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足止め

男side

 

 「ねぇ、どこに向かうか決めているの?」


 避難所を後にしてすぐ、優は俺に問いかけてきた。

無論、この後の行く先なんて決まっているわけもない。


 「さぁな。とりあえず移動し続けようぜ。飯でもあればいいんだけどな。」


 そういえば俺と少女は今日の朝から何も食べていない。

空腹に強い俺でもさすがに腹を鳴らしてしまった。

少女が俺の手を引いてきたので、横目で見てみると、今にも泣きだしそうな顔をしていた。


 「どうしたんだよ、そんな顔して。」

 「お兄さん、おなかすいたよぉ......」


 少女の泣きそうな顔を見た真奈美が自分のバッグを漁り、何か探し始めた。


 「あ、あった!ほらほら、泣かないでね。」


 真奈美はバッグから板チョコを取り出し、少女に渡した。

彼女は板チョコを受け取ると頭を下げて、袋を開けた。


 「おねぇちゃん、ありがとう!」


感謝の言葉を述べてゆっくり板チョコを食べている少女の頭を撫でて、俺たちは行く先を決めないまま歩き始めた。


 「ねぇ、あんたはいいの?」


 真奈美が俺にチョコを差し出してきた。

普段なら俺は受け取らないが、何を思ったのか俺はチョコを受け取り、微笑んだ。


 「もらっておくぜ、ありがとうな。」


 そういうと真奈美は少し顔を赤くした気がしたが、俺にはどうでもよかった。



 真奈美side


 まだ、名前の知らないこいつといると調子が狂うけど、ばれないようにうちはうつむいた。

うつむく前に彼に顔を見られた気もするけど、関係ない!


 しばらく歩くと、風景は住宅街に変わっていった。

物音ひとつしない静けさと、あたりに散乱している車、紙などがこの混乱が終わっていないことを表しているようだった。


 「引っかかってるぜ~!兄貴!」


 さらに歩いて数分して、男の声がしたので振り向くと、ナイフや鉄パイプを持った若い男の人たちが10人ほど出てきた。


 「ここ、俺らの縄張りなんだけど?」


 リーダーのような、一回り大きな男が前に出て、うちたちに向かって言ってきた。

うちたちはおびえて、言葉も出せなくなっていた。

ただ、「一人」を除いて......


 次の瞬間、そのリーダーのような人は、額に血を流して倒れてしまった。


 男side


 こんな滅茶苦茶な世界になると、必ず領土を占領したがるヤンキーが出て来る。

俺はそんなクズが死ぬほど嫌いだ。


 「ここ、俺らの縄張りなんだけど?」


 これをそいつの最後の言葉にするべく、俺はリボルバーを腰から抜き、そいつの頭に向かって撃った。

力なく倒れ、地面に血を流しているところを見て、即死だったようだ。


 「な、なんだよこいつ!」


 その行動が宣戦布告とみなされたのか、残りのヤンキーどもが臨戦態勢に入った。


 「おい、真奈美ねぇちゃんに守ってもらえ。」


 俺は少女が握っていた左手を払い、真奈美のところに行ってもらうようにした。

すぐに彼女は真奈美のところに行き、真奈美は後ろに下がった。


――さて、本番か――


 「おい、逃げるなら今だぞ。」


 最後のチャンスを奴らに与えたが、ヤンキーの一人が俺に向かってナイフを突き刺そうとしたのを見て、俺は日本刀を抜き、そいつの腹を斬った。

気づけば俺の横には優がいて、俺と同じく戦う姿勢だった。


 「さて、軽くやるか。」


優side


 日本刀で彼が戦っているのを見て、私は自分の体を生かした戦い方をすることにした。

姿勢を低くして、奴らの群れに突っ込む。

それに気づいた一人が私に鉄パイプを振りかざすけど、蹴りでそれを吹き飛ばし、顔を殴ると、そいつは吹っ飛んで息絶えた。


 さらに近くにいた一人を持ち上げ、振り回して周りのやつらも巻き込む。

途中でナイフで切り付けられたのか、振り回すのをやめたころにはあたりに血が飛び散っていた。

振り回していた彼を投げ飛ばして、私は深呼吸した。


 次に二人、ナイフを持って突撃してきた彼らの攻撃をしゃがんで回避して、落ちていた二つのナイフを投げ、対処した。

そのナイフはうなじに刺さり、彼らは力なく倒れた。


 「おい、後ろ!」


 日本刀で戦っていた彼に言われて後ろを見ると、最後の一人が私の間合いに入られていた。


――攻撃を食らう――


 そう思って防御の姿勢に入った瞬間、そいつは目の前で倒れ、私は押し倒されてしまった。

横を見るとお父様が銃を構えてそいつを撃ちぬいたみたいだった。

私に覆いかぶさっているものをどけて、私は立ち上がった。


 「お父様、ありがとう。」


 服に付いた汚れを払いながら、私はお父様に笑顔を向けた。

それを見たお父様がつられて笑顔になっていた。


 男side


 俺は気づかれないようにこっそり抜け出し、そいつらのアジトらしきところを見つけた。

と言ってもさっきの集団でほとんど壊滅したらしく、人は見当たらない。


二階に上がり、ドアを上げたところで、俺は隠れていた一人の突進を食らって階段から滑り落ちた。

打ってしまった頭を押さえながら起き上がると、そいつが俺の前に立ちはだかっていた。


 「なかなかだな。」


俺は下段蹴りでそいつの膝を蹴り、転ばせた。


 「俺は生意気なガキが嫌いで、いい子が好きだ。その意味は分かるな。」


 腰から銃を抜いて、そいつに向けながら話す。


 「す、すみませんでした......!!」

 「今更遅い、お前らが集めてたものは俺たちが有効活用してやるよ。」


 土下座の姿勢になっていたそいつを蹴り飛ばし、銃を数発体に撃つと、そいつは息をしなくなった。

再び二階に上がって開いているドアから部屋を覗くと、布団が敷いてあるのみで、めぼしいものはなさそうだった。


――失敗か。――


 少しがっかりしながら、俺は優たちのところに戻ることにした。

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