候補者2.潮谷俊
2人目の候補者です。
潮谷俊は苛立っていた。
原因は隣にいるチームメイトの免田だが、顔には出していない、はずだ。
昨日の放課後、我がサッカー部のマネージャーと付き合い始め、その三分後に元カノを振った、という学校中ですでに噂になっている話をまるで武勇伝であるかのようにしゃべり続けている。
部活前の柔軟中、あまりに鬱陶しいのでしばらく相槌を打たないでみたが、今は完全に自分の話に夢中なようで、全く気付いていない。
こんな男のどこが良かったんだ、あいつは。まあ、平井たち女子にも俺たち男子には言えない事とかあるんだろうけど。呆れる。
「詩織がさー、本当はずっと俺のこと好きだったらしいんだよ!早く言ってくれてたらよかったのになー!俺てっきり詩織はお前のこと狙ってんだと思ってたからさ!」
その考えは恐らく間違ってない。昨日の朝まではどんなに断っても、何度もあのマネージャーが俺を夏祭りに誘ってきていたからだ。
「お!翔! お前も俊とイケメンコンビで俺の話聞いてくれよ!」
免田は同じサッカー部の水沢翔を見つけてますます顔が輝いている。
「それより免田、コーチが呼んでる。」
「おぇ、まじかよ。ちょっと行ってくるわー。」
助かった。コーチは話が長い上に呼び出した生徒には必ず用事を言いつけるから、すぐには戻ってこないだろう。
「顔が死んでる。」
「当たり前だろ。でも助かった。サンキュー、翔。」
「ああ。けど、次に免田が俺に来た時は頼む。」
「分かってるよ。」
翔も俺の右側に座って柔軟を始めた。青々、というより緑々してる芝生に太陽の光が反射してこの暑さに拍車をかけているような気がした。勘弁してくれ。