電話を取りたくない。弟をゆっくり寝かせたいのに私の真の休日を邪魔されたくないという気持ちがぐるぐると私を迷わせる。


「うう……どうしよう」


するとパタパタとスリッパの音が聞こえて止まった。


「はい、伊賀崎です」


お母さんが対応している。近い私が出た方が手間が省けたのに、ごめんなさい。

私はそっと弟に寄り添い、二度寝をすべく目を閉じた。眠る、眠るんだ、眠ってしまえば逃げられる。

けれど唾を飲みながら、静かに耳を澄ましてしまう。


「あら。こんにちは」


一先ずお母さんの知っている人だと分かった。私にかかって来たわけじゃないのかも。


「ごめんなさい、今疲れて寝ちゃってるのよ」


私に電話だった! でも誰からだろう。愛梨ちゃんかな? ならば電話に出てもいいんだけど。


「実はね、階段から落ちちゃって…」


お母さん、誰に情報を!? それによって私の今後の明暗が分かれるんですけど!


「病院にも行きましたし、大丈夫だったから心配しないでね」


愛梨ちゃんならかけ直す、明智くんなら……スルー? 別に彼の事が嫌いなわけじゃないが、お父さんという存在と少し離れていたい時があるのだ。許して欲しい。


「ええ、もちろん。電話があった事は伝えるわね、ではまた」


なぜだろう、唾を飲むのに力が入る。誰だ? 誰からだ? 私は少しだけ起き上がると、お母さんに尋ねた。


「お母さん、誰?」

「起きてたの? なら電話を替われば良かったわね」

「掛けなおそうかな……誰だった?」

「愛梨ちゃんからよ」


しまった! 出れば良かった。


「心配掛けちゃったかな?」

「そうね。またもう少しして掛けるって言ってたわよ」


私が体を起こすと、弟も目をぱっちりと開けた。


「おはよう、馨」


彼の脇の下に手を入れ、抱き寄せる。


「起こしちゃった? でもそろそろ起きないと夜眠れないからいいよね」

「起こしてて、ご飯すぐに準備するから」

「はーい。じゃ馨、お茶でも飲もうか」


嬉しそうに笑って私の肩を叩く。もしかして労ってくれているのかな? 可愛いぞ。

さっそく弟を連れて棚からストロー付きのコップを取り出す。赤ちゃん用麦茶を注いで蓋をするといきなりストローに食いついた。


「寝起きだから喉が渇いてた? 美味しい?」


弟の口が少し開き、麦茶がそのままだらりとこぼれる。


「うわわわ、お母さん飲まなかった」


急いで側にあるタオルを掴むと、弟の口から下を拭く。けれど既に遅く、服がびっちゃびちゃだ。


「またか……。最近ちゃんと飲まないのよ。遊んでいるのかしら、困ったものよねぇ」

「そうなんだ。この前までちゃんと飲んでたのにね」


もう一度麦茶を飲んでは口からこぼす。タオルも濡れて、私の服も濡れている。


「遊ぶならお茶はあげないよー、さぁ着替えましょうね」


コップを取り上げると悲しげな声を出す。けれどこのままじゃ風邪を引いてしまうから急いで着替えさせないと。


「はーい、万歳しましょうね」


バスタオルを引いた敷布団の上に座らせると、よだれかけを取って上着を脱がせる。


「よく出来ましたねー、次はズボンですよ」


抱き寄せてズボンを脱がせると、オムツがパンパンだ。これも交換しなくては。でも裸でオムツ交換は可哀想。まずボディスーツを交換して、シャツを着せる。次によだれかけをつけると、敷布団に寝かせた。


「オムツ交換するから、動かないでね」


そう言って動かない赤ちゃんが、世界でどのくらいいるんだろうか、いやいない。オムツを外してお尻拭きで拭くと、すぐに横へ転がってハイハイし始める。待って!可愛いお尻が出たままよ!?


「馨、少し待ってよー、オムツ着ないと」


捕まえて膝に据わらせようとするけど、両足をピシッと伸ばして抵抗される。ぷりぷりの足がまた可愛いぞ。


「ふふふ、無駄な抵抗だよ、可愛いよー」


膝に乗せずに敷布団へ寝かせ、すぐにオムツを履かせる。足を動かして最後の抵抗を試みるけど、遊んでいるつもりなんだろうな。ボディスーツのボタンを締めてズボンを履かせて完了だ。


「はい、お終い。もう遊んでいいよ」


弟は私から脱出すると、お母さんの下へハイハイしていく。こんな時、少し寂しくなるよ。偶にはお姉ちゃんを頼ってね?


「花音、今包丁握っているから、馨をお願い」

「はーい」


お母さんの足に縋りつく弟を抱き寄せると、邪魔をされたと思ったのか泣かれた。


「なんだか悪者になった気分」

「ごめんね、頼っちゃって」

「このくらい全然」


むりやり私から離れようと暴れる弟を敷布団の場所へ連行し、おもちゃで気を引く。


「ささ、これで遊ぼうか。それとも本でも読む?」


お母さんの所に行きたいらしく、私というバリケードを超えようと頑張る弟。心が痛いよ、お母さん。


「やっぱり替わろうよ。野菜や肉を切る位なら私もできるから」

「もう少し…今日は手抜きのシチューだから」


いやいや、手抜きじゃないよ? いつもありがとう、お母さん。


「馨、もう少しでお母さんが来るから待っててね」


テレビをつけて教育番組でも見せようかな。


「お母さん、馨テレビ見てもいい?」

「いいわよ」

「お許しが出たから、一緒に見ようか」


テレビのリモコンを見せると、両手で欲しがった。うん、そうだよね、色々触りたいよね。


 『-○△□国際ヴァイオリン・コンクールに出場し、第一位を受賞しました』


ふと画面に見れば、真剣な表情でバイオリンを弾く、『天ヶ瀬司』が映っていた。


「お母さん!」


つい声を上げて呼んでしまう。だって知っている人がテレビに映ったんだよ? 興奮してしまう。


「なに?」


お母さんがエプロンで手を拭きながらテレビのところまで来てくれた。


「この人だよ、小学校の時に銀色のキーホルダーくれた人!」

「え、この子が?」

「うん。すごいよね、頑張ったんだ」

「へぇ、ハーフなのかしら? 日本人っぽく見えないわね」

「確かクォーターって言ってた」


インタビューの場面に変わり、少し照れながら努力してよかったとか曲についてとか話している姿を見ると、なんだか感無量になる。ゲームの様に挫折せずにこのまま頑張ってくれるといいな。


 『では最後に何か一言いいですか?』

 『はい。……大事な』


画面が変わり、何かが起動する。


「え? どうしたの? なに?」


DVDモードに画面が切り替わり、見慣れたアニメが始まった。


「駄目じゃない、馨」


お母さんが弟を抱き上げて、リモコンを取り上げる。どうやら両手で持って噛んでいた。最近歯が生えてきたから、歯茎が痒いんだろう。


「もう……花音のお友達が出ていたのに」


リモコンを操作して元のニュース画面に変更したけど、もう違う話題が流れていた。残念、もう終わったか。


「終わっちゃった。ごめんね、花音」

「一回だけ会った知り合いだから、いいよ」

「そうかしら、甘酸っぱい素敵な思い出の彼じゃない」


お母さん、どんな脚色してるの。


「いや、そんな痛い子じゃないもん。知り合いが成功したから嬉しかっただけもん」

「そんなに知り合いを主張しなくても」

「向こうは私の事なんて忘れてるよ。逆に友人だと話しかけたら、困った顔をされちゃうね、絶対」

「もう、夢が無いわね。あら、花音も服が濡れているじゃない、着替えてきたら?」

「そうだった。じゃ、ちょっと着替えてくる」


ひんやりと肌にくっついた服が冷たいので、自分の部屋へ移動する。階段を上りながら、手元になかったカバンを思い出す。

そういえば私のカバン、どこにあるんだろう? 今朝の病院では制服しかなかった。冥加さん達が回収したなら教えてくれるはずだよね。


「あっれー……明日はどうしよう」


心配はすぐに消えた。

部屋に入ると、机の上に置いてあったのだ。きっと昨日両親が持って帰ってくれたんだろう。


「それにしても、これは酷いかな」


カバンには細かい擦り傷がたくさんあって、キーホルダーの熊も少し汚れていた。


「私、襲われたんだよね? 現実味が全く無いけど」


冥加さんが待っていたのに会えなかったから、私を探してくれたんだよね。やっぱり今までは偶然会ってたんだ。


「へへ、少し奇縁なのかもと思ってたけど、そうそうそんな縁って無いよね」


そう考えると、冥加さんはかなりロマンチストなのかもしれない。

私との約束、というより宣言した四年後なんて忘れて仕事に恋に頑張ってほしい。

加納さんを幸せにしてくれたら、私が嬉しいです。でもでも、加納さんにはもっと大人な落ち着いた男性も似合う! 冥加さんにはこれから頑張って欲しいな。

机からカバンを下ろして椅子に座ると、引き出しを開けた。そこには100円ショップで買った小さな箱がある。


「おめでとう」


中身は天ヶ瀬司のキーホルダーだ。

ほんの数年前なのに、テレビに出ていた彼は小学生の幼さが消えてパッケージの姿に近づいていた。これから挫折をするのかどうか気になるけど、応援しているよ。

自分の殻に閉じこもってバイオリンから離れないようにね。


「って、キーホルダーに話しかけてもね」


出会いはゲームと違った。

あんなに努力して頑張っている彼なら、日本に戻らず向こうの学校で勉強を続けていけるだろう。


「多少挫折しても、挫けませんように」


キーホルダーを握り締めると、そっと祈ってみた。我ながら恥かしいと思いながら箱に入れると、机に片付けた。


「さてと」


思いっきり手を伸ばして、伸びをしていると要の部屋が少し光ったような気がした。太陽も沈みそろそろ暗いから、電気をつけようとして切れたのかな?

カーテンレースを開き、彼の部屋を見ようとしたら何度も不自然な光が。これはもしや。


「要!」


窓を開いて声を掛けた。

彼の部屋の窓がほんの少し開いているから聞こえるかも。


「あ!」


案の定彼が現れた。


「花音、退院おめでとう」


怪しげなサングラスを頭に乗せ、汚れた分厚いエプロン? と手袋姿。怪しい格好での登場に驚きが隠せない。


「ど、どうも。んで要は何をしてたのかな」

「何って? あ、ああこの格好? 溶接だよ」


小学生から聞く単語じゃない。


「溶接って、あの火花が飛び散る奴だよね!? 部屋でしているの? 火事になったらどうするのよ! 危ないわよ」

「大丈夫、そんな業務用の物じゃないし安全に作業しているよ」


にこやかに返された。

もしかしたら他のキャラより要の心配をした方がいいんじゃないか? ゲームと全く違って彼が遠く感じる。彼はどこへ行くつもりなんだろう。


「電気つけないの? 暗い所で作業すると目に悪いわよ」

「あ、そうだね」


なにやらポケットからリモコンのような物を取り出すと、ボタンを押した。

すると部屋に電気が灯る。なにか改造したの?

彼は終始ニコニコしている。


「要の部屋に行ってもいい?」


ふと彼の部屋が気になった。

なぜなら、壁に貼ってあるはずのサッカーのポスターは何かの設計図に変わり、怪しげな工具が見えるからだ。


「駄目。今片付けたら大変なことになっちゃう」

「わ、私達の仲じゃない。気にしないわ」

「それより、何かいう事があるんじゃない?」


頭からサングラスを取って、要がこちらを見ている。


「え、何かな。階段をこけた事?」

「それも気になるけど、それ以外」


なんだろう、痴漢に襲われたこと? これは冥加さん達との秘密だからバレてないはず。ならば、なんだろう? 一生懸命考えていると、先程のテレビを思い出した。


「あ! 天ヶ瀬司の件?」

「何かあったの?」

「え?」


もしや、私を引っ掛けようと? ちょっと君が怖いぞ、要。


「さっきニュースで見たんだけど、外国であったバイオリンの大会で一位になったらしい」

「へぇ。なら挫折はそろそろなのか?」

「そんな不吉なこと言わないでよ」

「ノートの通りなら、そうなんだろ?」

「かもしれないけど、成功を一緒に願って。挫折しても成長できますようにってね」

「若い頃の天才だから、早めに挫折した方が後で成長しそうだけど」

「長い挫折で落ち込む姿は見たくない」

「まぁね。一番彼が花音に近づきそうだし、むこうで頑張っていてほしいね」

「私が近づかなきゃ分からないって」

「だといいんだけど」


要は分厚そうな手袋を取ると、私のマル秘ノートを引っ張り出してきた。天ヶ瀬司の情報を書き足すんだろう。そろそろ高校が近くなってきたので、新しいノートに整理して書き直したい。


「そうだ、明智くん」

「そうだよ、それ。昨日突然現れてすぐいなくなったんだろ?」

「うん、向こうの学校のテストを控えてたみたいで、急いで帰ってった」


落第とか無いよね? 私の所為で留年とかなったらどうしよう。


「あとさ、2年5組にいる女子がファンクラブを結成してたぞ」

「え? 本気で作ったんだ」


なら、明智くんとの仲を取り持たなくては。きっと恋人でも出来れば私への干渉も少なくなるだろう。問題は明智くんが1人って事だ。誰とくっつければいいんだろう?


「すごいよね、明智の行動力。俺聞いたとき驚いた」


すごいというより過保護だよ。私の話し方のどこが不安そうだったんだろう。そう見せた憶えはないから、おちおち電話も出れない。


「私ってそんなに頼りない? 外国から駆けつけられる程って情けなくなるんだけど」

「……」


そろそろ向こうでは朝になっただろうか? ちゃんと起きてるかな? 時差ぼけしてないといいんだけど。エコノミー症候群とか航空券代とか心配だ。


「今頃無事に家族の下へついて、学校へ向かっているといいな」


明智くんはまだ14歳。保護者ぶらなくて子供を満喫して欲しい。今から父親になるなんて、責任負いすぎ。


「花音さ、確認なんだけど」

「なに?」


要が改まって聞いてきたから、緊張しちゃう。


「明智の事なんだけど」

「うん」

「本気で好きだって情報流し続けるの?」


ああ、差し替えの件か。


「もう流しちゃったよ」

「それは知ってる。俺のところまでもう来てるから」


昨日の今日で来るなんて、うちの学校の噂は走るのが速い。


「ならもう流さなくていいのかな? 任務完了だね」

「ちゃんと考えてる? このままだと明智の彼女になっちゃうよ」

「ならないよ。でも何? 明智の彼女って。私は明智くんの付属品か! ってね」

「花音…」


笑い飛ばすも要は不安そうに眉を顰める。

要も心配性だな……君の方が心配なのに。サッカーに燃える情報収集家だったはずだぞ? なのに君のステータスに何か発明家が追加されてる。


「要の方が心配だよ。おしゃれなサッカー少年が、機械いじりに夢中だなんて」

「なかなか楽しいよ? ものづくりって夢中になるね」

「ゲームに惑わされず生きて欲しいけど、これはいいのかな」

「いいの。俺自身楽しいから」


彼が幸せなら、いいのかな……。一抹の不安があるけど。


「そうだ、明日は走るの? 無理すると体壊すよ?」

「あー……明日はジョギングで付き合ってくれる? 全力疾走は体の調子を見てからで」

「それがいいよ。でも無理だと感じたら帰すから」

「ありがとう、じゃそろそろ寒いから窓閉めるね」

「風邪引くなよ?」

「ありがと」


笑いながら窓とカーテンを閉めた。

私の部屋は電気が付いていなくて薄暗く、カーテンを閉めたら真っ暗近くなる。なんだか急に寒くなったような気がしたら少しゾクリとした。


「もう冬なんだな」


高校まであと一年と少し。



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