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選定者.深田直人



候補者たちが出揃ったので、次は選定者です。

深田直人は塾考していた。



今日の授業はすべて終わり、生徒たちは帰るか、各々の部活に精を出している頃だろう。


隣のデスクの吉本先生は隣接している大学のコンビニへ軽食を買いに出たようだ。その他の先生方も今はこの社会科職員室にはいない。機密事項を考えるのには持ってこいの時間だ。



少し重めにセットした前髪が鬱陶しい、と座って机に向かうたびにいつも思うが自分の顔の雰囲気を決める重要な要素なのでこれは譲れない。しかし、鬱陶しいものは鬱陶しい。そして今の季節は暑くて仕方がない。切りたい。でもそういうわけにはいかない。


目の前のパソコンの画面には4人の生徒の写真付き名簿が表示されている。




潮谷俊 : 男 : サッカー部 ミッドフィルダー : 身長 165cm


非常に顔の造形が整った美男子だ。

本人としては身長の低さを気にしてはいるが、それを抜きにしてもかなり人気のある生徒だと言える。

成績も悪くないし"頭も良い"。

同じクラスの平井加奈に好意を抱いているが、比較的周囲にはうまく隠している。

同じクラスでサッカー部の水沢翔と行動を共にしていることが多い。

人の輪に溶け込むのが早く、かなり社交的。




水沢翔 : 男 : サッカー部 フォワード : 身長 185cm


所謂モデル体型。理想的な身長と甘さと爽やかさを併せ持つこちらも美男子だ。

潮谷俊と女子の人気をきれいに二分している。

ひと月ほど前に隣のクラスの武田という女子生徒にアプローチされ交際を開始したが、水沢自身は乗り気でも本気でもないようだ。

成績は潮谷ほどは良くないがこちらも"頭は良い"。

予想では潮谷に1つ隠し事をしているがこちらもうまく隠している。

この秘密のせいなのか本人の資質なのか、人の相関図や思惑を読み取ることに長けていると言えるだろう。



姫戸紗夜 : 女 : 姫戸グループ 創業者の孫娘 : 身長 170cm


物静かで大人な雰囲気のある女子生徒だ。少しキツめの顔立ちで身長の高い美人なので怖がられてしまうことが多い。

地方最大のホテルグループ創業者の唯一の孫で、最近は彼女に全てを相続させるのではないかと財政界ではもっぱらの噂だ。本人は学校では穏やかに生活したいようで自分の家族の事を周囲にはうまく隠している。

成績はかなり上位をキープしているが日本史が少し苦手、そして"頭も良い"。

社会人の恋人がいるが、、まあこの件は報告するほどではない。

少々怖がりな部分があるのでリスクヘッジの能力に長けている。



平井加奈 : 女 : サッカー部 マネージャー : 身長158cm


快活で可愛いらしい顔立ちの女子生徒だ。社交的な面も相まって生徒間のヒエラルキーのかなり上位に位置している。

成績は良くない。というか勉強はあまりできないやる気もないタイプだが、"勘が良い"。頭の良さだけではカバーできない瞬発性が期待できるだろう。

先日までサッカー部の男子生徒と交際していたが、今はフリーのようだ(この件は常に情報のアップデートが必要)。

社交的で誰とでも友達になれるタイプだ。この4人の中ではある意味1番普通の高校生だと言える。





「ふぅ、、、」





約3ヶ月と少しをかけて選定してきたがこの4人がベストだろう。各々の能力や性質のバランス、そして何より自分との相性も悪くない。



まとめた全てのデータを"本部"に送信する。




これから色々なことが起こり、そして状況も変わるだろう。




俺にも、彼らにも。




でも、もう止まることはできない。















「あれ、深田先生まだ残ってたんですか?」


唐突にドアが開いて吉本先生が声をかけてきたことで俺は思考を中断する。


「はい。でも準備も終わったのでそろそろ帰ろうかと。」


「そうですか。なら丁度良かった。僕さっきアイス買ったんですけどね、半分に割れるタイプなんですよ。片方いりませんか?」


吉本先生は中年に突入して出てきたと思われるお腹をゆっくり揺すりながら、それでも上品にハンカチで額の汗を拭うと、俺にチューブのような容器に入ったアイスを片方差し出して聞いた。


「ありがとうございます。いただきます。」


「どうぞどうぞ。もうすっかり夏ですねぇ。」


窓の外は晴天で、見るからにうだるような暑さだと予想できた。

吉本先生がくれたアイスはだいぶ溶けていて俺は先ほどの4人の生徒たちはこの天気の中今何をしているだろうかと少し想像して心配になった。


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