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雨を包む
台所にスイカを切る音が響き渡る
ふわりと香る夏の匂いを吸い込み
ちりんちりんとゆれる風鈴の音と
扇子で涼を取る姉の姿を見ながら
何度も刃を下ろす音が響いていく
庭先に植えられたミニトマトの苗
そこにぽつんと雨が一滴降っては
町中を包み込むように振り続ける
バタバタと洗濯物を取り込んでは
畳の上に積み重なっていく服の山
シワの伸ばして丁寧に畳む手先は
今までの人生を物語っているよう
傘の花が咲くテレビの向こう側に
行けるのならどんな景色がそこに
広がっては腕を掴んでくれるのか
サマードレスに身を包む姿はない




