5話 日本妖魔連合
ミスとかあったら教えてください!!すぐに直します!!
とある廃病院の地下室で、2人の男がボロボロでホコリまみれの部屋で何かを話していた。
男達は、黒く変色して、皮がべろべろに剥がれたソファの上などお構い無しに腰掛けている。
地下のこともあってか、部屋の中はとても暗い。
男達はスマホのライトの機能を使って、何とか辺りを照らしている。
埃が宙に浮いてるのがわかる。
男の1人は
「汚すぎだろ……、どんだけ長い間手入れされてないんだよ。この病院は。」
と思ったが、同時に
「まっ、そのお陰で重要な会議の場所として、重宝されてるんだけどな」
とも思う。
そうこうしてる内に、もう1人の男が口を開いた。
「お前、例の計画はうまくいっているのか……?」
「ああ、一応順調だが、Jの監視にかからないか、不安な面もあるな。」
「なるほど……、Jは簡単には倒せん……。出会わないことを願うしかないな。」
「そうだな………。」
「ところで、妖鬼の捕獲の方の進捗はあるか?」
「いや、その辺はまだまだだ。ガイヤ、アクシオン、そして鬼喰いぐらいは手に入れておきたいものだな。」
「そんな簡単に捕まえられる奴らなのか?」
「いや、うちのボスでも厳しいかもな。如何せんアイツらはとにかく強い。正面からぶつかるのは得策ではないだろう。だから、誰か人に召喚させるのが一番いいんだろうけどな……、そう簡単に器は見つからねぇよ。」
「やはり、もう少し時間をかける必要がありそうだな…。」
そう言うと男達はため息を吐いた。
男達はここ最近何の変わりもないことを憂いていた。
何とかして組織に貢献したいものだ。
しかし、あまりにも仕事が回ってこないものだから、このままでは金欠で、食ってはいけないだろう。
行き場のない俺達を雇ってくれた唯一の組織に恩返しをしたいものだが、下っ端故、雑用程度の仕事しかやらせてくれない。
そんな状況を打破するために、俺達は自主的に妖鬼の捜索や組織に加入してくれそうな人を探している。
そんな努力もあって組織には人が増えた。
しかし、だからといって俺達の立場が変わることはなかった。
これからどうしようかと2人が思っていたとき、男の1人のスマホに一件のメールが届いた。
それを確認した男は、もう1人の男にこう言った。
「いや、そうでもなさそうだ……。つい最近、鬼喰いが地球に召喚されたらしい。」
「マジかよ……、アイツを召喚できるなんてどんな人物なんだ?」
「さあな……。俺らの仕事はそいつらの偵察とJの監視だってさ。」
「おおっ!!やっと俺達にも仕事が回ってきたってか。」
「そうだ。しかも、ボス直々の依頼だ。成功すればそれなりの地位と報酬が期待できるだろう。」
「ったく……、お前は強欲だな。まあ、せっかく貰った仕事だ。絶対に完遂させようぜ…。」
「そうだな。リスクは伴うが、遂に俺達もそれなりに認められたっつうことだ。やるしかないな。」
男達は立ち上がって、埃まみれの部屋から出ていった。
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章正が妖鬼を召喚した次の日、彼は神宮寺礼子に色々と教えてもらっていた。
日曜日ということもあって、章正はこれからの方針を決めるためにまず、礼子に妖気の扱いの基本を教えてもらっていた。
ちなみに、エンゲとタージャとグリージャは隣の部屋で何か話し合っているみたいだ。
「いいかい、章正。妖気ってのは人間の内部にあるエネルギーの一種だ。まあ、妖気って言っても昔の人間が馴染みやすいように便宜上そう呼んでるだけで、実際は全く別の力さ。現代では循環エネルギー量なんて呼ばれてる。そして、その力は人間の心と強くリンクしていることがわかってるのさ。」
章正は神妙な顔つきをしてこう答える。
「心と………………ですか?」
それを聞いて、礼子は得意気に答える。
「そうさ…、妖気は人間の感情と妖鬼の感情で大きく属性が変わる。例えば章正………、お前の妖気の属性は陰だな。」
「なっ……、ちょっと!!確かに僕は陰キャですけど何て言うか……見た目だけで判断してません?」
そう言われた礼子は少しムッとして、
「失礼な!!あたしは妖気やオーラを判別することができるんだ。何も見た目だけで判断してるわけじゃないよ!!」
と答えた。
「ああっ……、すみません…。ところで、オーラというものはなんですか?」
「ああ、言ってなかったね。オーラというのは外部に漏れ出た妖気のことさ。最近では放出エネルギー量と呼ぶ奴もいるけどね。ちなみに、これも属性があって、章正は負属性だね。このオーラを制御できないことには妖気の制御なんて出来たもんじゃない。章正にはこれからオーラの制御を覚えてもらうよ。」
何だか面倒くさそうな修行の予感に章正は嫌気が差してきた。
「はぁ……、何だか大変そうですね……。」
「そうさ。章正はまず、エンゲと全く属性が違う。エンゲはあんたと真逆の属性だから、相性がとても悪い。このままだとエンゲは本来の力を出せないし、最悪弱体化し続けて消滅してしまうだろうね。」
「えっ……、エンゲが消滅するって……、そんな……」
「妖鬼召喚にこういうトラブルは付き物さ。皆召喚はうまくできるんだ。でも、継続はしないんだね、これが不思議と。」
「俺が軽はずみにエンゲを召喚したりしなければ……………。俺のせいでエンゲは………。」
章正は後悔の念にかられていた。
最初は別の意味で後悔していたが、今は違う。
自分が妖鬼召喚の重要性を理解せずに、軽はずみに行った結果がこれである。
自分は本当に愚かで馬鹿なやつだと再認識するにはそう時間はかからなかった。
「……………。消滅を防ぐ方法はないんですか?」
「あるにはあるが……、そんな一朝一夕でできるもんじゃない。章正……、あんたはこれを本当にどうにかしたいと思うのなら教えてやってもいい。ただし、あんたは地獄のような特訓に耐えなければいけない。そんな覚悟があんたにはあるのかい?」
「お願いします!!どんなことも乗り越えてみせます。どうかその方法を教えて下さい。」
「口で言うのは誰でもできる……。あんたにはせいぜい行動で示してもらおうか。」
礼子の淡白な返事に章正は少し戸惑った。
「……?あの………」
礼子はしばらく考える素振りをして、章正の方を向き、こう言った。
「章正。今から1週間以内にオーラの制御を完璧にしてみな。今からやり方は教えてあげるからさ。」
礼子はこれが無理難題ということは十分に理解している。
今までも召喚に来た人のうち何十人かはこういった指導をしてやったが、全員オーラの制御に2ヶ月、妖気の制御に4ヶ月もかかっている。
それを何も知らない章正がたったそれだけの時間でできるようになるとは礼子はこれっぽっちも思っていない。
では、なぜ礼子は章正にそんな無理難題をぶつけたのか?
それは日本妖魔連合という反社会的勢力から章正を守るためでもある。
昭和や平成は比較的大人しかったものの、代替わりでもしたのか、彼らは最近になって、また活発に活動し始めた。
それにとある妖鬼を捕まえようと画策しているそうなのだ。
その内の一体がエンゲであるという情報もすでに入手している。
しかし、今の章正とエンゲに奴らを相手にする力はないだろう。
だから、自分の目の届かないところで、章正が奴らに襲われたらひとたまりもない…。
礼子は章正に自衛の術をできるだけ早くつけてほしいと考えている。
だから、敢えてエンゲの消滅を言って動揺させ、章正のやる気を煽ったというわけだ。
でも、別に章正を騙しているわけではなく、むしろこれは彼にとって一石二鳥ということになる。
ただ章正には奴らと遭遇した時自分が助けに来るまでの時間稼ぎをしてほしい。
礼子も章正と同様に覚悟を決めるのであった。
「それにね、章正。それらの修行と平行してあんたの性格も改善してかなきゃいけない。妖鬼と主人の性格の相性もエンゲ消滅を防ぐ大事なものさ。」
「えっ…!!じゃあ、俺はアイツと同じ性格にならなければいけないってことですか?」
「いやいや、あそこまではいい。しかし、多少明るい性格になってもらいたいね。そのために何というか……、友達を増やしてみたり、普段やらない活動をしてみたり、スポーツやトレーニング、恋愛もいいかもしれない。とにかく少しずつでもいいから何かやってみないかい?」
「そうですね……。う~ん………………。まずはトレーニングと友達を増やすことから始めてみます。」
「具体的に考えていることはあるのかい?」
「いやぁ……。何て言うかとにかくクラスの人に話しかけまくってみようかなとは思ってます。」
「う~ん………………。何かそれだけだと弱い気もするけどねぇ………。」
怪訝な顔をして、礼子は暫く考え、突然何かを思い出したかのように章正に質問をしてきた。
「あっ、そう言えばあんた、どこの学校に行ってるんだっけ?」
「あの~、片橋第一高校というところに一応……。」
それを聞いた瞬間、礼子はとても驚いた表情をした後、少し興奮気味に喋りだした。
「!!!あーーーあそこか。あそこなら私の知り合いが確か三年前からいるはずだよ。小田新生っていう人を知らないかい?その人と協力して何か部活か同好会を立ち上げてみるのもいいかもね。」
「小田先生なら知ってます。確か2年の学年主任の先生だったかな?若いから印象に残ってるんですけど……、いやぁ、俺に部活をつくるとかできますかねぇ?」
章正は自信がなさそうな顔をしながら首をかしげた。
「何でもいいんだ。表向きはあんたの趣味をそのまま部活にして、妖気を持っている人間を集めればいい……………。」
章正は礼子の言っていることが理解できなかった。
「???、えっと……、何で…、妖気を持つ人を集めなければならないんですか?それも何かエンゲと関係あるんですか?」
礼子はまるで、その質問は想定していたみたいな表情をした後、少しだけ声のボリュームを下げて答えた。
「まあ、あるといえばある。詳しいことは小田に聞いてくれ、少なくとも今は話せない。」
結局章正は、礼子にうまく丸め込まれてしまった。
「??はあ……、わかり……ました。」
章正は仕方ないかと思いながら、無理矢理納得しておくことにした。
「さーて、話はここまでにして、オーラの制御の修行を再開しようか。時間が惜しいからねえ。」
章正はすぐにエンゲのことを思い出したのか、急にやる気になって、
「はっ……、はいっ!!!」
と言い、修行が開始された。
礼子と章正は一階に降りて、階段横のドアの奥に消えていった。
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近くの物陰から、彼らを観察していた男がいた。
男はスマホでもう1人の仲間と電話をしながら、連絡を取っていた。
「ボスの言う通り、本当にここに鬼喰いがいるようだな。」
「ああ、しかも召喚主はまだ妖気もオーラも制御できない雑魚だな。」
「これはありがたい。捕獲が楽になる。」
「後はJとアイツを引き剥がしたいところだが………」
「あれを使うとするか……………。」
「おいおい、あんな貴重なものをもう使ってしまうのかよ。」
「これは絶対に成功させなきゃいけない仕事なんだ。出し惜しみはしねぇよ。」
「まあ、それもそうか……。機を見て、作戦を開始するとするか。」
章正のすぐそこまで、魔の手は伸びているのだが、彼は気づく素振りすら見せなかった。




