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【書籍化】ダンジョンに閉じ込められて25年。救出されたときには立派な不審者になっていた  作者: 乾茸なめこ


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『ん~、配信がおかしい感じします。トウカはどーなってる?』

『あぁ、これは……嫌な感じですね』


 バギー間の無線にそんな会話が入った。

 どうも、自分たちの配信が見れないらしい。アカウント表示はオンラインになっており、しかも配信中の表記もあるのに、肝心の中身が開けない。


「そりゃ、協会がやる強制停止の措置だな。視覚的にも映せない機密が映りそうなときにされるもんだ」


 山里が答えた。

 俺たちが走っているのはまだ地下20層あたり。こんな早くから強制的に配信を止めるなんてことあるか?


『本気で対人戦覚悟した方が良いかもね』


 スイが緊張のにじむ声で言う。

 純粋な機密というより、牡羊の会の不法行為を誤魔化すために、配信を映さないようにしている可能性がある。


『ふふ。それならそれで、こちらにも考えがあるというものです』


 トウカが不敵に笑った。人間にパイルバンカー撃つつもりか……?

 山里が嫌そうな顔をしながらハンドルを回す。


「うちも切り札使わんといけないかもなあ」

「切り札なんてあんのか」


「一応な。そこそこの階層潜るパーティーなら、多かれ少なかれどこも持ってると思うぞ」

「ほーん。ロボのときに使わなかった理由はあんのか?」

「使いづらいんだ」


 そんなもんか。

 しっかし、妙に引っ掛かるな。メガネの性格的に、殺しをいとわないのは分かっている。配信に映らない、裁かれないというなら、遠慮なく数で囲んでハチの巣とかもやるだろう。


 だが、不死の王(ノーライフキング)の還らぬ城を見て、そこまでリスクを冒すか?

 400人いたとて、あれを相手どれば犠牲は出る。俺たちは戦力としては決して小さくない。あいつは使えるもんなら有効活用したいと思うはず。


 むしろ、配信を止めたことで、俺がメガネを殺しやすくなっただけだぞ。


 バギーがゾンビを次々ね飛ばす。もげた首がフロントガラスにぶつかり、顔の形の汁を残した。きたねえ。


「やけにゾンビが多く感じるわ」

「スケルトンがいねぇな。不死の王(ノーライフキング)に釣られて階層を降りてんのか?」


「げ、どんどん数が増えてるってことか」

「あんだけ多けりゃ倍だろうが10倍だろうが変わんねぇよ。ヒルネ風に言うなら『いっぱいが、いっぱいになりました!』だろ」


『ナガさん、馬鹿にしてませんかー?』


 よくぞ気づいた。


 このスケルトンの移動は、俺たちにとってはむしろ追い風かもしれない。

 広範囲からスケルトンが一か所に向け集まるなら、自然とローラー作戦を仕掛けられ続けることになる。牡羊の会が潜伏する場所が潰されるってわけだ。


 敵と敵が食い合うのが理想。



 ――だなんて思っていたんだがな。


 エルフの集落に着いた俺たちは唖然とした。

 忙しなく響く建築の音。樹木の間に張り巡らされた足場。ドローンに大量の資材を積んで動き回る男たち。


 エルフの里を中心とした、森全体の要塞化が始まっていた。

 城壁などは無い。立体的なアスレチックのようになっており、とにかくアンデッドの移動ルートを阻害するような構造になっている。


 単管パイプの登り棒や、横幅の狭い階段などを利用し、有利に戦う場を作っている感じだな。


「ばっちり先着してやがるな」


 何人いるんだ、これ。

 間違いなく100人以上の男たちが作業している。


「ナガさーん。オフロードバイクまとめて停めてるとこありました!」


 移動手段もバッチリってか。バギーよりも便利そうだな。

 それにしても建築がかなり進んでいる。


「俺らの配信見た段階で行動開始してそうだな、こりゃ」


 使っている資材が一般的な建築用の足場なあたり、急遽きゅうきょ用意したものではあるのだろう。それでもこの速さを実現できるのは、ノウハウの蓄積ちくせきがあるからに違いない。

 これまでも、協会主導で大規模な作戦を担ってきた、ということか。


 刺さるような視線を浴びながら、エルフの集落に入る。

 蜘蛛の巣のよう張り巡らされたワイヤーロープと単管パイプが鬱陶うっとうしい。

 アホ面で工事の様子を見上げているキーティアに、トウカが話しかけた。


『キーティアさん。お久しぶりです』


 キーティアはトウカと山里を見て表情を輝かせたあと、俺を見てびくりと肩を震わせた。


『ひ、久しぶり、なのじゃろうか?』


 時間の感覚が違うようだ。さもありなん。


『どうでしょう。この状況は一体……?』

『なんじゃ。そなたらが送ってくれた支援ではないのかの?』


 エルフは不思議そうにする。

 そうだよな。こいつらにとっちゃ、人間は人間。俺たちの内輪揉めなんて知る由もないだろう。


『そうではあるのですが、所属が違うと言いますか……別の氏族が出しゃばって来た、と表現すれば伝わるでしょうか?」

『おお、なるほど。だが人間の支援には助かっておるぞ。還らぬ城に集まるアンデッドも倒してくれるしのう!』


 キーティアは嬉しそうに言う。まるで危機感のない様子に溜め息が出た。


『おいこら』

『ぴぃ!? な、なんじゃ!』

『喜んでるとこ悪いが、これ、お前らの為にはやってねえぞ』

『はぇ?』


 俺は周囲の建築物を指さした。


『高所とるだけなら、エルフは最初から出来るだろうが。本当に必要なのは、地面に植わってる生命の木を守るための、地上の防御設備じゃねえのか? 全然ねえぞ』

『あ』


 そう。現状作られているのは「はぐれ」のアンデッドを倒すための設備でしかない。エルフの集落を守るという意識はあまり感じられないものだ。

 さらに言うなら、こんな小手先の防衛設備で帰らぬ城を止められるはずもない。巨大な質量で、森ごと潰されるのがオチだろう。


『い、一体どうなっておるのじゃ!?』

『知らねえよ。俺らが知りてえわ。見たこと、話したこと、聞いたこと、知ってること、全部洗いざらい吐けコラ』


 俺はキーティアを正座させた。

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