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カラス
電波塔の向こうに見える
群れをなして帰っていくカラスたちを
夕焼けに染まる薄い雲に
伸ばした手にそれは透けて目に映った
遠くに飛ばした竹とんぼ
その記憶もいつかはどこかに落として
遠くへ行くときに見つけ
またそれを飛ばしてまた落としていく
暗くなった部屋に座って
ぼんやりと白い天井を見上げてみれば
あの日の声と姿が映って
思わず名前を口にして頬には珠が伝う
電波塔の向こうに見えた
群れをなして帰っていくカラスたちを
どこか羨ましく感じては
そっと閉められたカーテンの中に居る