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反撃の準備

「鏡よ、鏡…」


鏡に白髪の女性がうっとりと語りかける。

それはさながら1枚の絵画のようであった。


『はい、グリムヒルデ様』


部屋に白髪の女性しかいないはずなのに、どこからか女性以外の声が聞こえる___


まるで鏡と話してるかのように、白髪の女性…女王、グリムヒルデは言葉を紡ぐ。


「この城の不届き者を炙り出して………」



むかーしむかし、って言っても他の人から見て昔で、自分が語るにはつい最近という言葉があうが、メイドに毒を盛られたり、ベットに針を仕込まれたりして虐められている女王がいました。


その女王はある日、城の中で心優しいメイドを見つけ、専属メイドとして招きました。


だが周りのメイドはそれを面白く思わず、そのメイドを虐めます。


その事を知った女王は激怒し、鏡の力を使い復讐をしましたとさ……


まぁ、ここに出てくる女王っていうのはお察しの通り私ですよ、はい。


いや、鏡に話を聞いてみたら出るわ出るわ、メイド達の不祥事。


女王の生活費の横領、宝石類の窃盗、腹下しの薬などを盛る、女王に対してのありもしない噂での精神攻撃、ベットに針を仕込む、身支度の際髪の毛をワザと抜くなどみみっちい嫌がらせ。


特に白雪姫の側についているメイド達からの嫌がらせがえげつない。

横領した分は白雪姫の美容代だの、宝石代、ドレス代に消えている。


そしてこの事を白雪姫は知っているらしい。

マジか!?


生活費の横領はダメでしょ!しかも王族が!

足りないなら王様に強請ればいいじゃん!

白雪姫を溺愛してる王様なら常識的な範囲であれば許してくれるでしょう?


宝石の窃盗に関しては、そこまで実害はないけど…曲がりなりにも王族の物を盗むというのは…というか盗みの時点でアウト。犯罪だ。


メイドというのは信頼が大事だ。

なぜなら自分の大事な家を預け、まかせる存在なのだから。

そんな盗みを働くメイドはどんな理由があっても、極刑は免れない。

最悪奴隷落ちもある。


腹下しの毒を盛るなどに関しては、問答無用で鞭叩きをその場でされてもいいレベル。

なんなら毒を所持してる時点で捕まえられろ!


ベットに針を仕込むのも犯罪です!

仕込んでる時点で犯罪じゃん!でもこれはいくらでも言い訳ができてしまうからなんとも言えない。


みみっちい嫌がらせに関しては、おおらかな心で受け流さないとこっちが器量が狭いと言われかねない。


初めにみみっちい嫌がらせをしていたメイド達から呼び出そうか。


「鏡よ、鏡…例の嫌がらせに加担してない図々しそうなメイドは見つかった?」


『あぁ、嫌がらせに加担してないメイドが少なさ過ぎてそっちは簡単に見つかったぞ』


ということは嫌がらせに加担してるメイドはたくさんいるということね…

嫌だわぁぁぁ、めっちゃ嫌われてるじゃん!

味方少なっ!?

いや、文句は言わない!少数精鋭なんで!

味方が2人もいるもん!


「その子の名前は?」


『ユイ・カルロシスという者だ。少々この国と違う血が混じっておるな。いつもメイド達に除け者にされておるが、メイドを務めて3年。無口で愛想はないが仕事はきっちりとする。この者は暗殺を生業としていた蛇の子孫じゃな。蛇がつけるとされているタリスマンを首につけておる。余程のことがない限りは動じぬだろう』


おい?物騒な単語聞こえて来たけど?

暗殺?蛇?なにそれ?というかよく王城のメイドなんかしてるね!?


『蛇というのは昔、王族をも殺した凄腕の暗殺集団の名前だ。狙った獲物は決して逃がさず、時間をかけてゆっくり絞め殺すように囲い飲み込んでゆく様から恐れられていた。』


「いやいやいやいや、ヤバいじゃん!殺されちゃうじゃん!なんでいるの!?」


『落ち着け、子孫は子孫でもとっくにその集団はなくなっている。そのユイ・カルロシスという者は生き残りの子孫というだけだ。反逆などの意思は持っておらぬ。』


いや、落ち着けるか!?


「なんで反逆の意思がないとわかるの!?隙を伺ってるだけかもしれないじゃん!」


『殺すつもりなら1番殺しやすそうな白雪姫を殺しているだろう。でも王はおろか白雪姫も生きておる。それが1番の証拠だろう。』


「いや、でも!!」『見る目に関しては自信がある!その者が適任であろう。』


尚も言い募ろうとするが、鏡によって遮られる。

鏡は意見を曲げないだろう…私はため息を1つ吐くと部屋を通りかかったメイドを捕まえ、ユイ・カルロシスを連れてくるようにお願いした。


5分くらい経った頃、廊下の方からダダダダッと物凄い足音が聞こえてくる。


『来たようだぞ…』


鏡がポツリと呟く。


少し間が空いて、トントンとドアがノックされる。


「ユイ・カルロシスでございます。女王様がお呼びと聞き馳せ参じました。失礼してもよろしいでしょうか?」


「ええ、入ってちょうだい」


「失礼致します」


扉が開かれ、ユイ・カルロシスが入ってくる。

彼女はどこかエキゾチックな風貌の少女であった。


真っ黒な髪、褐色の肌、黄色の瞳、スラリと伸びたしなやかな手足。

まるでモデルさんのような、誰もが憧れるスタイルであった。

鏡に聞いていた通り、無表情であったが他のメイド達のような嫌悪などをユイからは感じなかった。


「忙しいのに呼びつけてしまってごめんなさい。座ってちょうだい」


ユイに椅子を勧める。だがユイは座ろうとしない。


「申し訳ございません、仕事中ですので」


「同じ目線じゃないと落ち着いて話せないわ。お願いよ、座ってちょうだい。」


そういうとユイはしばらく黙り、わかりましたと席ついた。

どう切り出そうかと悩んだが、他のたわいも無い話題など浮かぶはずも無く、本題を切り出す。


「今日、あなたを呼びつけたのは他でもない、あなたを専属メイドとして引き抜きたいからなの。」


そう言うとユイは目を見開いた。


無表情であることに変わりはないが、注意してみればわかる範囲だ。


「ごめんなさい、いきなりそんなことを言われて困るでしょうけど…」


私はしゅんと下に俯くと、ユイは慌てたように言う。


「い、いえ、そんなことは!凄く光栄なことです!でも何故私なのだろうかとは思っています…私は平民同然のメイドですし、他に私より適任な人はたくさんいますから」


「私…他のメイドからいじめられてるの。でも私、メイドにいじめられる理由とかわからなくて……味方が欲しいのよ。で、いじめに加担してないあなたを引き入れたいと思ったの。そういう理由じゃダメ?」


いじめられているという言葉にユイはハッとした。


「まさか!女王様をいじめるなんてそんなことがまかり通る訳ありません!女王様は王家に名を連ねる方、すなわち王家を貶める行為をメイドである者が…」


「ぬるま湯のお風呂…風邪をひくんじゃないかってくらい寒かったわ。ベットに針を仕込まれて、ソファで眠る時もあった。ご飯はいつも冷めた物を出されたわ。飲み物に腹下しの薬を盛られた。それでもこれはいじめじゃないと言える?」


ユイは黙り込んだ。

あまりのいじめの内容に言葉が出ない。


「いじめの標的が専属メイドになったわ。私がいじめられるのは別にいい。私が我慢すればいいだけだから…でも、あろうことか私の心許せる味方にまで、あの子たちは手を出したの!とても許すなんて出来ないわ!」


私はユイの手を握る。


「お願いよ、ユイ。私に力を貸してちょうだい。」


ユイは私の手を振り払わなかった。

いや、振り払えなかったのかもしれない。

私は女王で彼女はメイド、手を振り払うなんて不敬にあたるからだ。


「承知しました…私に務まるか分かりませんが専属メイドの件、お受け致します。」


ユイは私の目を見て、頷いた。


「ありがとう…ありがとうユイ!」


これで味方を手に入れた。さぁ復讐の手筈も整ったし、はじめましょうか。

断罪を_____

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