候補者1.平井加奈
「くが」
隣の席の紗夜ちゃんが小声で教えてくれる。
「えー、えと、くが、かつなん、、?」
「正解。まあ隣からヘルプが入ったけど、じゃあヘルプした姫戸さん、陸羯南が作った新聞は?」
「……日本、新聞」
「正解。じゃあ次は…」
紗夜ちゃんのおかげで何とか答えられた。クラスメイトにはバカとしか思われてないのは分かってるし、この自分の立ち位置は楽。けど、そのせいで授業のたびに指名を受けるのは納得いかない。
「紗夜ちゃん、ありがとー。」
「いいけど、そろそろ勉強しなよ。」
「うーん、そうだねー。」
「絶対する気ないでしょ。」
控えめに、でもおかしそうに紗夜ちゃんは笑う。きれいだ。
「えー、たぶんするよ? それにしても、ほんと、紗夜ちゃんは頭いいし優しいし美人だし、完璧だね~。」
「……よくそんな恥ずかしいこと言えるよね……」
色白の紗夜ちゃんの顔が急に真っ赤になった。これはかわいい。
「別に恥ずかしくないよ? あ、さては紗夜ちゃん照れてるー!」
ますます紗夜ちゃんの顔が真っ赤になる。すごいかわいい。
「は⁉ 別に照れてないし!」
「ほら、そこの二人うるさいよ。」
注意する言葉のわりに深田Tの顔は楽しそうだ。
「せんせー、紗夜ちゃんが照れてますー!」
「ちょっと!何言ってんの⁉」
周りのクラスメイトもニヤニヤしている。
「はいはい、仲いいのは分かったから、授業戻るよ。」
「はーい!」
「…」
紗夜ちゃんは本当に美人で賢い。そして何より優しい。大人だ。クラスの男子には雰囲気が近寄りがたい、とか言うヤツもいるけど、紗夜ちゃんはただ照れ屋なだけだってことが隣の席になってだんだん分かってきた。
確か紗夜ちゃんには社会人の彼氏がいたはず。きっと大人でかっこいい人なんだろうなー……。
それに比べてなんで私はあんなヤツと付き合ったんだろう。今更だけどほんとに見る目なかった。
結局、気分は最悪。
クーラーのない窓の外は見てるだけでうんざりするくらいの晴れだった。
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