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九夏
部屋中に広がる夏の匂い
冬の澄んだ空気も恋しいが
息苦しくもある蒸し暑い空気
なびく風、深くなっていく緑
季節は巡って去っていく
もうやめてしまおうかと
何度も考えて思って苦しみ
なんで生きているんだろうと
なんであの子が先に逝くのか
無知で無力な私を赦して
閉ざした心にかける言葉
生きる力にはどうもならず
逝く力に変わってしまったり
余計に苦しめることになって
正解のない世界の醜い姿
海の匂いが広がる砂浜を
裸足で歩くひとつの命すら
手も言葉も届かず浸かった足
沈んでいく命は花のようだと
一輪の花を手向けた九夏




