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タバコ
ベランダで吹かすタバコは
ぷかぷかと気流に乗って飛ばされる
そんな背中は大きく見えた
今では小さく見えるけれど
忘れるには十分あった時間
それなのにまだ思い出しているのは
金魚鉢をつつきながら想う
今も昔も変われないでいる
ベランダの柵から乗り出す
暗闇に見える光は人工的なものだと
自然に差し込む光はないと
気付いてもそれでよかった
忘れたくて忘れたくなくて
出会えば別れて別れては出会っては
そんな繰り返しが続くなら
気流に乗って飛ばされたい