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魔法の鏡

どうも皆様こんにちは、白雪姫の物語に出てくる悪役ことクイーン・グリムヒルデと申します。

名前を初めて知った?そうでしょうとも…白雪姫ではまともに名前なんて出てこなかったからね!

他のヴィランはマレフィセントとかさ!クルエラとかちゃんと名前あるのに!不公平だ!ブーブー!


まぁ、そんなこんなで前世の記憶という物を思い出しました。……え?はしょりすぎだって?

じゃあ言いますよ!言ってやりますとも!

国民の見本であるべき国王と義理の娘がベットの上で運動会をしてる所をバッチリ見ちゃって、その弾みで前世の日本という所にいた記憶を思い出しました!


そして現在…死亡フラグ(白雪姫)とひとつ屋根の下

心が休まらない!まぁ休まらない!

そしてなんでメイドから冷たい目で見られるかわかったよ!

前妻の人柄が良過ぎて、前妻さんの信者が白雪姫のために頑張ってるって感じです。


何言ってるかよくわからない?

もうちょっと掻い摘んで話すと、前妻さんは顔よし性格よし家柄よしの高スペックで王城に勤める人達の憧れの的であった。

そんな前妻さんが亡くなり、娘である白雪姫が王城に取り残される。

そしてそこに後妻である私が登場!


このままでは白雪姫を女王の座を利用して堕落させるのでは?

よし、そんなことがないように私達で監視をしよう!ついでに牽制もしよう!

という感じみたい。


生家である伯爵家は辺境の地を守っているため、手紙を出しても届くのは3ヶ月後。

その伯爵家もめったに王城に来ないことから、社交界では野蛮人として嘲笑されている始末。

曲がりなりにも伯爵なんだけどねぇ!?


つまり今の私に味方はいない!

孤立無援状態なのだ。

そりゃあ、グリムヒルデさんも国王に依存するわ。


なに他人事みたいな言い方してるんだ?って、ぶっちゃけ他人事だもーん!

記憶取り戻す前は憎い!殺してやるぅ!とか思ったりもしたけど、前世の私の方が脳を占めているのでなんとも思わない。


言うなれば記憶という書庫からグリムヒルデという題名の小説を読んで共感するとかそんな感じ。

それに実の娘と〇〇〇(規約によりピー音必須)をしてる所なんて見たら100年の恋も醒めるわ。


で、私はこれからどうしよう。

このまま王城に留まるにしても、またいつあんな場面に遭遇するかも分からないし。

メイドさんからの対応が精神的にくる。

話し相手もおらず、死亡フラグに怯える日々。


いっそのこと出ていっちゃう?王城。

でも私が王城を出て働くとして、追っ手がつかないとは限らない。

働き先に迷惑をかけるわけにもいなかいし。


というか働けるの私!?

力仕事した記憶とかないけど!?


城を出てどこかで住み込みで働けるなんて都合のいいことある訳ないし!


あぁぁぁぁ〜!八方塞がりじゃぁぁぁん!

何かないの?例えばラスボスとか秘密兵器隠し持ってるもんでしょ?

子分とかさぁぁ〜!!


あ、そういえば夢の中でグリムヒルデのおばあちゃんが困ったことがあったら魔法の鏡を使えって言ってなかった?


グリムヒルデは断固として使おうとしなかったけど……

えぇーい!ここで使わないでいつ使う!

困ってるのは本当だし!確かグリムヒルデの記憶だと……部屋の扉から1番遠いクローゼットの中に……おぉっ!

これはすごい!ウォークインクローゼットですよ!

中で歩ける!広い!!


大きな鏡がクローゼットの奥に立てかけてあるのが見える。

鏡にかかっている紫の布をとる。


「おぉ〜……!」


なんということでしょう、立派な鏡があるではないですか!


「というかでっか!?」


想像してた鏡の大きさの倍はあるんですけど!?

魔法の鏡を見たらやりたかったことがあるんだよねぇ〜、わかる?わかる?

というか鏡で見ても分かるけど、気の強そうな美人って感じの顔だなぁ。

若干やつれてるような……


「鏡よ鏡…この世で1番美しいのはだぁれ?」


『開口一番どんな質問をしてくるのかと思ったらくだらない…それはクイーン・グリムヒルデ。あなたです!と言えば満足か?そんなしょうもない質問をこの全知全能の鏡である私に問いかけるとは…』


うおっ?鏡が喋ったぁぁーーー!!

すごいよ!すごい!本当に話したよ!

やっぱここって白雪姫の世界なんだ…うわぁ…これからどうしよう?


というかめっちゃ鏡辛辣なんですけど…

あれぇ?おかしいなぁ…童話の話だと鏡はこんな感じじゃなかったんだけど…

目の前の鏡は、声だけだが呆れたようなヤレヤレという感じが伝わってくる。


白雪姫に出てくる魔法の鏡ってもっとこう、事務的な感じだったと思うんだけど!?


「あっ、いや、ちょっと待って!これはその1度はやってみたいことと言うか、言ってみたかっただけで…聞きたかったのはもっと違うことで!」


『ふむ…?お主、変わったオーラを纏っているな?』


「あ、わかります?」


かくかくしかじかこういう訳で…と鏡にこれまでの経緯を大まかに説明する。


『ふむ…その前世の記憶を思い出すというのはいささか違うと思うぞ?前世の記憶が蘇ったというならそんな魂の色にはならないだろ。もともとあった魂に磁石のように別の魂が引き寄せられ融合したように見える』


「つまり……どういうこと?」


グリムヒルデの前世は私じゃなくて、全く関係ないってこと?


じゃあなんでグリムヒルデの記憶も前世の記憶もあるの?


『すまないが私は神ではないのでな、魂の管轄は神の領域だ。詳しいことはわからない。でもお前がグリムヒルデの体に入ったというのは何か神の意思が絡んでるということだ。』


余計に謎が増えたぁぁぁぁ。

役立たずじゃん、鏡。


『おい、なんだその顔?使えないとか思ってるだろ!』


「いえいえ〜、そんなことぉ〜」


『言っておくが私は物であるから人間より知識の面で非常に優れている!魔法で解決できる物に関しては私は無敵だ。お前が少々顔がやつれている原因もわかっているぞ!』


もしかして、この魔法の鏡って負けず嫌い?

表情とか鏡だから全く分からないけど、ムキになってる風に見える。


『お前、メイドに少量だが毒を盛られてるな。この前飲んだ薬湯には眠り薬がたらふく盛られていたみたいだな。』


え?毒とか眠り薬とか今聞こえたんですけど?

鏡の縁を掴むと揺さぶる。


「魔法の鏡その話、詳しく!」


『お、おう?わかった…か、ら!揺さぶるな!割られそうで怖い!』


「あ……ごめん。」


鏡を壁に立てかけ直すと魔法の鏡はコホンと咳払いすると、私の体調について話し出す。


『お前は今、ステータス状態異常:小だ。精神的錯乱状態。そして毒を盛られてることによって体の機能が全体的に下がっている。顔のやつれ方が毒を盛られてる者のやつれ方だ。』


うわぁぁぁぁ、状態異常って!?RPG的な要素出てきたぁぁぁ!!

精神的錯乱状態…は仕方なく無い?いきなり前世の記憶思い出したと思ったら、魂の融合だのなんだの。


というか顔少しやつれてるなぁとは思ってたけど、毒盛られてたの!?

いつ?いつから?というかメイドに?


わかってたけどめっちゃ嫌われてるじゃーん!

どうすればいいの?殺されるの?今世こそは長生きしてやるっていう目標を掲げたばかりなのに……


「死ぬ?毒盛られてるって言ってるけど私死ぬの?」


ヤバい涙が出そう……

魂が融合したんだかなんだかわからないけどつまりはグリムヒルデと一心同体という訳で…2回目の人生ハードモードすぎるでしょ!?


私が、グリムヒルデが何をしたよ?

まだ何もしてないじゃん!これからも何もしないよ!


『お、おい!泣くでない!?私が泣かせたみたいじゃないか!』


魔法の鏡がワタワタと焦ったような声を出す。


「別に……泣いてないわよ!」


泣いてるなんて認めてあげない!

目標は長生き!細く長く生きるんだ!


『解毒の仕方を教えてやるから泣きやめ、私は魔法の鏡だ。質問にはなんでも答える。神の領域に達する質問でなければな。質問の仕方は知ってるだろう?』


「………………鏡よ、鏡。私を侵す毒の解毒の仕方を教えて」


『クイーン・グリムヒルデ。その毒の解毒方法はミントを摂取することだ。寝る前にミントティーを飲むようにしなさい。さすれば1週間で顔色が元に戻るであろう』


毒とは無縁の世界で生まれ生きてきた記憶と、呆気なく人が死ぬ世界で生まれ生きてきたグリムヒルデの記憶が混ざりぐちゃぐちゃになる。


でも私はその日、無機物である魔法の鏡という存在に救われた。


『安心するがいい、天下の魔法の鏡である私がいる限り、お前を殺せる者おろか傷つけ者も跳ね除けてやろう。』


こうして魔法の鏡との二人三脚の日々が始まった。

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