表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/34

極悪非道の女王様は

メイド視点に移ります。

次回から戻ります!

【ジヴァ視点】


私は男爵家から来たジヴァ・プリムと申します。

王城でメイドをしております。


メイドと一重に言っても役職、階級というものが存在します。

洗濯を主にこなす洗濯メイド。

洗濯メイドは冬も生地を痛めてしまわぬように水で行い、1日の洗濯物の数は途方もなくメイド仕事の中で1番過酷な仕事です。


部屋や廊下を掃除する掃除メイド。

王城は広く、娘に花嫁修業として仕事に行かせるため、子爵や侯爵の令嬢がこの仕事に就く。

あわよくば王家や、公爵などの大きな権力を持つ人にお近付きになれならラッキーという打算も含まれる。


王家の方の下につき、身の回りの世話をする専属メイド。

給料が洗濯メイドや掃除メイドより高いのはもちろん、一人部屋が持てるなどの高待遇。

また権限はメイド長と同じくらいの力を持つ。


掃除メイドが目指すのが専属メイドである。

専属メイドになるには公爵家など位の高い人に推薦してもらう。

専属メイド3人、またはメイド長から推薦状をもらう。

王族に直々に任命されるなど…狭き門である。


私の家柄は男爵であるため、掃除メイドの中でも下っ端。

同じ掃除メイドの方に雑用をよく押し付けられる。


廊下を掃除してるとスカートが濡れているアマンダさんとその手を引いているチュチュさんと遭遇する。


「あ、ジヴァ〜。アマンダが水をグリムヒルデ様にかけられてぇ、お風呂に行くから代わりに洗面器持って行ってくれなぁ〜い?あと朝食もよろしく〜」


「え?」


グリムヒルデ様って女王様だよね?

水をかけられたって…?

私、下っ端の掃除メイドなのに大丈夫なのかな?


「グリムヒルデ様って〜、心優しい白雪姫様を虐めてる極悪非道な人って感じだしぃ〜。あんたも気をつけなさいよぉ?じゃあ頼んだわ〜」


「え、ちょっ!そんなっ!」


チュチュさんはそう言うとそそくさと行ってしまった。


今からその極悪非道と噂のされてるグリムヒルデ様に会いに行かなきゃなのに、そんなこと言われたら怖くて行きずらいよー!


9時を知らせる王城の金が鳴る。


でも待ってるかもしれないし…お腹すいてるかもだし!

遅い方が怒られちゃうかもだし…どうせ行かなきゃだもの!


厨房からお湯をもらうと少し水を混ぜて温度を確認する。


「うん、いい感じ!グリムヒルデ様のお部屋は1番北の離れたところにあるから…急がないと冷めちゃう!」


水をこぼさないように、それでいて早足でグリムヒルデ様の部屋に向かう。


服に乱れがないかを確認し、コンコンとドアをノックする。


「グリムヒルデ様、失礼致します……」


声をかけると中から美しい凛とした声が聞こえる。


「え、えぇ…どうぞ!」


部屋に入ると白髪の美しい女性が優雅に座っていた。

私は一介の下っ端掃除メイドに過ぎないため、グリムヒルデ様を見るということはなかったがこの人がこの国の女王、グリムヒルデ様なのだと思った。


意志の強そうな瞳、スーッと通った鼻筋に、綺麗にお手入れされた肌。

そしてこの国では見かけない白髪の美しい髪。


まるで物語の中に出てくるエルフなどの人外じみた美しさを感じる。

そんな人だった。


でもチュチュさんが言うような極悪非道な白雪姫様を虐めるような人には見えない。


「洗顔用のお湯をお持ち致しました…朝食の準備も出来ております。朝食はいつも通り部屋にお運びするという形でよろしいでしょうか?」


「えぇ、ありがとう…」


…ありがとう?……お礼を言われた?

王族の方はお世話をしてもらうのは当たり前だし、位の高い階級の貴族でもわざわざ下の者にお礼は言わないと聞く。


ジロジロとグリムヒルデ様からの視線を感じる。


「あなた、見ない顔ね?新人さん?」


グリムヒルデ様が私のことを知らないのは当たり前だ。

だって私は下っ端の掃除メイドだもの。


「あ、はい!ジヴァ・プリムと申します。よろしくお願い致します!」


あ、頭を思いっきり下げちゃった!

はしたないと思われたかも…………

チラリとグリムヒルデ様の顔を盗み見る。


グリムヒルデ様の顔が真顔になっている!?

さっきまでにっこりと微笑んでいたのに!

やっぱりやらかしちゃったんだ……どうしよう?


「グリムヒルデ様、いかがしましたか?まさか…私、何か粗相を…?」


チュチュさんの「極悪非道の女王様」の発言を思い出し、体が震える。


「…え?あ、いやいやいやいや!粗相なんて!お辞儀がすごく綺麗だなぁって思って!」


お辞儀から頭を上げてグリムヒルデ様の顔を見ると、にっこりと笑っていた。


お辞儀が綺麗…?褒められた?

いつもメイド仲間に所作が田舎臭いと言われ、バカにされていたのに…からかわれてるのかな?

でもからかわれているようには見えない。


私は戸惑ってしまった。


「お辞儀が……綺麗?あ、ありがとうございます!私、田舎者だから礼儀作法とかまだ全然拙いんですけど!これからも頑張ります!」


…あ、あれ?おかしいな?なんで涙が……?


「え、えぇ…」


ほら、いきなり泣き出すから戸惑ってるわ!


「グリムヒルデ様…私、グリムヒルデ様の所に来る前、同じメイドの方に脅かされたんです。グリムヒルデ様は白雪姫様を虐めるような陰険な方だと。少し粗相するだけでも顔を鬼のようにするって……でも見て思いました。グリムヒルデ様は挙動不審な田舎者の私を褒めてくださいました。単純かもしれません、でも私はグリムヒルデ様の味方です。」


あぁぁぁぁぁ〜〜!バカバカバカバカ!

言うつもりなかったことをペラペラとぉぉぉ〜!!

口を今すぐペチペチ叩いてなかったことにしたいけど後の祭り。


今度こそクビになる!お仕置される!


グリムヒルデ様が私をバッと見ると手をガシッと掴まれる。

「ひぇっ!?」という悲鳴をメイドのプライドで飲み込む。


「ねぇ、ジヴァさん…あなた…私の専属メイドにならない?」


「えぇっ!?」


私が専属メイド!?女王様の?

下っ端の男爵令嬢の掃除メイドが?これ夢?

ほっぺた抓ってみよう……痛い。


「というか命令よ、ジヴァ・プリム。あなた、私の専属メイドになりなさい!」


お母様…お父様…私、帰るのはしばらく後になりそうです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ