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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あなる

初投稿です


東の京のあなる駅にとある男がいた。

その男は会社に勤め、給料を得るために勤勉に働く何処にでもいるようなサラリーマンだった。

男は列車が遅れた事に対する謝罪のアナウンスと共にホームへと入る七時半発の戸入といれ行きの列車に乗り、流れるような動きで入口から少し離れた位置にある吊り革を握り、出発の時刻を待った。

列車が駅を離れて三分ほど経過した時、それは前触れもなく起こった。


突如として男の腹に激痛が走り、腹の中で何かが暴れ出し始めたのだ。

その痛みに男は小さく呻き、鞄を持っていた手を腹に当て、何が起こったのかと周囲に目を走らせた。

しかし、男の腹に激痛を齎した元凶は見つからず、二度目の激痛が押し寄せてきた。

その時、男は気付いた。

腹痛の元凶は自らの大便であると。

男は、朝食に牛蒡のサラダを食べた事を後悔し、

とある事実に気づき、戦慄した。

《この列車にはトイレが無い……》

男には二つの道がある

一つ、流れに身を任せ社会的に死ぬ。

二つ、然るべき場所にて肛門を緩める。

二つの選択肢、二つの結末。


男は迷うことなく、然るべき場所で肛門を緩めることを選択した。

出口を求め、暴れ狂う糞便

対するは肛門の括約筋

列車の中で孤独な戦いが始まった。


けれども、男は勝利を確信していた。

なぜなら戸入駅の一つ手前の駅である御丸おまる駅に間も無く到着するためだ。

いつもよりだいぶ遅く会社に着くことになるが、そんなことはどうでも良かった。

アナウンスが流れ、列車が減速し、駅のホームが見えた時、

男は、自らの目を疑った。

ホームには異常なまでに人が密集していた。

なぜ、こんなにも人が密集しているのか、

それは、列車が遅れた事で早朝に乗るはずだった人が次の列車を待っていたからである。

列車が停車し、多くの人が押し寄せてくる。

男はその人々を見て最悪の光景を幻視した。

押し寄せる糞便、開く肛門括約筋、そして……

男はその光景を現実のものにしないために、押し寄せる人々を押し除け、外に出ようとした。

しかし、人の波は絶えず押し寄せ続け、勢いが衰えた時には

扉は閉まっていた。


男は覚悟した。

こんなところで死んでたまるか、と

しかし、男の限界はもうすぐそこまで来ていた。

人がひしめく列車の中、他人の体や荷物が男にぶつかるたびに、少しづつ少しずつ肛門は緩んでいった。

男は、生まれて初めて神に祈った。

そして、排泄欲求を断つために経を唱えようとしたその時

判決が下された

【間も無く、戸入、間も無く、戸入】

そのアナウンスが聞こえた瞬間、男は神に感謝した。

精神が擦り減り、肉体は限界を迎えていた男にとってそのアナウンスはまさに天使が吹くファンファーレそのものだったのだ。

だが……一瞬の気の緩み、それを悪魔は見逃さなかった。

瞬間、これまで以上に激しく、猛烈に糞便が押し寄せる。

安堵していた男にとってそれはまさしく青天の霹靂だった。

男は歯を食い縛り、肛門を締めようとした。

列車が減速し駅のホームに入り、扉が開くと同時に……

肛門が決壊し、男は死ぬこととなった。


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