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人助け

作者: WAIai
掲載日:2026/08/18

山田はいつものように、高速道路を運転していた。

ちゃんと決められた速度で走っており、秋晴れの中、快調に進んで行く。

夏とは違い、少し肌寒いのだが、山田は静かに輝く光を見つめながら、ハンドルを握っている。

すると、少し進んだところで、あることに気づく。

「…何だ?」

路肩に車が停まっており、20代くらいの女性が側に立っている。

その女性は可愛い感じで、少しぽっちゃりしており、オシャレだった。

しかし様子がおかしく、ずっと何かを待っているようだった。

1人でか細そげな印象を受けたので、山田は気になり、車幅をあけて、トラックを停める。

「おい、どうした?」

エンジンを切り、運転席から降りると、女性がびっくりしたような表情となる。

山田は気にせず、女性を見続けると、手を不安そうに合わせて言ってくる。

「た、タイヤが…」

「タイヤ? …どれどれ」

山田が近づくと、女性から良い香りがした。蜜に誘われた蜂みたいだなと思いつつ、女性の車に近づく。

色はピンクで、全体的に丸いデザインであり、女性にはぴったりの車だと判断する。

「あー…タイヤがバンクしたのか」

後ろのタイヤを覗き込み、山田は舌打ちする。

それが怖かったのか、女性はびくりと肩を揺らしたが、山田は気にせず、潰れたタイヤに注目する。

「JAFは呼んだか?」

「は、はい…!! 呼びました」

スマホを握りしめており、山田は重々しくうなずく。

JAFとは道路で故障したり、トラブルがあった時に来てくれる車の修理屋みたいなものだった。

「それならいい」

そう呟くと、山田はどうしようかと迷う。

仕事で急いでいるわけではないので、女性1人残すのもどうかと思ったのだった。

ー俺といると、怖がらせるみたいだし。

そんなに恐ろしい顔をしているだろうかと、顎を擦る。

女性は救いを求めるようにこちらを見ており、山田は決意する。

「JAFが来るまで一緒にいてやるか?」

「え…。で、ても…!!」

「運ぶものは運んだ帰りだから、俺も余裕がある。何分前に連絡した?」

「えっと…、その、30分か1時間前に。私も気が動転しているので、詳しくは…」

「そうか。とりあえず、ちょっと待て」

山田はトラックに戻ると、助手席に置いたトートバッグから、何かを取り出す。

それは缶コーヒーであり、キャップ型のものだった。

「これでよければ少し飲め。心を落ち着かせないと」

「え…。あ、あの、いいんですか?」

「いいさ。くれてやる」

山田が手に持たせてやると、女性は少し戸惑ったように言ってくる。

「ありがとうございます。感謝します」

「どういたしまして。それで? どこまで行くつもなんだ?」

「それは、ちょっと…。でも、あの、友達に会いに行くつもりで」

「そうか。それは災難だったな。1人で淋しかっただろう?」

山田がそう言うと、何故か女性は涙をこぼす。

「え、おい。俺のせいか?」

「ち、違います…!! あなたの優しさが嬉しくて」

両手が塞がっているので、女性は手の甲で涙を拭う。

優しいと言われ、山田は少し頬を赤く染める。

「大したことはしていないぞ。一緒にJAFを待っているだけだ」

「そうなんですけど、皆、無視しているように見えて…。助かります」

女性はようやく少しはにかんだ。

山田はどきりとし、胸を撫でる。

ー落ち着け、俺。女性だって気があるか分からないんだから。

呪いを唱えるように繰り返し、自分自身に言い聞かせ、山田は落ち着いた風に言う。

「もうすぐ来るといいな」

「はい!!」

山田がうなずくと、女性はおずおずと言ってくる。

「あ、あの…」

「何だ?」

「お礼がしたいので、連絡先を交換してくれませんか?」

「え…。俺の?」

びっくりして自分を指すと、女性がこくりと子どものようにうなずく。

「分かった。交換しよう」

本当は天に昇るような気持ちだったが、冷静さを装い、スマホを取り出す。

「えっと…俺のアドレスはこれだ」

「は、はい。えっと…」

女性はスマホを操作し、打ち込んでいく。

「あの、名前は…?」

「山田だ、あんたは?」

「はい、桐島と申します」

「桐島さんね。…よし」

互いに連絡先を交換し、山田は一言言う。

「困ったら、連絡していいぞ。道に迷ったとか、そういうのなら、大体、答えられるから」

「ありがとうございます。…あ!! JAFかも」

女性ー桐島が見つめる先に、JAFの車がやって来ていた。山田はよし、と手を挙げると、大声を張り上げる。

「タイヤのパンクだ!! 見てやってくれ!!」

「お願いします!!」

桐島が頭を下げたので、山田も軽く頭を下げる。

JAFの車が来たということは、山田はもうお役御免なので、桐島を振り返る。

「じゃあ、気をつけてな」

「はい…!! ありがとうございました!!」

ここはかっこよく去ろうと、手を上げ、トラックに乗り込む。

桐島は頭を下げてくると、JAFの人と話し始める。

それを見届けてから、山田はエンジンをかける。

ー思わぬ収穫があったな。

スマホを見つめ、トートバッグの中にしまう。

山田はアクセルを踏み込むと、トラックを走らせる。

「達者でな!!」

聞こえたかどうか知らないが、山田は大声を張り上げると、高速道路を走っていく。

いつもの日常に戻ったことにほっとしつつ、良い縁ができたと微笑む。

「よし行くぞー!!」

張り切ってハンドルを握り、一気に加速するのだった。


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