パニック
男side
俺が外に出ると、優たちはこの場から離れようとしていた。
「さっきの銃声で、奴らが集まってきたのよ!」
俺にばったり遭遇した優は会うなりそう言ってきた。
いつもならいい運動になるが、今回ばかりは荷物が多い。
俺は優たちと一緒にその場を離れることにした。
「はぁ......はぁ......空腹だわ。」
感染者の声が聞こえなくなっても俺たちは走り続けていた。
そして住宅街を抜ける間際、俺の意識は暗闇に消えていった。
真奈美side
もう少しで感染者たちから逃げられると思ったときに、日本刀の男が倒れてしまった。
うちはそいつに肩を貸して、優たちが入っていった家に向かった。
とりあえずみんなでリビングに入り、男はソファに寝かせた。
「まだ起きそうにないわね。」
気絶している男の額に手を置いてみると、普通に暖かかった。
「ハンガーノック、か」
大毅さんがキッチンを漁りながら、話し始めた。
「ハンガーノック?」
聞いたこともないその言葉に首をかしげていると、大毅さんが続けて口を開いた。
「運動をし続けてるのに栄養を取らないとそうなる。何かのませたり食わせないとそいつは死ぬぞ。」
そういって大毅さんは電気が通っていない冷蔵庫から水を取り出すと、おもむろに男の口に突っ込んだ。
「ちょっとお父様、さすがにっ......」
優も男と一緒にいた女の子も、不安そうな顔で男を見ていた。
そして水がすべてなくなり、彼の口からあふれてきたころ、彼のむせる声が聞こえてきてうちは安心した。
「死ぬかと思ったぜ。」
ソファから起き上がり、口を拭った後に一言、そう言った。
そしてそのままキッチンに向かい、食料を漁り始めた。
「何もないぞ、俺が見た。」
真顔でキッチンを漁るのをやめて、再び男はソファに座った。
「このままだとこの子も倒れるな、どうにかしないと」
うちもバッグをもう一回漁ってみるけど、もちろん食料なんて入ってるわけなかった。
どうするか悩んでいると、男の人が立ち上がって玄関に向かった。
「おい、そいつを頼むぞ。」
背中の日本刀を抜き、玄関のドアを開けた。
「待って!」
優のそんな声もむなしく、ドアは閉まってしまった。
「優おねぇちゃん、真奈美おねぇちゃん、大丈夫だよ。あの人は強いから!」
優とうちに信頼の眼差しを向ける少女を見て、うちらは落ち着いて彼を待つことにした。
男side
日本刀を抜き、玄関から外に出た俺は、百貨店でもないか探し始めた。
歩き始めて十分ほど、俺は感染者がとあるところに集まっているのに気が付いた。
「あそこは何かありそうだな。」
俺はリボルバーをリロードして、群がっている感染者の群れに一発、弾を撃ち込んだ
その音を聞きつけた感染者が俺に向かって走り出してきた。
「いい運動になるぜ、まったく。」
俺は後ろに下がりながら迫ってきたやつらどもの首を次々と斬り付けていった。
だんだんと数が減ってきたので、俺はリボルバーを抜き、奴らの頭を打ちぬく。
最後の一体を倒し、俺は奴らが群がっていた場所にだんだんと近づいていく。
「見つけた。」
俺はついに食料と人がいそうな、八百屋を見つけた。