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白いスミレ
毒リンゴに口をつけ
そのままかじって飲み込んで
影で見ていた魔女は笑ってその場を離れてしまった
食べたのは姫でもない普通の少女
王子様なんて助けに来るはずもなく
森の中で静かに眠ってしまった
生きていくことが辛かった少女
眠る自分を空から見ている
「これで楽になれたんだ」
ほっとして雲の階段を登りゆく
誰も助けてくれないのは
最初から分かりきっている
王子様の口吻なんて要らない
それならしんだほうがマシだろう
静かに眠る少女の周りには
白いスミレが咲いていた
乙女の死に気付くものは
誰もいなかったという