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第196話【ゾンビ回】神社の墓場に棲むゾンビ蟻

「神社の裏の墓場に、ゾンビ蟻がいるらしいぜ。」


そう噂が広まったのは、いつからだったか。 誰が言い出したのかも分からない。ただ人づてに、 「墓石の間から蟻がわらわら這い出てきた」 「白く濁った蟻の目がこっちを見てた」 などと尾ひれがついていった。


それで、俺たちは確認しに行くことにした。 放課後の暇つぶしだ。


「おい見ろよ。あそこ。墓石の下から出てきてる!」


古い五輪塔の根元、ひび割れた石の隙間から小さな黒い蟻が列を作って出てきていた。 それだけなら、ただの蟻だ。


「やっぱりゾンビじゃねーか!墓場から出てきたんだぞ!?」 「バカ、普通の蟻だろ?よく見ろよ、別に腐ってもねーし」


「いやいや、墓場の中で歩いてるやつはゾンビだって決まってんだよ」 「ほら、墓から離れたとこにいる蟻はただの蟻だろ?」


と、誰かが道端の舗装の割れ目を指差す。そこにも蟻が列を作っていた。


「そうそう。だからそこまではセーフ。境内から出た蟻は、普通の蟻だよ。多分。」


「じゃあ、墓場の中で歩いてるやつはゾンビ確定だな?」


「そうだな。多分。」


根拠は何一つないのに、なんとなくみんな納得していた。


そのうち、誰かがまた叫ぶ。


「おい見ろよ!あの蟻、墓場の中で歩いてる!」


「ゾンビだゾンビ!」


「いや、ちょっと墓の外に出てないか?」


「え?じゃあゾンビじゃないのか?」


「いや墓場から出てきたんだからゾンビだろ?」


「でももう道歩いてるし……普通の蟻なんじゃね?」


誰もはっきりしない。 しまいには、 「さっき見たやつ、ゾンビかと思ったけど普通の蟻だったわ」 「いやでも、墓に戻ったからやっぱゾンビだろ」 「墓に戻ったらゾンビなの?墓から離れたらただの蟻?」


とわけがわからなくなる。


最終的に、みんなそれぞれ適当に、 「あれはゾンビ」 「あれは普通」 と勝手に決めつけて帰った。



帰り道。


(……そもそも、たかが蟻が墓場にいたくらいで何なんだ?)


少し冷静になってそう思った瞬間──

頭に、変な考えがひょいと浮かんだ。


(……もしかして、さっき墓場から出てきたあの蟻……

 あれが、また普通に町の道を歩いて戻ってくるのか?)


そう考えた途端、背筋がゾッとした。


(じゃあ……町の中を歩いてる蟻も、みんな一度は墓場を通ってきたんじゃ……?

 全部、あのゾンビ蟻なんじゃ……?)


自分でも馬鹿みたいだと思ったけど、足が自然と速くなった。


なんとなく怖くなって、足早に急いで帰った。


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