時
昨日までそこにあった熱はとうに冷めていて
少し寂しそうにしている姿を横目に
教室の鍵を開けた
また今日が始まる
1日中そこら辺にあった喧騒を一心に浴び
また去っていく人をじっと睨んでいる
教室の鍵を閉めた
そんな今日が終わる
まだほんのりと熱のこもる教室に
少し雑に置かれた机や椅子を
そっと直すとか
その熱をまだ忘れない机や椅子が
まだ行かないでとでも言いたげな姿を
見ることが
少し幸せに感じた
ような気がした
目前に迫る未来は
もう目を背けることを許さない
その代わりに
確かな過去を
投影させてくれた
慣れ親しんだ教室も
今や面影さえもなく
お前の過去はお前が見つけろと
やたら無表情に語る
あの頃は雄弁に喋りかけてくれた黒板でさえも
もう何も返してはくれない
何度問いかけても
もう何も返してはくれない
あと何回この感情は訪れるのか
あと何回泣いてしまうのだろうか
日々の流れは目に見えない
だから過去を上手く汲み取れない
なのに
見えない未来を掴むために
必死に過去を覗き込む
周りを見ては焦る
自分が出来なかったことを
いとも容易くこなすから
でもそんな日常に
ほんの小さな幸せを見つけた時
もうちょっとだけ頑張ってみよう
と思えた自分がいる
きっとそれは
まだ自分を諦めていないからなのかもしれない
少しずつでいい
ささやかな幸せを少しずつ拾い集めて
1歩ずつ前に進めるだけの力さえあればいい
気張らなくていい
何も無い過去も
焦っている今も
明日精一杯取り返せばいい
未来の事なんて
皆平等に確からしく分からないんだから
じゃあせめて
今は
今だけは
思い切り笑えるだけの力を
ただそれだけが
昔から変わらない
「時間」の在り方だ