緊急脱出と行く先
優side
第一食堂はすでに避難を始めていた。
避難している人たちの中から真奈美を探していると、後ろから声を掛けられる。
「優!よかった......」
後ろから声をかけてきたのは涙を流している真奈美だった。
私は優しく頭を撫でた後、抱きしめた。
「大丈夫よ、私はここにいるわ......」
ずっとこうしていたいけれど、状況が状況なのでそんなことも言ってられない。
持ち前の頭の回転で私はこれからどうすればいいか考えた。
「部屋に戻りましょう。必要なものをそろえて脱出よ。」
確か部屋には非常時用の水や食料、配布された洋服がある。
それがないとここを出たときに大変な目にあってしまうので、私たちは急いで部屋に戻ることにした。
第一食堂を出て、部屋の廊下にはすでに感染者が何体かうろついていた。
「待ってて......」
静かに私は感染者のもとに近づき、首をひねる。
次の感染者を壁に打ち付け、頭を砕いた。
これでとりあえず私たちは部屋に入ることができた。
「私は外で待っているから、部屋にあるものを持ってこれるだけとってきて。お父様も。」
そういうと真奈美とお父様が部屋に入る。
その間私はあたりを見ておくことにした......
大毅side
俺は優の言った通りに部屋にある水、食料や衣類をバッグに詰めていった。
持ち上げてみるとかなり重いが、俺が持てないほどではない。
「行くか......」
部屋を出る間際、窓をのぞいてみると人間に飛びつく感染者らしき影があった。
――早く出ないと手遅れになりそうだ。――
廊下に出るとかなり煙の臭いがした。
すでに真奈美と優は準備を終わらせていて、俺を待っていたようだ。
「悪い。この煙はなんだ......?」
「どこかから火が出てるみたい......私たちが倒れる前に急いで出ましょう」
俺たちは優を先頭に、避難所からの脱出を始めた。
優side
真奈美が持ってきた荷物は私が持つことにして、火災が発生しているこの建物から出ることにした。
だんだんと煙の量は増えていき、私の視界を遮ってくる。
「けほ......けほ......優......」
真奈美は明らかに弱っていて、お父様はかろうじて歩けていた。
そろそろ私も限界を迎えてきたころ、声が聞こえてきた。
「こっちだ!こっちにこい!」
私たちが見えていたのか、二人の男の人が私たちに手招きしている。
私たちは最後の力を振り絞り、煙だらけの建物から脱出することができた。
真奈美は息を整えていて、お父様はバッグを下ろし、中身の確認をしていた。
「ここはもうダメだ。あれを見ろ。」
そういって男の人たちが指さした方向には地獄が広がっていた。
第二食堂から大量の感染者が出てきて、避難し遅れた老人や子供を次々に襲っていた。
首の肉をかみちぎり、腹を裂き確実に殺している......
殺される人たちの泣き叫ぶ声が、私の耳にまで痛いほど届いてくる
私は心からの嫌悪を覚え、覚悟を決めてみんなに向けて言った。
「この先で救える人がいたら救いましょう。みんなでここを出るのよ。」
火災は勢いを増し、爆発する建物を背に、私たちは歩き始めた。