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雨は花
雨の降る夜
私は今からこの空を飛ぶ
結局逢えないまま迎えてしまった
後戻りはもうできないところまで
私は越えた
狭い世界が広がるように
視界はぐるりと回りながら雨粒を
全身に浴びながら花と舞っていく
雨の降る夜
隣に立って話をした日を
隣に並んで目を合わせて微笑んだ
手を伸ばしてももう届きやしない
私は越えた
金魚鉢で泳ぐようにして
生きていた日々はもう終わるのだ
夢も希望もこの雨粒に溶けていく
雨の降る夜
涙は雨とともになびいて
葬られていく記憶の欠片は飛んで
暗い世界が身をあたたかく包んだ