候補者1.平井加奈
初連載です。
よろしくお願いします。
平井加奈は憂鬱だった。
課外授業がほとんど毎日あるけど、もうすぐ夏休みが始まる、暑さ以外の全部が私に味方するはずの時期だ。それなのに、先週の金曜日のことだった。サッカー部のミッドフィルダーの彼氏に、いや、元彼に、急に言われたのだ。
「別れたい。」
まあ確かにお互い相手もいなくてただ何となく付き合っただけだったし、ヤツのことを本当に好きだったかと聞かれるとそうでもなかった。
でも、問題なのは今が夏休み目前、ということだ。いつも教室で一緒にいる子たちや、他クラスの子たちからも聞かされた話では、どうやらヤツは同じサッカー部のマネージャーにたぶらかされたらしい。いや、そそのかされた?よく分からない。まあどっちでもいいけど、とにかく急にかわいい子にモテたと勘違いして調子に乗ってるらしい。
そのおかげで私は捨てられた、とか言ってさっきの休み時間もクラスのみんなにさんざんイジられた。これで私のカースト位置変わったらどうしてくれんだよ。ほんと最悪。
「松井須磨子はおそらく日本初の整形女優であり、また、日本初の不倫スキャンダル女優です。凄まじい人はどの時代にもいるものですね。」
せめて後で二股だった!とかだったらまだ良かったのに。それなら私が捨てられた、なんてことにはなんなくて、私とあのマネージャーに差はつかなかったはずだ。だいたいあの子、こないだまでイケメン潮谷にべったりだったくせに。どういう風の吹きかえし?てか、あいつどんだけバカなんだよ。まあ、そんなヤツと付き合ってたのは私だけど。
「じゃあ、平井さん。三番の人の名前の読み方は?」
やばい。ぼーっとしすぎてた。すでにちょっと笑ってる日本史担当の(顔はかっこいいけどまじでスパルタ)深田Tと、前の席の呆れ顔の潮谷が目に入る。潮谷、おぬしがあのマネージャーにそっけなかったから私の夏休みがおかしくなってるのになに睨んでんの・・! って、あ、そうじゃなくて、
「へ? あ、え、なにこれー、りく、、かつ、、?」