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妖気が陽気な妖鬼だYo!!!!  作者: nira_kana kingdom
2/5

2話 決別

なろう、使い方ムズいんご。慣れないンゴ。

「オイッ!!テメェ……、どういう了見で俺を召喚しやがったんだ、ああ?ナメてんのか、ゴラァ!!!」


「ひぃぃぃぃ……すみません、すみません。」


クソッ、何てこった。


俺はひとまず、妖鬼召喚のそれ自体には、成功したみたいだ。


しかし、俺が召喚したのは、俺がもっとも苦手なタイプの陽キャだった。


しかも、オラオラ系、この人種好きになれないんだよなぁ……………。


第一、あまりいい思い出がない。


クソッ、早くこの地獄から抜け出したい。俺はそういう思いが物凄い勢いで募っていくのを感じた。


「黙ってないで、何とか言えっつーの、これだから人間はつまらん、劣等種の雑魚が。」


「はいっ、あっ、あの……そ、そっ、その」


「何て言ってンのか全然聞こえねーな!!声が小せぇんだよ、全く。こんな奴が主なんて幸先良くねぇな」


オイオイ、何なんだマジでコイツ…………。


さっきから、俺が下手に出てるのをいいことに悪口ばっか言いやがって、クソッ。


どーでもいいけど俺クソッって言う回数多いな、後で数えてみるか。


とにかく、俺はコイツのことは気に入らねぇ。


何とか理由を付けて、契約を無効にできないだろうか。


ああ、契約というのはさっき妖鬼を召喚した時、俺と妖鬼の魂に繋がりができたことをいう。


そのおかげで、俺は妖鬼からエネルギーを受け取れるし、妖鬼はこちら側の世界に存在するために、俺のエネルギーを感知し、同調することができる。


妖鬼と俺の住んでる世界では、そもそもの次元?とかが違うらしいから、妖鬼を普通に召喚してしまったら、妖鬼はこちらの世界のエネルギーに同調できず、消滅してしまう。


人が深海や宇宙空間に放り出されたら死んでまうのと一緒。


だから、妖鬼をこちらの世界に呼び出す為には互いのエネルギーを共有するために、契約しなければならない。


その契約をどうやってするかというと、事前に術式を組んでおく必要がある。


そのために俺は家であの紙に図形やら、漢字やらを書いていたのだ。


しかし、それだけではまだ不十分。


俺が最後に紙に垂らした液体が最も重要なものとなる。


妖鬼召喚サイトを見つけた時に、召喚に必要な謎の液体の販売サイトのURLが貼ってあったので、そこから購入したものだ。


中身はマジで何かわからん。


え?何かわからない物を不用意に買うなって??


フッフッフ。


君達、成功というものはリスクの先にあるものなんだよ。


これ先輩からのアドバイスね。


フッフッフ、フッフッフフフッフッフ、ゲホッ、ゲホッ。


俺と妖鬼が中々馴染めずにいると、後ろのドアから眼鏡女子が入ってきた。


「おやおや、あんたは何だか珍しい妖鬼を召喚したみたいだねぇ。」


ウォーーーッ、ナイスタイミング!!うっせぇわちゃん。


あ、これ勝手につけたあだ名ね。


俺は一目散に眼鏡女子に駆け寄り妖鬼に聞こえないように、ヒソヒソ話をした。


「何だい急に……」


「そのぉ……、言いづらいんですけど、あの妖鬼気に入らないんでやっぱり、契約はなしにしてもらぇませんかねぇ……。何か性格的に合わないというかぁ………。」


「残念だけど、1度召喚した妖鬼は死ぬまで君から離れないよ。あたしも888年たくさんの人の妖鬼召喚を見てきたけど、契約を無効にできた例は1つもない。」


ゲゲッ、888年って、この人今いくつなんだよ…。


いやいや、今はそんなことより、


「そんなぁ、一生アイツと一緒なんて気が滅入りますよ。」


「もう契約してしまったもんは仕方ないよ。大体あんたにも罪があるよ。妖鬼召喚はね、あんたが思っている以上に重要な儀式だ。昔は一族の運命を決めるのにも用いられるぐらい重宝されていたもんだ。だから決して遊び半分で召喚していいものじゃあないんだよ。」


「そっ、そんなぁ……。」


その瞬間、俺は考えるのをやめた。



--------------------------------------------------------------



その日の帰り道、とぼとぼ電車に乗って帰る。


当然、妖鬼も引き寄せられるようについてくる。


全く、守護霊みたいな奴だ。


外に出た妖鬼はテンションがとても高く、目に映るもの全てに興味を示していた。


そのせいで俺は、あれは何だ、これは何だとの質問攻めにあった。


「オイ、章正。何だこの鉄の箱は。生き物でも何でもないのに動いてやがるぜ。一体どーなってんだ?」


「ああ、これは電車と言いまして、電気の力で走ってるんです。」


「電気?何だそれは?聞いたことねぇ物だ。少なくとも、俺らの世界にはなかったな。」


「へぇ~、そうなんですか…………。」


ヤッベェ…………………。


陰キャ過ぎて会話が続かない。


俺はコミュ障なんだよ。


大体ねぇ、みんな自分と全く違う人種と今すぐ仲良くなってくださいって言われて、はい、仰せのままに!!って言う人いますかねぇ。


重たい空気が流れる中、妖鬼が口を開いた。


「何かお前と喋っても全然面白くねーな、って言われねぇか?」


今のはグサッって来た。


中々、エグいこと言ってきますねぇ。


「まあ、そうですよね。僕みたいな陰キャといても大抵の人はつまらないでしょうし………。」


俺は陰キャ中の陰キャだ。


そこは否定しない。


実際にそうだし。


けれども、やっぱり一緒にいても楽しくないとか言われると悲しい気持ちにはなる。


でも、俺は人付き合いがうまくないというか、そういうのは苦手だ。


だから、話しかけられたらしどろもどろになってしまうし、声もうまくだせない。


かと言って俺だってなりたくてこうなった訳じゃない。


俺は小学生の時、明るいとまでは言えなくても、それなりに友達もいて、外で遊ぶことの方が多かったように感じる。


当時はそれが一番楽しかったし、中学にあがっても、こんな日々が続くんだとばかり思っていた。


俺は中学生になって、陸上部に入った。


入った理由は仲良しの友達が入ったというしょーもないものだ。


しかし、だからといって疎かにしたわけじゃなくて、部活だってそれなりに取り組めたし、足も速くなり、体力がだんだんついていくのがわかり、それなりに自分に自信が持てた。


問題は6月の体育祭の時に起きた。部活対抗リレーの時、仲良しの友達と、どの部活が1番になるか予想していた。


俺はここの中学は、陸上だけでなく、野球部やサッカー部も強いとこだったので、いくら、陸上部でも1着は難しいだろうと考えた。


ところが、自分の予想に反して、陸上部は1着で帰ってきた。


俺はやっぱり、先輩方はすごいと思ったし、その中に属している俺も誇らしい気持ちでいっぱいだった。


しかし、その後俺は色々あって仲良しの友達と喧嘩してしまった。


理由は些細な事だった。


けれども、絶交の宣言までしたほど、仲は険悪になってしまった。


俺は喧嘩した時に友達に顔を殴られ、眼が腫れてしまったので、余計に怒りは募った。


俺は手を出したのは向こうだから、アイツの立場は悪くなるだろうと、勝手に思っていた。


しかし、奴はあらゆる手を使って俺を陥れようとした。


まず、俺が小学生時代に密かに好きだった人の名前をクラス中に言いふらした。


その次に、俺にテスト用紙をぐちゃぐちゃにされたとか、粗を探してはスクールカースト上位の男子クラスメイトと共有して、馬鹿にしてきたり、とにかく、徹底的に攻撃してきた。


俺もしばらく、知らん顔していたが、流石にイライラしてきたので少しだけ奴に文句を言った。


その時、奴は舌打ちをしながら去っていったが、何と奴は部活の先輩に俺のことを悪く言って、心証を悪くさせたのだ!!


それだけではない。


クラスメイトや他の学校の人にもありもしない、俺の噂を流したせいで、俺はみんなから敵視されるようになった。


いくら弁明しても、俺が一番悪いと丸め込まれた。


部活でも、先輩から、ことあるごとに嫌がらせを受けた。


そのせいで、俺は一年足らずで部活を辞めた。


クラスメイトは練習から逃げた卑怯者とは話さないと言い、俺を徹底的に無視し始めた。


また、クラスの陽キャグループから、音楽の授業で歌声を馬鹿にしてきたり、風邪で休んだら勝手にクラス委員長にされた挙げ句、体育祭や文化祭での仕事を全て押し付けられたりした。


また、いじられキャラの立ち位置にいる人にも、ストレスのはけ口として嫌がらせを受けた。


その様子を奴は遠くから、ニヤニヤとしながら眺めていた。


俺はその光景が脳内に焼き付いて離れない。


俺は中学3年間孤独に過ごし、誰一人友達ができなかった。


高校受験は必死に勉強し、奴が来れないような進学校に入学できた。


しかし、中学生活のせいで、対人恐怖症になり、友達の作り方もわからないし、人が何を考えているかわからない怖さや裏切りを恐れて、誰とも話せなかった。


高校では、その行き場のない思いをゲームに向けた。


ゲームをしてる瞬間だけ、俺は昔の自分に戻れたように感じた。


しかし、ゲーム機の電源を切ると、やっぱり、現実は切ないと思い知らされる。


そんな、想いを払拭するかのように、俺はゲームをやり続けた。


結局、高校でも俺はこんな調子なんだろうなぁと思う。


大学に行っても、社会人になっても、一人寂しく生きていくんだと思う。


普通の人が享受できる幸せを俺は手にすることはできないのだろう。


そう思うと、中学時代のことを時々思い出す。


奴を殺したいくらい憎んだり、先輩に怯えたり、同級生の侮蔑の視線が刺さったり、本当に嫌な記憶だ。


消せるものなら、消したい。


今回、召喚した妖鬼を恐れるのも、そういった過去が関係しているのかもしれない。


だから、俺は一刻も早く、コイツと契約を切りたい。


例え、どちらかが消滅することになっても…………。


次の瞬間、妖鬼が信じられないことを言った。


「そうやって、陰キャだから何にもできないって決めつけてしまうのか?」


「えっ………。」


「お前は自分ができないことばっかりだって言うのを陰キャだからって言うことにして逃げてるとしか思えねぇけどなぁ。」


「…………………」


「言いたいことも言えない、自分らしくなれない、他人に振り回される。そんな人生をお前は歩んで来たようにしか見えない。お前は一体どこを目指してるんだ。」


「………………………………………」


「ほらな、何も言わねぇ。そんなんだから、他人から舐められるし、奪われるんだよ。」


「………………………………………………………………れ」



「チッ、張り合いねーな。負け犬は負け犬らしく俯いて、陰口でも叩いてろ。そんなんで、満足するならなぁ。」


その瞬間、章正の中で何かが切れた。


「黙れ黙れ黙れええええええええええ!!!!、お前に何がわかるって言うんだ!!!」


俺は妖鬼の胸ぐらを掴んで、思いっきり投げ飛ばした。


妖鬼は、電車の中でバウンドし、人をすり抜け、遠くの優先座席にぶつかった。


電車に乗っている人全てが何事かと、章正の方を見る。


しかし、章正は怒りで周りが見えていなかった。


妖鬼はダメージをくらったのかどうかはわからないが、そんなことはどうでもいい。


「オイ、痛ってぇなぁ………。いくら、お前に召喚されたからといって今のは許せねぇなあ。お前………、一回死ぬか?」


妖鬼は物凄い形相で章正を睨みながら、ズカズカと彼に歩みよる。


しかし、それよりも早く動き章正は妖鬼の首根っこを掴み近くの座席に押し倒す。


座席に座っている人が「うわっ、」とか「キャー」とか、悲鳴を上げて彼から逃げる。


まあ、妖鬼は普通の人には見えないので、端から見れば章正が一人で喚き叫んでるヤバい奴にしか見えない。


「お前に説教される筋合いもねぇし、人格を否定される筋合いももねぇ。何が一回死ぬか?だ!!望むところだ!!お前みたいなクズ、いらねぇよ。こっちから願い下げだ。もうわかったなら、俺に話しかけてくるんじゃねぇ。」


「何だと、陰キャの癖に一丁前に口きかしてんじゃねぇよ。それに、俺はただ事実を言ってるだけだ。お前はただ現実から逃げてるだけの弱虫だっつってんだよ。」


「黙れ!!」


章正は妖鬼を突き飛ばそうとした。


「チッ、つくづく呆れた奴だ、何の為に俺がお前の攻撃2回もくらったと思ってんだ。」


「!!」


妖鬼から、物凄い量のエネルギーが発せられているのを感じた。これは流石にマズイと章正は慌てる。


「避けれなかったんじゃねぇ、お前がただかわいそうだと思っただけだ。何発か殴らせないと俺が一撃で勝負決めちまった時に興ざめするだろう?」


莫大なエネルギーが妖鬼の両手に集められる。


「やっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉ、!!!」


「今さら遅い!!」


妖鬼は両手にメリケンサックのようなものを生成し、思いっきり章正の腹に右ストレートを放った。


章正は思いっきりぶっ飛び天井やクロスシートの座席に体をぶつけながら、後方まで転がっていった。


幸い、満員電車というわけではなかったので、巻き込まれたケガ人はいなかった。


章正は白目を剥いて、気絶してしまった。


一部始終を見ていた人は何が起きたのかさっぱりわからなかったが、章正が血を流して気絶しているのを見て、流石にヤバいと思ったのか、何人か救護しようとしていた。


「チッ、無駄に力を使いすぎたか……。」


妖鬼はピクリと動かない章正を睨みながら、呟く。


すると、とある人物が人混みの中からコツコツと歩き近づいて来た。


「確かに契約を切るには人と妖鬼の両方が死ぬしかない。ただ、何事にも例外はあるものだね。お前はイレギュラーな妖鬼だよ、本当に。その子は死んでも、お前は生き残れるんだからねぇ。」


そこに現れたのは召喚の儀式の見届け人の眼鏡女子だ。


傍らに何か青白い大きめの亀の妖鬼を連れている。


章正の妖鬼はじっと彼女を睨む。


「テメェか、邪魔するなら殺すぜ。そこの弱虫と一緒になぁ…。」


章正の妖鬼は好戦的な笑みを浮かべながらエネルギーを体に纏う。


「ふふっ。若いっていいねぇ。威勢があって。やってみな、あたしもだてに長く生きてないからね。強いよ。」


眼鏡女子の亀もみるみる大きくなり、迫力が増していく。


両者はその場に立ちながら互いの好機を伺っていた。


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