安全圏の崩壊
優side
食事も半ば、いつも通り楽しそうにみんなとご飯を食べているとき、食堂の巨大テレビから緊急速報が流れ始めた。
普段テレビの電源がつくことはないから、少し驚きながらその緊急速報の画面を見てみる
【避難所より緊急速報。現在第二食堂にて感染者による暴動を確認。鎮圧は不可能
繰り返す、鎮圧は不可能。第一食堂の避難者は急いで司令官の指示に従うこと】
「優...」
真奈美が私の服の袖を引っ張る
真奈美のほうを見ると今にも泣きだしそうな顔をしていたから、落ち着かせるためにも優しく頭をなでてあげた
「お父様、行きましょうか。」
「そうだな。」
私は真奈美を第一食堂に残したまま、お父様と第二食堂へ足を運んだ。
「優!どこに行くの!」
――彼女のヒステリックな叫びを背中で聞きながら......――
大毅side
俺たちは真奈美に内緒でいろんなことを考えていた。
まず、優の体はすでにウィルスと適応したため超人的能力を手にしている
それを利用してこの暴動を少しでも落ち着かせることを思いついた。
それは優も同じらしく、第二食堂に向かう俺たちは無言だ。
「なんとなく、こうなることはわかってたんだな」
俺は優の方を向きながらそう言った
少し考えた様子を見せた後、優が口を開く。
「なんとなく......そうね。前にもこんなことがあったじゃない。」
まるでこんな状況にも慣れてしまったかのような口調に、俺は言葉が出なくなってしまった。
――優、強くなったな――
精神的に成長した優に、俺は感動した。
優side
第二食堂に生存者はすでにいなかった。
いるのはすでにこと切れた生存者の腹を食いちぎる変わり果てた「感染者」だけ。
私は近くにいた感染者の頭を蹴飛ばし、倒した。
私は一度かまれたけれど奇跡的な生還を遂げ、今では#超人的能力__スーパーパワー__#
を手に入れた。
ほんとはこの力をほかの人に使ってあげたかったけれど、間に合わずに死んでしまった...
いろいろ考えながらあたりを見回していると、だんだん感染者が私のもとに近づいてくる。
「お父様、武器は......」
そういえば私はお父様が何を持ってきたか見ていない。
するとお父様が近くに飾ってあった日本刀を取り、構えた
「ここにあるさ、さぁ蹴散らすぞ!」
すでに大量の感染者が私たちの前に押し寄せていた。
一番近くにいた感染者を持ち上げ、大群に向けて思いっきり投げつける。
それだけでもかなりの足止めになり、感染者がよろついている間にお父様が日本刀で首に切りかかるが......
「くそ、これじゃ斬れねぇ!」
骨が固く首を断ち切ることができていなかった
いまだ刀を抜くことに必死になっているお父様に一体、感染者が近づいてきたからそいつに向けて拳を振りかざす
すると頭が砕け、感染者はその場に倒れた。
「これじゃらちが明かない。俺たちじゃ無理だ!」
刀を抜いたお父様は出口に向かって走り始める。
確かにこの人数相手には銃がないと厳しいかもしれない。
私も後に続いてその場を後にした。
――真奈美......無事でいて――
真奈美を置いていったことを、後悔しながら......