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恋愛ゲーム、ですよね?  作者: 雪屋なぎ
中学生 編
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席替え


 ショックです。

 健康診断の次の日に行われた体力測定は、残念ながらクラス毎の測定でした。担任からの説明にがっくりしたのは、言うまでもない。朝から意気込んでたのに……意味が無かった。

 クラスメイトに声を掛けるチャンスを失い、前日の失敗を悔いた。が、明智くんと話せたのは楽しかったので良しとしよう。

 でも、高校ではこんなミスが無いように気をつけなければ……女子ボッチスタートは心が折れる。

 セーブやリセットはなさそうなので慎重に事を進ませないと。


 そして始まった体力測定。

 握力に上体起こし、反復横とびや持久走、幅跳びやボール投げに、シャトルラン。

 シャトルランは20mの距離を掛け声の合図と共に往復して走る測定で、合図である掛け声まで間に合わず2回連続遅れれば終了。楽しそうな検査、かな。

 でも本当、……出席番号順でなければ楽しかったのに。幾らまだ中学生だからって男子の中に混ざっての検査は辛いです、先生。

 持久走のように、男子、女子と分けて欲しかった。


 特に、50m走。毎朝走りこみしている私は、自信があったんだけどものの見事に明智くんに負けた。一緒に走った江里口くんや小川くん、児島くんには勝てたんだけどね。


 ちくしょう、早いぞ、明智くん。


 スタートした直後では私が絶対早かったのに。明智くんは多少押されたぐらいではビクともしない鍛えた体ですから、努力と修練の賜物かも。うん、負けても仕方ないよね!

 もしかして、スタートが遅かったのは本気を出さなかったから? 本気で走る彼は、国体を目指せるかもしれない。

 はい、負け惜しみです。


 シャトルランでは江里口くん、児島くん、小川くんが順に脱落していき、明智くんと勝負状態になった。今思えば何故小川くんと一緒に脱落しなかったのか、後悔って本当に後に悔いる、だね。


 またも明智くんの走りに引っ張られて、全力以上出し切った。

 85周の合図で最後の力を使い、ストップ。肺や足が限界で悲鳴を上げて死にそう。

 物凄く息が上がり疲労感が激しくて、その場で倒れるように座り込む。


 普通ならば邪魔にならないように端に行くけど、体が休憩を求めてたのでそのまま待機。激しい呼吸で冷たいお茶か、水、と水分が欲しかった。


 私が脱落した後、明智くんは90周越えで終了。周りから落胆の声が響いた。どうやら100越えをみんな期待していたっぽい。

 でも私は知ったりするんだよね。明智くんがわざと疲れた振りをしているって。私の座っている場所と明智くんが立ち止まった場所が近い距離だったので、丸分かり。

 汗を全く掻かず少しだけ息が上がった振りをしている彼の姿が目に入る。ついジト目で見てしまった。面倒くさくなって止めたんじゃないの?

 私からの視線に気付き、平然と「大丈夫?」なんて心配されると僻んでしまう。これが男女の差なの? いや、努力の差なの? 表面は笑って返したけど、正直悔しくてたまらない。体力面をもう一度見直したい。きっとその努力はいつか報われるはず。


 高校で会う攻略対象者たちはスポーツも堪能だと思うので、何か誤解が起きたときに逃げられたら……もっと鍛えよう。


 他のクラスはどうか知らないけど、最後に持久走。

 正直思いました。先生、シャトルランの後に持久走って、鬼ですかっ!? まぁ先に男子1500mだったので、女子は胸を撫で下ろしましたが男子はブーイング。


 持久走でもやはり明智くんが一着でゴール。トップグループで一緒だった人達は疲れて座り込むけど、彼は飄々と立ったままで息さえ乱れてない。

 男子が終われば次は女子。1000mでは自分のペースを守り、私は気持ちよく走り終えた。急かされないって、いいねぇ。


 これで測定が全て完了。際立つ結果を出した明智くんは目立った。シャトルランで既にみんなの注目を集めて、更に持久走でも決めたのだから当然か。

 そんな中、先生がトドメとばかりに、褒め上げる。


「明智、すごいな! お前クラストップ、いや学年トップかもな」


 やったねと鼻歌を歌う先生を見て、昨日の事を思い出す。本当に純粋に喜んでいるのだろうか? と。正直疑ってます(教職たるもの賭け事は……)。いや、きっと単純に嬉しいだけ、ですよね?


 それにしても明智くんの見た目と違い結果の派手さよ。地味なのに、お見逸れいたします。これぞ地味派手、というのだろうな。


 教室へ移動する時、さっそく女子から声を掛けられてた! 私よりも先に明智くんが女子と交流をしてる……羨ましく見てたけど、緊張しているのかだんまりだった。

 彼は社交家ではなく、寡黙派なのかな? でも大丈夫! そういうのが好みの女子もいるからね! 頑張れ、明智くん。恋愛相談なら乗るから、と彼の背に無言で頷いた。


 でもね、私も頑張ったんだからさ、少しは女子から声掛け欲しかったよ。友達になるきっかけの為に頑張ったのに、残念。

 いいな、明智くん。

 だから下校の時に、ついつい遥ちゃんへ熱く愚痴ってしまった。

 もちろん女子からの声掛け、ではなくシャトルランの話を。彼女はうんうんと優しく頷いてくれて、微笑んでくれるので癒された。

 これで今日も機嫌よく家事を頑張れるよ、ありがとう遥ちゃん。話しやすいのは聞き上手だからだよね、これはもうサッカー部の素敵なマネージャーになるに間違いない! もう既に未来が見えた。彼女の数年後が今から楽しみだ。






 次の日の学力テストは楽勝。何せ、中学1年生程度。今まできちんと勉強もしているので、まだまだ楽勝楽勝。

 問題は『学年』だ。

 時間と共に問題が難しくなっていく。高校や大学受験を思えば、勉強についていけなくなったら、が恐ろしいかも。予習復習を忘れず、日々追いつけるようにしなくては。

 平和な3日間が終わった後、明日から通常の授業が開始。

 でも、私には最重要事項がある。

 HRが終わると教室を出て行く先生を追いかけ声を掛けた。……先生、足速いですね。大人なのでコンパスの差かな。


「すみません、先生!」

「おう、伊賀崎」


声に気付いた先生が、足を止めてくれた。


「席替えについてお聞きしたいのですが……」

「席替え? 今? 必要かなぁ」


 面倒だなと顔に思いっきり出てる。せめて難しそうな顔をしておいてくださいよ。それに先生、クラスの状況をちゃんと把握してますか? 私と和田くん……和田くんは分かりませんが、同性が近くにいなくて寂しい状況なんですよ?


「私の周りに女子がいないので、ちょっと寂しいのですが」

「あー」


 先生は頭を掻くと、少し考えてくれました。


「なら、どうやって席替えをするつもりだ? くじで決めるのか?」


 席替え方法を問われても困る。そういうのは先生が決めるもんじゃないの? とりあえず案を聞かれたので、小学校での席替えを思い出し、一応答える。くじを引いて席を決めていたよね。


「それが普通では?」

「普通か?」

「多分」

「そうか……。でもな、伊賀崎」


 大仰に腕を組んだ先生が残念そうに首を左右に振った。


「またお前が男子に囲まれるかもしれんぞ、しかもお前以外がそうなる可能性だってある」

「あっ」


 くじで必ずしも男女比率が平均になるとは限らなかったことに気付き、がっくりを肩を落とす。


「男女ごと列に……」


小学生ではそうでした。


「男子18名女子17名。それじゃ無理だな」


 真っ当な返事に落ち込む。一応男女の人数おぼえているんですね。その後、妙案が出るわけでもなく、沈黙していると頭を軽く撫でられた。


「まぁ、なんだ。しばらくは我慢だ」


 笑いながらそれじゃと歩き出す先生に、もう一つ質問を投げかける。

 来週1年生は宿泊オリエンテーションがある。山へキャンプ2泊3日です。4月の山か……明け方や深夜は寒そう。親睦と協調性を学ぶ行事だけど、大事なことなので聞かなくては!


「あの、オリエンテーションの班分けですが……出席番号順だったりしますか?」


 先生の笑顔が固まった。もしかして、その通り? だったら嫌だぁ!!


「班決めくらい、比率半々にしましょうよ」

「でもなぁ……。そうだ、5人の班を教室の机一列で決めてたら楽だ」


 先生は楽でも、私は苦だ。二泊三日だよ? 山登ったり課題こなしたりとあるのだ。苦楽を共にする仲間が男子だけって寂しすぎる。


「親睦会なら親睦会らしく、話し合いで決めましょうよ! 席が近くの人とばかり仲良くなっても新しい絆が築きにくいです」


 女子一人は絶対に嫌だ。しかも野外炊飯もあるんですよ? 和田くんのハーレムなら楽しいかもしれませんが、私の場合逆ですから……気まずい。


「なぁ、考えてみろよ、伊賀崎」

「はい」


 先生が遠くを見つめながら、神妙な顔をした。


「仲の良い女子グループ4人組が2:2に分かれたとする」

「はぁ」

「仲の良い男子3人組が居らず2人組と組んだ場合、1人足りなくて困るな?」

「まぁ、そうですね」

「お前がその1人となって寂しいオリエンテーションをするのか? 先生は辛いぞ?」

「………」


 私を説得しようとしている? 

 絶対そうに違いない。その女子2人と私が仲良くなる前提は無いのって悲しいんですけど? そんなに私って協調性の無い人間に見えているんでしょうかねぇ……って確かに健康診断ではぼっちだった。


「その点、伊賀崎は明智と仲がいいんだろ? 男女で先に組むのは人目にきつかろうと先生は気にしているわけだ」

「……え」


 私が明智くんと少しだけど話すようになってきたの、知ってたんだ……。でも私を納得させようとする姿に、軽い絶望が。


「江里口も小川も児島もいい奴だ、お前らなら江里口を助けてオリエンテーリングで1年トップを狙えないだろうか……いや、狙える! 狙って欲しい! コンプリート行けるって!」

「もしや……」


 江里口くんは体力測定で非力そうだった……でもあえて彼を名指しするので疑ってしまう。


「なんだ」

「いえ……」


 きっといい事あるって、と笑顔を残し、先生は職員室へ去っていく。


「先生……」


 本当に生徒で賭け事なんて、していませんよね……。席替えや班決めよりもそちらが気になってきた。




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