第27話
く~ろ~ま~く~。
◇聖王歴1339年風ノ月11ノ日
日が沈み切った後の町の中、冒険者ギルドの直ぐ近くにある安宿に彼らは居た。ギルドの割引込みで、一室一泊銅貨20枚。
北方領土の相場で見ても、かなり安価な金額だろう。室内設備に関しては、値段相応よりは上と言った所。個人で使う分には、まあ悪くない代物だ。
三畳もない室内に、シングルベッドが一つだけ。本来は一人用の部屋ではあるが、どちらも同衾に他意は混じらず、ならば然程の問題はないだろう。
大部屋を使った不特定多数との雑魚寝では、警戒を解いて休むことは出来ない。広々とした個室を選ぶには、懐具合が些か以上に寒い。となれば、妥当な所とミュシャは判断していた。
「いやー、割の良い仕事があって良かったわ」
「僕も、お仕事、頑張っ、た」
「うんうん。ヒビキもちゃんと、役に立ててたわよ」
「え、へん」
そんなベッドの上に腰掛けて、猫人の少女は袋の中の貨幣を数える。ジャラジャラとした硬貨の音は、少女にとっては特効薬。荒んだ心に、染み込むような癒し要素だ。
面と向かっている少年は、そんな少女の態度に小首を傾げる。何度も何度も飽きもせずに銀貨や銅貨の数を数えている猫人の姿に、何がそんなに楽しいのだろうかとヒビキは疑問に思うのだ。
「この調子なら、3週間もあれば目標金額の達成は出来そうかな。ほんっと、アンジュには足向けて寝れないわね」
袋の中身は、ヒビキとミュシャの共有財産。銅貨にして、550枚。内の390枚が、先の狩猟依頼にてアンジュより受け取った取り分だった。
元の所持金が130枚で、本日の稼ぎが二人で70枚。其処から宿代と一日分の食費と雑費を引いた金額が、現在の所持金となっている。純利益は凡そ、一日当たり銅貨30枚程度と言った所であろうか。
本来の想定では、これ程に稼げる予定はなかった。この宿に泊まれたのも、割引サービスを受けられるのも、B級冒険者からの推薦と言う名の信用があったからである。
アンジュの執り成しがなければ、宿はもうワンランクは下の部屋を同額以上の金額で借りる羽目になっていたであろう。
或いは見知らぬ人達と大部屋で雑魚寝、と言う形になっていたかもしれない。そうなれば、私物の盗難などにも注意せねばならず。貸金庫の利用など、安全性の確保で余計な出費が増えていたであろう。
それらの心配がなくなり、宿代も食費も割引かれると言うのだから、大恩があると言っても良い。
工事現場の建築手伝いと言う仕事が直ぐに見付かったのも、高ランク冒険者の信用が影響しているのだから更にである。
「明日、も、頑、張る」
「うん。明日も、一緒に頑張りましょっ!」
「おー」
このまま大きな問題なく日々を過ごせば、15日ほどで所持金は銀貨10枚分を超える。懐に少し余裕を持たせるとしても、3週間もあれば十分な額が稼げるだろう。
仕事場探しの関係もあって半日程度しか働けなかった初日と異なって、二日目以降は勤務時間も増やせる筈だ。となれば或いは、2週間も掛からずに済むかもしれない。
一気に明るくなった状況に、笑みを浮かべてミュシャが言う。明日からも頑張ろう、と。その言葉に頷いて、ヒビキも右手を頭上に掲げる。
そんな和気藹々とした空気の中に、ふと――不協和音が一つ。
「La――――」
鈴の音を鳴らすような歌声。響いた高音に、伴うのは内に不吉を孕む気配。
澱んでいく。澱んでいく。空気が澱むと体感で分かる感覚に、総身を震わせたミュシャは慌てて立ち上がる。
硬貨の袋を懐に収め、尾を逆立てて左右を慌ただしく確認する。そんなミュシャとは異なって、ベッドサイドに腰を掛けたままの少年。色違いの瞳で一点を見詰めている彼は、その時点で気付いていた。
「アリス・キテラは偽りだらけ♪」
何処からともなく響く音。可愛らしい童女の歌。それがどうして、こんなにも背筋を冷やすのか。言葉に出来ない感覚に震えるまま、ミュシャは少年の視線に気付いて同じ場所を見る。
部屋の隅。天井と壁の間にある角。その鋭角な場所に、いつの間にか染みが出来ている。
赤く、紅く、朱い、その染みはまるで真っ赤な血のようで。ゆっくりゆっくり、それが広がり染めていく。
「ドゥルジ・ナスは噓吐き魔女よ♪」
どろどろとした血が広がり、壁に付けられた証明が激しく点滅する。
繰り返す点滅はやがてフラッシュ光のように、一際強く輝いてから消えた。まるで、断末魔の叫びを上げるかのように。
そして世界は、赤く染まる。部屋があったことなど、もう分からない程に赤い。トマトスープが入った鍋を、囲いの中で逆さにひっくり返したように。
そんな赤い世界の中で、真冬のような寒気を伴う風が吹く中、鈴のような歌声だけが響いている。
「教えてあげるわ、その嘘本当♪」
カラカラと乾く喉へ、唾を飲み下す。ごくりと音が鳴ったか鳴らないか、そんな数瞬の後に視界が空ける。赤しかなかった世界は変わり、其処に広がるのは階段だった。
上へ上へと続く階段の、何時しか只中に立っている。その到達点には広い踊り場が、更にその先には歪んだ形の廊下が続き、また上り階段へと繋がっている。その全容を、外から見れたのならば驚くだろう。
まるで騙し絵だ。ずっと上りの階段が続くのに、その回廊はループしている。一番上まで上って行けば、一番下に辿り着く。その場に居ては知覚出来ない程度の僅かな坂と歪みが、赤い世界を閉ざしていた。
誰も何処へも行かせはしないと、そんな意思すら感じさせる。この場所こそは、アリス・キテラの持つ世界。狂った童女の、赤き回廊。
「バァ」
ベッドに座っていた筈なのに、気付けば階段の段差に腰を掛けている。そんな少年の目と鼻の先、視界の中に逆さに浮かんだ童女の顔が現れる。
視線と視線が交わって、しかし互いに大した反応を見せはしない。じっと見詰め合った後、暫ししてからヒビキは首をゆっくり傾ける。釣られるように、童女も首を傾けた。
「……ばぁ?」
「ばぁ?」
無表情のまま、ヒビキは左に傾けていた首を右側へと傾ける。すると童女はニコニコとした笑顔のまま、右側へと傾いていた首を左に傾けた。
再びじっと見詰め合った後、弾けるように童女は甲高い声を出す。
「私はだぁれ♪ 貴女はアリス♪ 事故自己尼子慈子自己紹介は事故照会♪ 知らない見えない分からない♪ 教えてあげるわ♪ その嘘、本当♪」
「……? ……? ……嘘は、嘘だよ。アリス・キテラ」
「あらららららららら」
童女の笑いが混じった声に、ヒビキは何を言っているのだろうかと再び首を傾ける。するとニコニコと笑ったままのアリスは、また真似するように首を傾けた。そんな動きに反応して、またヒビキの首が逆方向へと傾く。まるで糸で繋がっているような動作で、アリスの首も傾いた。
目が合う。見詰め合う。ぼんやりとした瞳で、ニコニコとした笑みで、唯それだけを繰り返す。このまま放置したのなら、彼らはきっと変わらない。唯只管に、同じことを繰り返し続けるのだろう。何となく、ミュシャにはそんな予感がした。
「え、と。その子は、今、とっても嫌~な名前が聞こえた気がするんだけど。お姉さんの気の所為よね?」
同時に聞き捨てならない名が聞こえた気がして、遠い目をした少女は現実逃避気味に問い掛ける。アリス・キテラの名は有名だ。
大魔女、或いは第三魔王。そう語られる怪物は、精霊王やアジ・ダハーカにも匹敵する神話の存在。空想の中にだけ居て欲しい、危険な怪物筆頭だ。
「猫さん♪」
「ちょっ!?」
そんな推定危険人物は、ミュシャの声に反応して視線を向ける。そうして初めて少女の存在を認識したのか、その金色の瞳をキラキラと輝かせた。
「猫さん猫さん猫さん猫さん♪ 初めましてね、さようなら♪ お久しぶりです、お悔やみします♪ 今日は血の雨、良い天気♪ 明日は大雨、あらららら♪」
「な、や、やめっ!? なにを~~~っ!?」
まるで小さな子が、可愛らしい猫を見付けたような態度でアリスは動く。飛び掛かるように飛び付いて、両手で撫で回しながら振り回す。
厄介なのはこの幼子が、魔王と呼ばれるに相応しい力を有していること。振り回されるミュシャは勢いの余り空中に浮かんで、まるで洗濯機に入れられたようにくるくるくるくる回されていた。
「お、や、やめっ。気持ち、悪っ!? お姉さん、漏る。上から、漏れちゃうっ!?」
「……アリス。めっ」
「あらららららららら」
余りの勢いに吐き気に襲われ、心の底から悲鳴を上げるミュシャ。そんな様子を察したのか、ヒビキがアリスの頭を叩く。叩かれたアリスは階段を転がり落ちて、そのままくるくると回転し続ける。
ニコニコと、ケラケラと、嗤いながら転がり続ける。そんな勢いなどなかっただろうに、階段を降り切って、回廊を転がりながら進み続けて、そうして一周してから戻って来る。
下り続けたアリス・キテラは、上り階段の上から転がり落ちると途中でふわりと宙に浮かんだ。
「怒られちゃったわ、嬉しいね♪ ぷんすかしちゃうの、楽しいわ♪ どうして怒るの分からない♪ アリスはいつも分からない♪ キテラは何にも分からない♪ 奇怪詼諧奇々怪々♪ アリスはお歌を歌うのよ♪」
意味を成さない雑音を繰り返した後、唐突にアリス・キテラは歌い出す。狂った童女の思考回路は常人とは異なり、其処には一切の理屈が通じない。ならば当然、誰も彼もが置き去りとされるが常である。
「Humpty Dumpty sat on a wall♪」
「……あ、Humpty Dumpty had a great fall」
されどアリスの前に居る少年は、良くも悪くも常人ではない。頭の螺子が数十本は抜けているアリスの歌唱に、それ知ってると反応したヒビキは声を揃えて歌い始める。取り残されるのは、どうにか酔いを治めていたミュシャだけだ。
『All the King's horses, And all the King's men♪』
唐突に歌い出した赤い童女と、彼女に声を合わせて歌い出した白い少年。その光景を見た瞬間に、一瞬ミュシャの思考は停止する。脳が理解を拒んだ結果、猫人は背後に宇宙を背負っていた。
『Couldn't put Humpty together again♪』
マザーグースを歌い終え、やったねと手を叩き合う子供達。全てを悟ったような、それでいて何も分かっていないような目をしていたミュシャは彼らに問い掛ける。
「あの、お姉さん、素朴な疑問なんだけど。何で、デュエット始めたの? そして何で、そんなに息ぴったりなの?」
「……え? 何で、だろ?」
「あらららららららら」
彼らも分かってはいなかったらしい。ミュシャの瞳はますます遠い物を見るような色となり、彼女はそうして考えることを止めた。
「……で、何の、用?」
「アイサツ」
「アリス、が?」
「ンーン」
そんな思考停止したミュシャを放置して、ヒビキがアリスに問い掛ける。もっと早くに問い掛けるべき疑問に対し、アリスは抑揚のない声で答えを返した。
「ママ」
「まま?」
母が挨拶に来たのだと、その言葉の意味をヒビキが理解するより前に――赤い回廊に並んだ窓が一斉に開いて、冷たい夜風が部屋へと満ちた。
カツカツと、ヒールの音が響く。上り階段をゆっくりと下りて来るのは、眼鏡を掛けた妙齢の美女。冷たい風に吹かれたケープが、ふわりと揺れてから沈んだ。
「お初にお目に掛かります、悪竜王陛下」
黒いナイトドレス姿の女は、階段の踊り場でくるりと回り恭しく頭を下げる。そうして少年の眼前で片膝を付き、見せるは臣下の礼。されどその眼鏡の向こうに浮かぶ瞳は、何処か嘲笑の色を孕んでいる。
彼女は嗤っていた。嬉しそうに抱き着いて来る赤い童女の愚かさを、眼前で疑問符を浮かべている白い少年の察しの悪さを、そして――女の姿を見た瞬間に、驚愕し硬直している己が教え子の存在を。
「それと久し振りね、ミュシャ」
「――っ!? 先、生」
空気が凍る。立ち上がって笑みを浮かべた女の姿に、ミュシャは言葉を発せない。
この女が、敵なのは分かっている。この女が、元凶なのは察している。それでも恩があったから、それでも情がまだあるから、猫人の少女は覚悟一つ定められないでいた。
「誰?」
「私はだぁれ♪ 貴女もだぁれ♪ 私は知らない♪ 貴女も知らない♪ みんな知らない♪ 分からない♪」
「アリス、は、黙っ、て」
「あらららららららら」
そんな因縁など知らない少年が問い掛けて、アリスが茶々を入れて来る。無表情なままヒビキがアリスを軽く叩くと、童女は再び階段を転がり始めた。
コロコロコロコロと回って姿が見えなくなる童女を放置したまま、立ち上がったヒビキが微笑む女の目を見詰める。見返す瞳は薄っすらと色の付いた眼鏡が揺れる度、紫と赤を行き来していた。
「ディアナ、とお呼びください。私は貴方々、魔王様に仕えるしがない魔物が一匹です」
「何の、用?」
「ご挨拶と、そうですね。一つ、お気に召すであろう情報をお持ちしました」
恭しく、礼儀正しく、されどその本質は慇懃無礼。寝惚けたような少年や狂った童女では気付けない、嘲笑に満ちた類の物。誰も彼もを掌で、転がし遊ぶ悪魔の色だ。
(先生は、敵だ。なら、ウジャトの目を、此処で使うべき? でも、私は――)
「ミュシャ。その目は、今は使っちゃ駄目よ」
「っ!?」
「ふふっ。気を付けなさい。使ってしまえば、後悔するのは貴女だから」
そうと察する唯一の少女は、瞳を使うべきかと思考し制される。少女の全てを見通したかのような笑みを、浅い底だと見下したような嗤いを、浮かべたままにディアナは続けた。
「機会はあるわ。数日の内には、ね。だから今は、その目を瞑ったままでいなさいな。そうでなければ、アンジュと言う少女は助けられないわよ」
「――っ、アンジュがっ!?」
全てを知る者が居れば、悪辣なマッチポンプだと罵ったことだろう。ミュシャがその瞳を使っていれば、趣味の悪さを察して絶句していたことだろう。
されど先んじて制されたが故に、覚悟を決められていない少女は切り札を切れない。
ウジャトの瞳は、今のミュシャの体力では日に最大でも30秒しか持たない力だ。しかも一度使えば、それが数秒にも満たない発動であっても、再発動に数時間の休息が必要となる。だから此処では切るべきか、少女は迷って選べない。
「……何が、あった、の?」
「気になりますか、陛下」
「ん。教え、て」
迷えるミュシャが選べぬ内に、ヒビキが先を促す言葉を掛ける。純朴とも言えるその反応に笑みを深めて、ディアナはその言葉を紡いだ。
「雷の後継と成り損ねた、無力で哀れな少女。彼女は不幸にも、悍ましき魔剣を手にしてしまいました」
「ま、けん?」
「聖剣と並ぶって言われてる、天下三剣の一振り。でも、魔剣はロス家の壊滅と同時に行方不明になったって」
「ふふっ、さぁ、どうしてでしょうね。アンジュと言う少女がロスの生き残りと言う事実が、或いは関係しているかもしれませんね」
ニコニコと、ケラケラと、赤いリップが歪んで嗤う。それは育てた娘の笑みによく似て、されど悪意の量が異なる嘲笑。
純粋無垢故の危険さを持つのがアリス・キテラであれば、ディアナ・プロセルピナとは噎せ返る程に濃く煮詰めた悪意を宿す女である。
「魔剣は人の身に余ります。手にした者の肉体を、瘴気によって最適化させる。進化の果てに訪れるのは、堕落と言う名の末路。空を目指していたのに、地の底に辿り着くなんて。なんと滑稽な話でしょう」
女は全てを嗤っている。何も出来ず、何処にも行けない。そんな全てを嘲笑したまま、ディアナは今にある危機を告げる。その元凶が、己であるとはおくびにも出さずに。
「アンジュビュルジュの自我は、最早魔剣に飲まれています。荒れ狂う魔物と化した彼女は、この地の領主に討たれるでしょう。嘗て雷将は、魔剣を手にしたアンジュの父を殺害した。その焼き直しが、今この土地で起ころうと言うのです」
「分かっ、た。助け、る。どっち?」
「ふふっ。ええ、ええ、貴方ならそういうと分かっていましたとも。……アリス!」
ヒビキの回答に満足そうに頷いて、ディアナは童女の名を呼ぶ。転がり続けていた童女は名を呼ばれると、ふわりと浮かんで距離を虚構に。空間を転移して女の腕の中へと納まると、まるで霧が晴れるように赤い回廊は消え去った。
バタンと音を立て、個室に備え付けられた大きな窓が左右に開く。吹き付けて来る夜風の向こうを指差して、ディアナはヒビキへ言葉を告げた。
「この道を真っ直ぐ。走り続ければ、貴方様ならば十分とせずに辿り着けるでしょう」
「ん。ありが、と」
指の差された方向へ、ヒビキは迷わず走り出す。夜風へ身を躍らせる少年の背を見送って、甘える猫のように頭を擦り付ける童女を軽く撫でながら、嗤うディアナは残る一人に問い掛けた。
「貴女は追い掛けなくて良いの? ミュシャ」
「……先生。本当に、何を考えているの?」
「ふふっ。秘密は女を美しくする。許しもなく、妄りに暴いては駄目よ」
「答えないなら、目を使うわ」
「あら、なら恩人を見捨てるのね。いけない子」
くすくすと嗤い煙に巻こうとするディアナに、ミュシャも一つ覚悟を決める。使うなと言われた、その言葉が助言か罠か。分からないが、腹の探り合いで現状勝ち目はない。
だからこそ、女が黙ったままならば切り札を使う。それで後悔することになったとしても、そうしなければ良いように利用されると言う未来しかないから。少女は此処に、意思を定めた。
「本音で言うけど、私も少し迷っているわ。……けど、まぁ仕方がないわね。ここは私が、一歩譲ってあげましょう」
それを察したのだろうか、それとも視て分かっていたのか。笑みの質を僅か変え、女は一つ事実を告げる。それで十分と、彼女は既に知っていたから。
「マッチポンプよ。必要だから、火を付けたの。陛下が水を掛けて、消すという過程に意味がある。彼の成長こそ、私達の望みを叶える為に必要な要因だから」
「ヒビキの、成長!? それをして、先生に何の得がっ!? その先に、貴女は何を求めるのっ!?」
「ふふっ、これ以上は駄目。目を使わない限り、貴女は私の言葉を心の底からは信用できない。だから、此処での問答は時間の無駄。まあ、安心なさい。悪いようにはならないし、答え合わせの時間も直ぐに用意してあげる」
「先生っ!」
「それじゃ、そろそろ貴女も、彼を追い掛けなさい。貴女の足だと、少し時間が掛かるもの。これ以上は、間に合わなくなるわ」
それだけ言うと、ディアナはミュシャに背を向ける。定めた意思は揺れ、再び使うべきか否かを悩むミュシャ。彼女が答えを出す前に、女は夜風の中へと一歩進んだ。
「また会いましょう。次の夜にね」
「ばいばい、猫さん♪ また今度♪ 明日は昨日で今日は明後日♪ 月月火水木金金♪ 土日は何処だ♪ 分からない♪ あらあらあらあらあららららら♪」
一瞬だけ視線を向けて、振り返ることもせずに進むドレスの美女。抱き上げられたままニコニコと笑って手を振る童女と共に、女は夜闇の中へと溶けるように姿を消した。
「……先生。貴女は本当に、何を企んでいるの」
残されたミュシャは一人、呟くように音を漏らす。何が正しく、何が間違っているのか。真実を視る瞳を持つ少女の目でも、今は未だ何も分からなかった。
仲良し魔王勢。悪竜王も大魔女も精神年齢が低い子なので、直ぐに仲良くなれるし、お前ら其処で喧嘩するのと言うタイミングで喧嘩を始めます。




