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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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コールドプリズン 夜の帳

 氷室くん主人公のゲームタイトルは『コールドプリズン-夜のとばり-』。12人の暗い影を背負った美少女達との話らしい。

 監禁陵辱系の18禁パソコンゲーム。

 美少女だって! でも12人も正当美少女がいるわけじゃないと思う。なぜなら、その中に私も含まれているから。

 ……ちゃーんと理解してますとも。私はユニークな存在、特殊な趣を好む人の為にいる存在だって。自分で言ってて寂しいけど、可愛いという自信はないからな……。だから、ちゃんと分かっています、メインヒロインじゃないって。

 そういや例の変態さんも、私を家に連れて行って監禁するみたいな事を言ってたな……あれってもしかして、監禁のフラグだったのかな?


「ゲームの始まりは高校。しかも新設校から始まるんだ」


 和田くんの解説が始まった。

 このゲームも新設校から始まるのか……。ゲームの似通う箇所が気になるけれど、一先ず聞き役に徹することにしよう。

 下手な事を言って、恥を掻きたくない。私の妄想の恋愛シミュレーションゲームの存在は隠し通さなくちゃいけないからね。


「登場人物は、主人公に氷室。ライバルに僕。攻略対象者12名。協力者1名、怪しい店の店長に、町の占い師に、痴漢変態諸々、隠しが数名だったかな……ごめんね、僕もそんなにやりこんでいたわけじゃないんだ」


 サラサラと登場人物をノートに書いていく。


「最初の1年で対象と知り合い仲良くなり、2年後半の対象者達との好感度で3年の内容、エンディングがほぼ決まるんだ」


 3年間も……結構長丁場なゲームなんだ。私の知ってるゲームもそうなんだけどね! と言えないけど。


「嫌な言い方になるけど、陣地取りみたいなものかな。氷室くんと僕とで彼女達を取り合うから」


 取り合いか……。ゲームだからしょうがないけど、現実なら他の人を選ぶよね。女性に声を掛け捲る男性を好きになるって、かなり難しいと思う。

 カリスマ持ちか芸能人か、類を見ないほどのイケメンか?

 私は普通でいい、普通が一番。まぁ、チャンスがあっても誰とも付き合わないけどね。


「占い師の情報や怪しい店の薬で彼女達を追い詰めて、過去を暴き癒していくんだけど、問題はここからなんだ」


 きたきた、問題。

 でも占い師の情報はまだしも、怪しい店の薬って合法? それって……犯罪じゃ。でもそうならば、どんな店に出入りしているんだ、氷室くんは! そっちの方が大問題な気がするんだけどな、かなりの犯罪臭がするよ。

 いや、まだ高校生でないから、行ってもないし買ってないんだよね?


「中途半端に仲良くなった状態で僕に取られると、取り返すのに『俺の気持ちがなぜ分からないんだ』と監禁モードになっていく」

「えー」


 癒していくはずが、病んでくるんだ……。


「取り返さなかったら、『私の過去を知っている男は許さない』と氷室が命を狙われる。それを回避するのも監禁モード『俺の気持ちを分かってくれ』」

「……はぁ」


 未成年が18禁行動を起こすなんて、何かが間違っているような。


「最初のモードが驚き悲しむ女性を陵辱するタイプで、次が強気で歯向かう女性を無理強いするタイプ」


 平和な解決方法は無いのかい? 文明社会なのだから、話し合いで解決しましょうよ。


「どちらにしろ、結局は監禁なのね」

「まぁ、そういうゲームだからね」


 いやだなぁ、監禁や薬とかそういう体験はしたくない。


「その回避方法は無いのか?」

「氷室と知り合わない事」

「……もう無理じゃん」


 手遅れな回避方法に涙が出そう。


「そう。同じクラス同じ班になった時点で、それは諦めるしかない」


 和田くんが残念そうな笑みを浮かべ、ノートを見つめる。


「後は?」


 明智くんが食い下がる。


「ゲームの設定や矛盾点をつけば、どうだろうか」

「そうだね。既に伊賀崎さんはプロフィールと異なっている」


 そうだ、改変されるかもしれないんだ。私に悲しい過去は無い。


「でも、ちょっと気になる事があるんだ」

「え、また?」


 ごめんねと和田くんが謝る。誰が悪いとか無いよ、これは天災に近い気がする。


「伊賀崎さんが中学生になったばかりの時に襲われた、という件は回避できたと思うけど」


 ドキドキする。まさか徘徊している痴漢や変態からの攻撃でも軌道修正可能とか?


「今日の氷室くんの行動はおかしかったよね」


 荒みきった彼の様子を思い出し、頷く。


「私も思った! いつも陽気なはずなのに、すっごく殺伐としてた」

「彼はゲームの影響下に入っているかもしれない」


 私はごくりと唾を飲み込む。


「まだゲームは始まってないんじゃないの? 高校からなんでしょう?」


 監禁は勘弁して欲しい。考えるだけで血の気が引いてしまう。


「好感度が始まっているということか?」


 明智くんが聞きたくないことを聞く。いや、聞かないといけないんだけどね。


「うん。氷室くんが名前を呼ぶほど親しい状態で、僕が伊賀崎さんに近寄ったから、病みモードに入りかけている……ように今日は見えた」

「名前を呼ぶの許可してないし、嫌がっているけど?」


和田くんがうーんと悩む。


「実際に呼ばれて会話が進んでいるから、了承されたと思うんだけど」

「そんな」


 断固拒否しておけば良かったの? 無理言わないで、基本温厚なのでNoとはっきり言えない私に厳しい要求だ。


「好感度が上がったのに、下がると病みという状態に入るのか?」

「段階があったような気がするんだけどね」


 早すぎると彼は頭を抱えた。


「確か相手の好意が四段階目に入って僕が近づくと、病みモードなんだけど」


氷室くんへの好意?クラスメイト以上の気持ちはありません。


「段階ってどうやって進むの?」

「何度かデートや薬を使って態度が変わるから、それかな」


 デートは分かるけど、薬は止めましょうよ、体に良くなさそう。薬物使用も犯罪だよ? 健康にいいハーブです、と言われても遠慮したい。


「段階を踏んでいないのに、伊賀崎に固執してしまうのは、何かあるのかもしれないな」

「もしかしたら、氷室くんは伊賀崎さんの事が好きなのかもしれないね」

「それはないよ」


 即否定した。


「え、どうして?」

「前に、本命がいるって言っていたから」

「本命? 誰だろう」


 和田くんが頭をかしげて考える。


「高校の時に会えるらしいよ、これは江里口くんから聞いた」


 そういえば、彼は気になる事ばかり話していたな。


「氷室くんってかなりこのゲーム詳しいみたい。全部のエンディングを知っているような事も聞いたよ」


 和田くんが、高校で……とブツブツ考え込む。


「真のハッピーエンドを迎える為には、全てのエンディングをクリアしないといけないらしくて、本命彼女の苦しむシーンを色濃く覚えているって」


 好きな人の苦しむシーンは精神にくるよね。いまやその人は現実の人かもしれない、だからこそ必死になっているのかも。


「現実の場合、何度もゲームできるわけじゃないから、真のハッピーエンドを迎えるって難しいことなのかな?」


 私がポツリと呟くと、和田くんがそれは、と口篭る。


「え、もしかしてヒロイン1人以外全員不幸になるの?」

「いや、違うよ? 出来れば回避して欲しいと思ってる」

「なんで? ハッピーエンドなのに?」


 和田くんは苦笑しつつ頬を掻く。


「僕の死亡フラグだから」

「なんですと!?」


 和田くん死なないと幸せになれないの? それって、強制なの?


「じゃあ、1人のヒロインとだけハッピーエンドは可能なの?」

「基本ハッピーエンドじゃないから、無理かな」


 どんなエンディングが待ち受けているんだ、恐ろし過ぎる。


「それに、真のハッピーエンドは伊賀崎さんも関係してるよ」

「あ、なんとなく想像ついた」


 私も関連しているなら、もう決まりでしょう。


「あはは、多分考えている通りのものだと思う」


 和田くんが乾いた笑い声をあげる。


「真のハッピーエンドって、どういう内容なんだ?」


 分からないと明智くんが聞いてきた。彼の為に、和田くんが言い難そうに教えてくれる。


「まぁ、なんといいましょうか……12人とハーレム、一夫多妻制のような状態で暮らしていくという」

「婚姻関係も無しにか?」

「うん、スチルではかなり退廃的だったなぁ」

「親御さんは?」

「外交官だから、海外に赴任している設定があったよ」


 頭が痛いよ、本当に。半分優しさで出来ている薬が欲しい。


「エンディングは、一先ず置いといて。ゲームそのものを否定する行動を取るのはどうかな?」

「否定する行動?」

「こればっかりは和田くんに私のキャラ内容を聞かないと分からないんだけどね」

「伊賀崎さんはぼさぼさの髪で、いつも鋭い眼つきで警戒しっぱなしで男嫌いの野良猫って感じだったなぁ」


 誰が野良猫だ。


「あれ? 私さ、変態さんから監禁するって車に連れて行かれる所だったの。少しで戻ってこられたのかな?」

「え! そうなの? すごく危なかったんだね」


 今なら軽く言えるけど、本当に監禁されていたら、私はどうなっていたんだろう。


「ゲームの私って監禁された経験の持ち主なの?」

「違うよ。そうか、やっぱりゲームの設定通りに進まないんだ」

「そうか? 本人が隠していたら、表に出ない」


 明智くんが浮上した気持ちを突き落とすように、辻褄を合わせに来た。


「だいたいゲームの詳細は分かった。後は氷室の問題だ」


 氷室くんの? 鬱に入りかけていそうな彼には、この問題はきつくないかな。


「氷室はどう決着をつけたいのか、それを聞かなければ話が進まないと思う」

「まぁ、それは、そうだね。真のハッピーエンドで僕を殺したいなら避けたいな」

「そうなると、私はハーレムの一員になるんでしょう? 私も避けたい」


 逆ハーなら私のゲームで出来るが、こんなハーレムなら参加拒否したいよ。


「様子を見て、氷室の状態が戻っていたら話をしにいこう」

「僕は当分君らに近づかないようにするね。変に影響与えたら嫌だから」


 明智くんと和田くんは携帯を持っているようで、交換し合った。彼らを見ながら、ぼんやりと先を憂う。

 氷室くんが動く事で物語が始まる、ならば転校したら、どうなるんだろう。親御さんのいる場所へ行ってみては? と聞いてみたくなる。でも、好きな人が高校で入ってくるんだから、それは嫌だろう。

 それにしても、明智くんに頼りきりな所をどうにかしたい。何か方法はないかな。



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