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赤い頭巾と赤い林檎
赤い頭巾を被って赤い林檎を今日も売る
誰も見向きもせずに足も止めずに歩いて去っていく
籠いっぱいに入れた林檎は誰の手にも渡らず
また私だけがこの林檎を食べる
今日も街で林檎を売っている
うしろから誰かにぶつかられ私は転けた
ぶつかった人は走り去り
林檎は坂道を転がってしまった
誰も拾わず林檎はボールのように蹴られ
売れることも食べることもできなくなった
それでも街で林檎を売っている
赤い頭巾はボロボロになって
赤い林檎はもう食べられないくらい腐って
街の真ん中で座ったまま眠った私