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藤棚
藤棚のベンチに座って歌を詠む
春を運ぶそよ風がノートのページを次々とめくって
新しい人生を歩め、そう言っているように見えた
藤棚のベンチに座って歌を歌う
あの頃の記憶が蘇って歌えないくらいに涙が溢れた
過去を見ていないとやっぱり生きていけないんだ
藤棚のベンチに座って青空を見る
あなたと別れたときもこんな青い空だった気がする
目と目を合わせてもう二度と会わないと誓った日
藤棚のベンチをあとにして帰った
あなたにとっては遠い過去になってしまっただろう
それでも私にとっては大切な最後の記憶になった