脱出と出会い
優side
できる範囲で救出を試みてみたけど、すでにほとんどの人は建物の外に出て避難を済ませているようで、人は見つからなかった。
「私たちも出ましょうか。」
私たちを救ってくれた人たちはまだここに残るらしく、少しでも外に感染者を出さないようにと頑張ってくれるみたい。
「また会えるときに会おう。大丈夫だ」
ショットガンを持ってその人たちは感染者の群れに突っ込んでいった。
「私も......!」
つられて私も行こうと思ったけど、真奈美が抱き止めた。
「だめ......離れないで?」
心の底からの悲しそうな声を聞き、私はそこに行くことをやめる
お父様は荷物の確認を済ませたみたいで、バッグを持って立ち上がった
「さぁ、脱出だ。」
建物を出た私たちだけど、行く当てなんてどこにもなかった。
「どこに行きましょうか......」
みんなで悩んでいると、女の子を連れた男の人が私たちの前に来た。
「その顔じゃ、どこに行こうか悩んでるって顔だな。」
背中に日本刀、腰に大きなマグナムのようなものを仕舞っているその人が、悩んでいる私たちに声をかけてくる。
「あなたは......」
「あぁ、名前なんてくだらないからなしだ。俺は名乗らないからお前たちは好きに名乗ってくれ。」
その人は名前を名乗ろうとしなかったけど、私たちはその人に自己紹介することにした。
「念のために私たちは名乗っておくわ。私は井上優。よろしくね」
「真奈美でーす!よろしくね、お兄さん!」
「優の父親の井上大毅だ。」
「そうかい、よろしくな。めんどくさいから呼ぶときは下の名前でいいか?」
私たちは頷くと、その男の人は改まって私たちに浅くお辞儀をした。
「その女の子は......?」
私が少女とも呼べるほど、しかし少し背の高い女の子を指さして問うと、男は一瞬暗い顔をしたのち話し始めた。
「一年前から一緒にいるんだ。もう親子みたいなもんだ、母親が見つからねぇから一緒に探してるんだけどな」
そういうと少女が微笑みながら「みんなよろしくね!」と言ってくれた
私は少女と視線が合うようにしゃがみ込み、話し始めた
「こんな危ない世界なのに無事に生き残って強いわね。これからはみんなで動きましょう?
そのほうが安全だし、お母さんも見つかるかもしれないわよ」
ちらりと男の人を見たが、私の一緒に動きたいという考えに反対しているようには見えなかった。
少女は少し考えたのち、大きく頷いた。
「みんなと一緒のほうが楽しいかも!」
――ふふ、純粋な子ね――
私はその子を抱きしめ、守ることを決意した。
「おいおい、馴れ馴れしいな」
男の人にそう言われたけれど、私には関係ない
「ありがとう、優おねーちゃん......」
白いワンピースにボブヘアーのその少女が、すごく儚く、しかし何処か強く見えた....