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7.お茶会を終えて

レンリッヒに再びエスコートされて東屋に戻ると、二人のお姉さまと皇城の使用人達が好奇心いっぱいの目でこちらを見ていた。

……いたたまれない。


「無粋な質問はしませんわ。お互いの距離を縮められたようでよかったですこと」

リリアナがにこやかに話しかけ、隣でマーガレットがこぶしを突き上げていた。

「こんなに急展開だとは!いいもの見させてもらったわ!」

違うから~!


「そんなんじゃないって。ただサラと秘密の趣味が同じだっただけで」

レンリッヒも慌てて否定するが、二人の侯爵令嬢はかえって興奮している。

「秘密、秘密……、素敵ですわぁ」

「サラ、ですって?展開が早すぎてもうついていけません!」


苦笑いしながら目を合わせるレンリッヒとサラフィナだったが、そんな様子さえ周りのみんながほほえましそうに見ている。勘弁して……。


皇太子妃候補からの離脱をほぼ確信した二人の侯爵令嬢は、応援モードに突入していた。

「サラフィナ様、私でお役に立てることがあれば何でもご相談くださいね。私のことはリリーと呼んでいただけたら嬉しいわ」

そうリリアナが話すとマーガレットも乗ってきた。

「私のことはぜひマギーとお呼びください。私もお二人のこと全力で応援します!」


レンリッヒとは友人枠であって、伴侶候補ではない!と心の中で否定するサラフィナだったが、彼女たちと仲良くなれるのは嬉しいことだ。

「では、私のことはサラと。今後とも仲良くしていただけたら嬉しいです」


リリー、マギー、サラとお互いの名前を呼びあい、キャッキャウフフとはしゃぎ始めた3令嬢の輪に入れず、一人傍観するレンリッヒ。

まあ、そうなるよね。



ほどなくして皇太子主催のお茶会はお開きとなる。


「また近いうちにお会いできるのを楽しみにしています。ぜひ声をかけてくださいね」

目をキラキラさせて挨拶するマーガレットに、「それ、経過報告しろってことでしょ。何もないから!」と思うサラフィナ。でも楽しかったな、このまたこのメンバーで会いたいな、そう思いながらサラフィナも挨拶をして退出した。

 


その夜、皇城では。


「ヴォード公爵令嬢と懇意になったそうだな。でかした!」

今日のお茶会の成り行きは当然、皇帝ユアンの耳にも入っていた。

親父、「でかした!」って……。


「サラフィナは16歳よね。あと2年も結婚できないなんて、待ち遠しいわ~」

いや、母さん、気が早すぎだろ?ようやく友達枠だよ。婚約まで無事たどりつけるかどうか……。


ちなみに、キャサリンに対する心の中の呼称は「母さん」で着地した。37歳の若い母に「おふくろ」はたとえ心の中だけだとしてもかわいそうだ。というか、近いうちに声に出してしまう自信がある。


「とにかく!」

こほんと咳払いをして、ユアンは重々しく続けた。

「こまめに手紙を書き、贈り物を絶やすな。絶対に逃がすなよ?」


ドスを利かせるところ、間違ってるって!しかも手紙?歩いて10分なのに手紙?いや、この時代それが普通なのか?手紙はいいとしても

「何でもない日にやたらプレゼントされても、サラには迷惑だって」

現代日本人の感覚として、記念日の特別なプレゼントは喜ぶだろうが、定期的に贈り物をされても困るだけだろう。


「ほほぅ、レンはヴォード公爵令嬢のことがよくわかるんだな」


「もう!だったら私があの子と一緒に買いに行くわ。可愛いドレスを選びたいのよ~」

「いや、キャシーが一緒に行っても意味がないんだが……」今回のツッコみ担当はレンリッヒではなくユアンだった。


皇帝一家は今日も残念。



「今日のお茶会、レンリッヒ殿下に庭園へ連れ出されたとか?無理やりだったのなら私から陛下に厳重に抗議をしよう」

険吞な雰囲気で話し始めるサラフィナの父、アンドリュー。


無理やりじゃないし!お父様、黒いオーラが出てますよ!


「あら?じゃあ、サラはレンリッヒ殿下と仲良くなったのね?」

母レティシアの言葉に、うーんとうなるサラフィナ。


「お父様やお母様がイメージしているのとはちょっと違うかな~。仲良くというか同盟、みたいな?」


「同盟?よく分からないけど、とにかく仲良いことが一番よ!」

ちょっと食い違ってる気がするけど、まあ、いいか。確かに過去を共有するというのは、ちょっと特別感はあるかも。


兄ティモシーは今日から不在だ。

里帰り出産中の妻クリスティーヌに無事男の子が生まれ、妻の実家へ会いに行ったのだ。

馬車で片道3日。遅いよ!予定日より前に行こうよ!と兄を追い出した母とサラフィナだった。


「リリアナ嬢もマーガレット嬢も実家のお仕事でその才能を発揮しているそうじゃない?どう考えてもサラに皇太子妃のお鉢が回ってくる気がしてたのよね~」

お鉢って、言い方!それにまだ皇太子妃確定じゃないから!


「いや、なにもこの3名から選ばなければいけないというわけではない」

そういう父アンドリューの言葉にサラフィナは首を傾げた。

「そうなの?でも侯爵家以上で年頃の女性って私たち3人しか……」

そう尋ねるサラフィナに、アンドリューが話を続けた。


今の皇帝、ユアンも伴侶選びには苦労したらしい。

当時婚約者候補だった二人の女性は、一人は内向的で皇后の責務と聞いただけで倒れてしまう気弱な人、もう一人は風の魔法を操り、なんと冒険者になってしまった。


二人のほかに皇后の座を狙う伯爵令嬢はいたものの権力欲丸出しで問題があり(いつの時代もそれは同じなのね)、気づけばユアン25歳まで婚約者もできなかったとか。

そして当時17歳になっていたレンブラン侯爵令嬢キャサリンに白羽の矢が立ったのだ。

ユアン18歳の時はまだ10歳で婚約者候補にもなっていなかったキャサリンだが、ユアンがもたもたしている間に年頃に。


これが最後のチャンスとばかりに家臣だけでなく貴族総出でキャサリンとの出会いをセッティングし、思惑通りユアンとの恋に落ちたキャサリン。彼女は今でも、ユアンと運命的な出会いを果たし、大恋愛の末結婚したと信じているらしい。


「だから今9歳や10歳の女の子も、最終的には候補になりえるんだよ」

とあっさり言い切る父アンドリューの言葉に、サラフィナはめまいを覚えた。

10歳の女の子を将来の皇后に仕向けるとか、お父様、あなたは鬼ですか!

明日も投稿させていただきます。よろしくお願いします。

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