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二人の名前で春過ぎる

満開だったはずの桜が散り始め、春の暖かさが夏の暑さに変わり始めたある日の夕方、俺は部活帰りで友達たと二人で歩いていた。

背中から射し込む夕日は、紺色のブレザーをオレンジに染め、俺らのくだらない雑談をも盛り上げてくれた。

雑談のおかげで帰り道の退屈な時間が少しばかり楽しい時間になった。そんな楽しい時間も下校路途中にある公園の前の別れ道で終わりを迎えた。

また明日。と手を振り、彼は真っ直ぐに足を進め、俺は右折をしてそれぞれの帰り道を無言に進んだ。

夕日がだんだんと地平線に呑み込まれていくのを気温の変化で感じとる。空を見上げると薄く月が光っていた。

緩やかな下り坂をローファーのかかとを擦りながらグダグダと下る。

俺のローファーは音が鳴らない。と言うより鳴らない靴を選んだのだ。 何故かって?そっちの方が軽くて疲れにくいローファーが多いからだ。

そんな俺のローファーとは逆に、コツコツ…とドラマの主人公が履くような音の鳴るローファーを履き、歩いてくる女子がいる。

セーラー服を着て、とてつもなく可愛いあの時の少女だ。

あーまた目でも合わねぇかな…なんて思っていると、突然鼻がムズムズし始め…

ハックション!!

大きなくしゃみが出た。

その音に驚き、俺の方を見た。あ、目が合った。

大きくて吸い込まれてしまいそうな瞳、長くて綺麗なまつ毛、完全にストレートでは無く少し癖のある艶やかな長い髪の毛。あーやべー…マジ可愛い。

とか思っているとニヤけが止まらなくなった。

「え?何で笑っているんですか?」うわぁ〜声も可愛い…じゃなくて、

「また会ったな〜みたいな。ほら、いえ、せその…。」

「本当ですね。また会いましたね。」

「あまり見ない制服ですね。どこの高校ですか?」

「桜慶苑高校です。」

あまり聞いたことの無い高校だった。どこにあるのも、どのくらいのレベルの学校なのかも全くわからない。

「日比谷の方ですね。レベルも日比谷高校に負けず劣らずって感じですね。」

うん!相当頭良い!!南高なんかに通っている俺なんかが一生勉強しても入れるかどうか…ってレベルだ。

日美弥というところは、ここからだと一時間〜一時間十五分ぐらいの場所にあり、電車の乗り換えもあるので遠い。

それに比べ、俺は徒歩十五分だ。彼女とは比べものにならない。

「頭いいんですね、毎日大変でしょう。」

「いえいえ、そんなことありませんよ。勉強は大変ですけど…毎日楽しいです!」

「あの…どちらの学校に通ってらっしゃるんですか?」

すぐそこの南高ですよ。あなたみたいに頭がよくないので。」と冗談ぽく言ってやった。

「あの!私、全然頭良くないですから!本当に!本当に!」

あー…この慌てる感じ萌え〜。だらしなくニヤけていると、

「あの…何年生ですか?」

「高一ですよ。」

「私も高一なので、敬語を解いてもいいですか?いや、おかしいですよね、名前も知らない相手に敬語を解くなんて。」

「栄山 氷夜です。」

「へ?」

「これで心おき無く敬語を解きましょう。」

彼女はぱぁ〜っと笑って、「天野 千尋です!よろしく!!」

そんな彼女の完璧なまでの笑顔を見て、胸がキューンとなった。多分これが恋に堕ちたと言うことなのだろう。

風がさっきに比べてさらに冷たくなったなと思った頃、日は完全に沈み、暗闇の空に星が瞬いていた。

また会ったら声かけて、私も気が付いたら声かけるから。

彼女は最後にそう言い残し、緩やかな上り坂を登って行った。

キューと締め付けられる胸をさすり、道を照らす電灯の方を見た。小さなハエみたいなのが群がって電灯の周りを飛び回っている。

いろんな気持ちが混ざり合う今の自分の心に似ているなと思い、また家路への一歩を踏み出した。

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