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【書籍化】ダンジョンに閉じ込められて25年。救出されたときには立派な不審者になっていた  作者: 乾茸なめこ


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 俺とメガネの姿に大きな差はない。どちらもボロボロで血と泥にまみれ、血を失って青白い顔をしている。

 だが俺は立っていて、メガネは地面と仲良しだ。


「殺すかァ?」


 メガネが訊いた。


「視野に入れている」


 端的に答えた。

 俺の言葉に、メガネはよくわからない半笑いの表情を浮かべる。情けないようで、それなのに本心から楽しそうな気配も窺える。


「なんだよ」

「いやァ……。場合によっちゃ本当にィ……殺されるんだろうなと思ってなァ」


 そりゃそうだろ。生かすメリットもあるかと思って生かしちゃいるが、使えねえなら殺した方がいい。


「俺らが捕まえたモンスターに、うっかり殺される事故が起きるかもしれねえしな」

「事故な……。ナガァ、頼みがある。俺のことはこたァどうしたって構わねェ。だが、生き残った構成員のやつらは連れ帰ってくれねェか?」

「改めてだな。その対価をてめえが払えるかも知らねえし、約束守るかもわかんねえんだわ」


 殺し合った仲だろ?

 お前は頼みごとを出来る立場じゃねえだろうが。


「約束はァ守る。今さらお前に逆らう気力も湧かねェ。なんなんだよ。人間やめてる相手とはこれ以上やりあえねェ」


 メガネの顔にはすっかり諦観が浮かんでいた。

 頼みの綱にしていた頭数を失って、協会から借りたユンボも全損。戦果は俺らに全て搔っ攫われて、おまけに利き腕を失っている。

 少なくとも牡羊の会は解散が決定しているようなもんだ。


 振り返れば、トリアージと治療をしている様子が目に映る。

 犠牲出し過ぎだ、馬鹿。


「俺の……使い道があるならァ好きに使え」


 メガネが少しだけ小さくなった声で言った。

 言葉の間に挟まる息が弱弱しい。あんまり長々と話していたら、勝手に死にやがりそうだ。


「なんでもするか?」

「ああ、それでェ生き残りを連れて帰ってくれるなら……」

「わかった」


 俺はメガネの襟首を掴んで、エルフ達の方にぶん投げた。

 短期間でよっぽど嫌われていたのか、エルフ達は仕方ないといった様子で受け取る。


「すまん、こいつもうちょい使うわ!」

「あいよー」


 仲間たちに声をかけると、山里が慣れた感じで返事をした。

 俺がメガネを放ったことについては、誰も気にしていない。最近、仲間たちが慣れ過ぎているような……?


 メガネ自身が協力的なら、やりたいことがあるんだよな。

 協会の上層部に吠え面かかせてやらねえとなぁ!


 次にキーティアを探す。あのポンコツエルフに、ノーライフキングとの確執を確認しておきたい。

 ぎゃーぎゃーガキの声で騒がしいところに向かった。


『知らない! 知らないのじゃ!』

『おまえ何歳だ!』

『わからぬ!』

『そんなはずないだろ!』


 幼女の声ってこんなにうるせえのな。マジで頭に響く。

 シャベルマンに見守られて、ノーライフキングとキーティアがポカスカ叩き合っていた。

 いや、叩き合いじゃねえな。ノーライフキングは綺麗な腰の入ったパンチをしているのに、キーティアはぐるぐるパンチだ。


『よお。キッズルームは大盛況だな』


 シャベルマンがこくりと頷いた。


『子どもじゃない!』


 威勢は良いが、今のノーライフキングは完全に子どもだ。

 完全に力を失っているのか、怨敵のエルフを前にしても、ガキの喧嘩しかできていない。


『ここに置いててもエルフと揉めてるだけだろうし、地上に連れて行こうか考えてんだよな』


 モンスターを地上に連れて行く懸念はある。

 もしどこかで力を取り戻したりしたら、大きな犠牲が出てしまうだろう。だが、こいつはその気になればいつでも地上に出られると言っていた。ならば、いっそ行動を共にしちまう方がいい。


『ナガはそれでいいの?』


 いつの間にかそばに来ていたスイが言った。

 これまでの俺だったら、とりあえず殺していただろう。だが、今回は変なことに巻き込まれすぎたせいで、知識不足を痛感させられたんだよな。

 世界樹だダンジョンだって規模の戦いになっていくなら、少しでも相手のことを知らなければならない。


 エルフは阿呆だから、世界樹についてどれだけ理解しているかも怪しいしな。


 協力的だがつっかえねえエルフと、協力してくれるか未知だが知識量は信用できるノーライフキング。それぞれ別陣営だし、今後の知識の両輪として備えておきたい。


『まぁ、最悪のときは俺が処分するわ』

『やはり傲慢だ!』


 キーティアにマウントをとってぶん殴っていたノーライフキングが俺に向かってくる。頭を押さえてやれば、届かないパンチがぶんぶんと空を切った。

 倒されているキーティアは、『やめるのじゃ~』とかほざきながら目を回している。しょうもねえ。


「死体はどうすっかな」

「可能な限り遺族に戻すのが、協会の規則ですね」

「クソくらえ。規則はどうでもいいが、こいつらにも家族はいるんだよな」


 メガネなんぞに従っている時点で、順風満帆な家庭環境ではなかったかもしれない。

 だがそれでも。俺が冒険者だった頃とは違って、探索者ってのはまともな人間もやる職業になっている。帰りを待つ人だっているはずだ。

 トリアージをあらかた済ませた隼人が戻って来て言う。


「遺体を持って帰れば、悲劇のアピールにもなるしね。協会のお偉いさんが保身のために情報操作しても、現物の遺体を必死で持ち帰って来た英雄の姿を出せば、簡単に情報戦に勝てるんじゃないかな」


 さてはお前、腹黒いな?

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