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写真立て
雨の降る前の冷たさに
触れても部屋には独り
忘れたくない歌を零す
滲んだ視界に映る世界
好きも嫌いも要らない
酸いも甘いも要らない
笑ったままの写真立て
積もった埃を払っても
しばらく降り止まない
静かに降り注ぐ雨すら
心を濡らして溺れさせ
もがいても沈んでいく
もし生まれ変われたら
なんて、どうせ無理で
どこかで泣いてるなら
そっと頭を撫でに行く
一人で戦わせないから
僕は独りでもへいき、
だから大丈夫だってば
抱きしめる理由なんて