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ここからは追撃の時間です

チュチュが衛兵に拘束され、「これは違います!」と泣きながら弁明しているが構わず地下牢に収容するよう申し付ける。

そのタイミングでアマンダが、部屋に入ってくる。


「これは…一体何事でしょうか?」


呼んでからだいぶ時間が経っているが、相当私のことを舐めているみたいね?

普通呼ばれているのに遅くなってしまったら、申し訳ありませんの一言くらいあるでしょ?


相変わらず無表情に近い顔をしているが、目は驚いたようなそんな目をしている。

もともとなのか、それとも私の前でそう取り繕ってるだけか……


「このメイドが女王様のお部屋に不審物をいくつも所持していたので今から衛兵に引き渡すところです。」


私の代わりにユイがアマンダに対して返答した。


「なんですって?不審物…それがどのような物か教えていただいいてもいいですか?」


「アマンダァ…」


チュチュがアマンダを救世主とばかりに潤んだ瞳で見つめる。


「私の呼び出しに対して堂々と遅く来るようなあなたみたいなメイドに教えてあげる義務なんてないけど…いいわ、教えてあげる。針よ。」


「針?そんなもの仕事中に拾うことも「21本も?」」


アマンダの言葉に被せるように言い放つ。

さすがにアマンダもそれには口をつぐんだ。


「仕事中に21本も針を拾ってポケットに入れたまま?危ないと思わない?しかもそれを女王である私の部屋にそんなものを持ち込むかしら?それは王家の者を危険に晒すという行為に他ならない。不敬者でしょう?」


「で、でも…うっかりとか…」


「王族の世話をしてる身でありながらうっかりですか?それが許されるとでも?王城勤めのメイドなのに?話にもなりませんね」


同じメイドであるユイが冷めた目で、アマンダを見る。


「まぁ、そういう事だから…これ以上彼女を庇うのであれば…あなたも彼女と同じで私に悪意を持っているとと見なすわよ。何か異論はあるかしら?」


「……っ、わかり、ました」


アマンダは憎々しげに言葉を絞り出した。

この状況でチュチュを解放させるのは難しいと思ったからだろう。


「アマンダっ!ねぇ、助けてよ!ねぇってば!!」


チュチュはバタバタ暴れ、アマンダに助けを求めるが衛兵がチュチュを離すはずはなく、アマンダはチュチュから目を逸らした。


「いやぁぁぁぁぁ〜〜っ!!」


地下牢に連れていかれたチュチュの泣き叫ぶ声はしばらく廊下に響いていたが、やがて聞こえなくなった。


私はアマンダにお昼の準備をするように命令した。


「私お腹が空いたわ、昼食をもってきてちょーだい。熱々が食べたいの。ちんたら運んできたらタダじゃおかないわ。」


「………かしこまりました」


アマンダは歯を食いしばり、グリムヒルデを睨みつける。

だがグリムヒルデは素知らぬ顔でスルーすると、アマンダを急かした。


「早く行きなさい」


「はい、失礼致します」


そう言うとアマンダは扉をバタンっ!と強い力で閉めて出ていった。


「あらあら…行儀がなっていないわねぇ?」


しばらくするとアマンダが食事を持って部屋に入ってきた。


「失礼致します、昼食をお持ちしました」


そう言うとアマンダはお盆をコトリと置いた。

いつもならドンっと置くのが常であったのに……チュチュというメイドを地下牢に入れたのが効いたのだろうか。


でももう遅い。許してあげる時間は過ぎたのだ。


「あら、ありがとう…」


『スープに麻痺薬少々、サラダのドレッシングに睡眠薬、パンにつけるジャムに堕胎薬、水に腹下しの薬が仕込まれているな』


鏡がすかさず念話で私に盛られている薬を教えてくれる。

なんともまぁ、薬のオンパレード。

全部の品に薬を入れると前回よりグレードアップした徹底ぶり。


しかも堕胎薬を盛るだなんて!子供ができない体になったらどうしてくれよう?まぁ…娘と近親相姦してる王様との間に子を作る気なんてないが…


グリムヒルデは初めにパンにたっぷりとジャムを塗るとニッコリとアマンダに向かって微笑んだ。

お前が食ってみろという怒りを込めて。


「ねぇ、アマンダ…私最近専属メイドが2人できたでしょう?いきなりのことだったから他のメイドが反感を抱いたみたいで、私のメイドがいじめられているのよ」


「は、はぁ…そうですか」


アマンダはすまし顔でだからなんだという風に返事をする。


「だからね、私の身の回りの世話をしていたメイドを1人専属にすればこの反感がなくなるのではと思って……あなたを毒味係として専属に指名するわ」


グリムヒルデがニッコリと笑うのと反対に、アマンダの顔はサーっと青くなる。


「私、辺境伯の娘じゃない?立場上命を狙われる機会が多くて…今までいなかったのがおかしいくらいだわ。そうでしょう?ねぇ…こんな名誉…断らないわよね?」


「あ、いや、その…えっと…」


アマンダはなんとか言葉を紡ごうとするが言い訳が思いつかないみたいであった。


どれを味見しても全部薬が入ってると知ってるんだものね?そりゃあ嫌よね?

でも、あなたが悪いと思わない?


「ユイ、アマンダを椅子に押さえつけて」


「御意」


ユイは短く返事をすると、必要最低限の動作でアマンダを椅子に座らせると拘束した。

さすが鏡が選んだだけある、ユイがいなければこんなスムーズに仕返しなんて出来ていないだろう。


「な、なにをなさるんですか!」


いつもは無表情に近いアマンダも、この時ばかりは顔が引きつっている。

必死になって拘束から逃れようとするが、ビクともしない。


「そんな怖がらないで?あなた…ジヴァのベットを水浸しにしたみたいじゃない?それほど専属メイドになりたかったなんて私知らなかったのよ?勤務態度はあんまよくないし、あなたにできる仕事ってそれくらいじゃない?ふふふっ…遠慮しないで?」


そう言ってアマンダの口を開けさせる。

目の前に堕胎薬の入ったジャムがたっぷり塗られたパンが差し出されたアマンダは涙目だ。


「どうしたの?おいしそうなパンじゃない?そんな顔したらシェフが可哀想だわ。」


アマンダは唇を噛み、フルフルと頭を振る。

グリムヒルデは呼び鈴を鳴らすとメイドを呼びつける。

するとものの数分で眉毛が印象的なオレンジ髪のメイドが来た。


「お呼びでしょうか、女王様」


『彼女の名前はペコ・レンジェスト。子爵令嬢だな、公平中立の立場にいる家柄だ。』


鏡がそっとメイドについての情報を教えてくれる。


「えぇ、ペコ。悪いのだけれど私の料理を作ったシェフを呼んできてくれるかしら?夜食の仕込みをしているかもしれないけど…どうしてもお話したいわ」


ペコは拘束されているアマンダをチラッと見ると、かしこまりましたと下がった。


しばらくするとコック帽をかぶった大柄で強面の男が入ってきた。


「私が女王様の料理を作ったんですが…なにか不手際でもございましたでしょうか?」


そういうとコックは被っていた帽子を外し、グリムヒルデに一礼した。

見た目は怖いが礼儀正しいさを感じられる。


「実はね、私…毒味役をつけようと思っているの。ご飯を食べてから体調が悪くなったりすることがあって…私、娘の白雪姫と会ってもないのに虐めたなどという噂が出回っているから…私に悪意を持った者が一服盛っているのでは?と考えてね…」


そういうとコックの目の前に料理を持っていく。


「あなたのことを信頼してないわけじゃないの…でも私に悪意を持った者がいるというのも事実。あなたの身の潔白を証明するためにも1口食べてくれるかしら?」


シェフは少しムッとした表情をした。

自分が料理に毒を盛っているとあらぬ疑いをかけられているのなら、怒って当然だろう。

シェフは躊躇することなくスープに飲もうと口を開けた。

その瞬間、私はシェフを止めた。


「そのスープを飲んではダメよ!」


シェフの動きが止まる。シェフの顔は不機嫌そのものだ。

飲めと言ったり、飲むなと言ったり、こいつは一体どういうつもりだと。


私はシェフもアマンダと結託してやっているのか疑った。

でもこのシェフは躊躇することなく、麻痺薬の入ったスープを飲もうとした。

それがシェフが潔白であるという1番の証拠だろう。


「もう大丈夫よ、ありがとう。あなたは真っ当に職務を果たしてくれているということがわかったわ。この食事には麻痺薬、睡眠薬、堕胎薬、腹下しの薬が入れられているわ。」


グリムヒルデはそう言うとアマンダを見る。

アマンダはなんで知っているの?という風に目を見開いた。

そして顔から血の気がサーっとなくなっていく。


「気づかないとでも思ったの?ねぇ、アマンダ?」


「あ、……あぁ、あ……」


アマンダは言葉にならないようで、絶望のような表情を浮かべる。

王族に対して薬を盛るというのは大罪だ。

王家に対する反逆罪と捉えられても文句は言えない。

いくらアマンダが貴族であっても、お金があったとしても罰を免れない。


「でも、私の思いすごしかもしれなかった。だからあなたに食べてといったのに…あなたは食べることを嫌がった。何故か?薬が盛られていると知っていたから。料理に薬が盛られているとわかる者は薬を盛った張本人しかいない、そうでしょう?証拠もあるわよ、ユイ」


「はい、女王様。アマンダは女王様に食事の準備を命じられ厨房に行くとシェフから料理を受け取り、物置に寄り道をし、粉を入れると何事もないように運んできまそた。アマンダが女王様の食事になにか入れるところを見ました」


「報告ありがとう、ユイ」


そうアマンダが食事に薬を盛るのを見越して、ユイにアマンダの監視をさせていたのだ。


事の顛末を知ったシェフは顔を真っ赤にしてアマンダに掴みかかった。


「…よくも!よくもやってくれたな!俺の料理をそんなことのために!ふざけるなっ!許さないからな!」


シェフは自分の仕事にプライドをもっていたのだろう。

なのに自分の作った料理に毒を盛られたのだ、怒って当然だろう。

アマンダは歯をカチカチと鳴らして震えている。


「衛兵!衛兵はおらぬか!このメイドは女王である私に毒を盛った疑いがある。誰に命令されてやったのか尋問せよ!」


グリムヒルデの声を聞きつけた衛兵がアマンダを捕らえる。

アマンダは地下牢へと連れていかれたのであった。

これからアマンダには尋問が待っているだろう、だが可哀想などとは思わない。


身から出た錆であろう。

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