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「愛しています」と泣いて去った元婚約者からの手紙。その縦読みが「実はもっと前から浮気してました」だと、俺はまだ知らない

掲載日:2025/11/29

婚約破棄された令嬢が、最後に残した手紙のお話です。

きらびやかなシャンデリアの下、レイド王子のよく通る声が響き渡った。


「エララ! 貴様のような陰気で華のない女は、未来の王妃にふさわしくない。よって、この場で婚約を破棄する!」


王子の腕には、ピンク髪のゆるふわな男爵令嬢(新しい愛人)がしなだれかかっている。周囲の貴族たちがざわめく中、エララはゆっくりと前に進み出た。


彼女はいつものように地味なドレスで、深くうつむいていた。その肩が、小刻みに震え始める。


(……きたわ! やっと、やっとこの無能なナルシストから解放されるのね!)


エララは必死に顔を伏せた。今、顔を上げれば、あまりの歓喜ににやけ面が爆発してしまうだろう。それを周囲は「あまりのショックに泣き崩れている」と都合よく解釈してくれた。


「……謹んで、お受けいたします。殿下」


震える声(笑いを堪えている声)でそう絞り出すと、エララは完璧なカーテシーを披露し、逃げるように会場を後にした。


「ふん、見ていられんな。あいつの愛は重すぎたのだ」 王子は勝ち誇った顔で、自身の金髪をかき上げた

数日後。王宮の自室で、レイド王子は高級なソファに深く沈みながら、届けられた手紙を広げていた。


「レイド様ぁ、その手紙、なぁに?」 隣に侍る男爵令嬢が甘ったるい声で尋ねる。


「ああ、あの地味な元婚約者からだ。国外へ発つ前に、どうしても想いを伝えたいと送ってきたらしい。まったく、未練がましい女だ」


王子は鼻で笑いながら、手紙を読み上げ始めた。


「『自由なき王宮での暮らしに、私は疲れてしまったのです』……ふむ、俺の愛に応えるプレッシャーに耐えられなかったというわけか」 「『果てしない後悔だけが、今の私の胸を占めております』……そうだろうな。俺という太陽を失ったのだから」 「『まっすぐに私を見つめてくださった、あの瞳が好きでした』……当然だ。俺の瞳に見つめられて落ちない女はいない」


読み進めるにつれ、王子の自尊心は肥大していく。便箋二枚にもわたる長文は、彼女の愛の重さの証明に他ならなかった。


「『たとえ生まれ変わっても、この想いは永遠に変わりません』……いやはや、罪作りな男だ、俺は。ここまで愛されていたとはな!」


王子は満足げに手紙をテーブルに放り投げた。その手紙が、自身への最大の侮辱であることに気づきもせずに。


その時、執務室の扉が乱暴に開かれた。 入ってきたのは、王国の実質的な支配者である第一王子、ジークハルトだった。彼は鬼のような形相で、一枚の報告書を握りしめている。


「レイド! 貴様、何をしたか分かっているのか!」 「兄上? 何これほどまでに愛されている俺に嫉妬でも?」


ジークハルトは弟の戯言を無視し、報告書を突きつけた。


「貴様が捨てたエララ嬢だがな、本日付けで隣国のガルガディア帝国の皇帝陛下と婚姻を結んだそうだ! しかも、皇帝は数年前から彼女に求婚していたらしい!」 「は……? 皇帝? 何かの間違いでしょう。彼女は俺に未練タラタラで……ほら、この手紙を!」


レイドは慌ててテーブルの手紙を兄に差し出した。ジークハルトはそれをひったくり、一瞥する。そして、さらに険しい顔で弟を睨みつけた。


「貴様、この手紙を読んだのか?」 「ええ、愛に溢れた素晴らしい内容でしたよ」 「馬鹿か貴様は! 目を皿にしてよく見ろ! 横ではなく、縦に読むんだ!」


「た、たて……?」


レイドは訳が分からず、再び手紙を手にした。震える指で、行の頭文字だけを追っていく。


「じ、つ、は……も、っ、と……ま、え、か、ら……」


王子の顔から血の気が引いていく。美しい金髪碧眼が、恐怖と屈辱で見開かれた。


「う、わ、き、し、て……ま、し、た……?」


――実は、もっと前から浮気してました。


「ぶへっ!?」


レイド王子の口から、情けない悲鳴が漏れた。脳内で、地味だったはずのエララの顔が、冷酷な嘲笑を浮かべた悪女の顔へと切り替わる。


「『たとえ生まれ変わっても、この想いは永遠に変わりません』だと? これは貴様への愛じゃない! 皇帝への愛を、貴様への手紙で語っていただけだ! この国始まって以来の恥晒しめ!」


兄の怒声が響く中、この世で一番めでたい男は、白目を剥いてその場に崩れ落ちたのだった。



お読みいただきありがとうございました!


【手紙全文】

じゆうなき王宮での暮らしに、私は疲れてしまったのです。

つたない私の振る舞いが、殿下の重荷になっていたのですね。

はてしない後悔だけが、今の私の胸を占めております。

もう二度と、お顔を拝見することさえ叶わないのでしょう。

ついの棲家を追われる身ですが、決して恨んでなどおりません。

とおい空の下から、貴方様の治世が輝くよう祈っています。

まっすぐに私を見つめてくださった、あの瞳が好きでした。

えがおで送り出してくださった優しさに、涙が止まりません。

かならずや、新しい婚約者様と素晴らしい国を創ってください。

らく園のようなこの国を去るのは、身を切られる思いです。

うしろ髪を引かれますが、決して振り返らないと誓います。

わがままばかりだった私を、今まで置いてくださってありがとう。

きぼうに満ちた貴方様の未来に、幸多からんことを祈ります。

しあわせになってくださいね。愛する殿下、さようなら。

てがみの文字が涙で滲むのを、どうかお笑いください。

まよいのない貴方様の決断を、私は心から支持いたします。

しずかに身を引くことこそが、最後の愛だと気付きました。

たとえ生まれ変わっても、この想いは永遠に変わりません。


「じつはもっとまえからうわきしてました」 (実はもっと前から浮気してました)


気づいていただけたでしょうか? この後、勘違い王子が白目を剥いて倒れ、エララは隣国で幸せになりました。


【読者の皆様へのお願い】


少しでも「スカッとした!」「縦読みワロタ」と思っていただけましたら、 ページ下部(スマホなら↓の方)にある


【☆☆☆☆☆】


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