前編 機械に支配された世界
どうもはじめまして、またはお久です。えぬえるです。
どんな話かはとりあえず読んでみてください。ネタバレしそうなので。
構想は何年も前からあったものの書く気持ちが無かったので置きっぱなしでした。今書きたくなったので書きました。
それでは私の22世紀をお楽しみください。
時間は午後5時、多くの人が家に帰り始める時間帯。私は家に帰路につくために少し小さな通りを歩いていた。スーパーの方からコロッケのいい匂いがしてきた。その匂いにつられて私はコロッケを買いに行っていた。
コロッケのみを手に取り、レジへと並んだ。人は多かったものの順番は意外にすぐ回ってきた。
小銭を出す時に少し手のひらを見つめた。何の傷もない、綺麗な手だった。
…何も無い手だった。
22世紀の初め、日本人の知能指数は過去最低を更新していた。人々が働かず堕落を繰り返している結果である。
この目も当てられない状況に目をつけたのが、最先端の家電や電子機器を多く販売する大企業"天使カンパニー"の社長、天使 修治である。
彼は唯一無二のその才能を駆使して"Angelic
Eye"を発明した。
"Angelic Eye"、通称"天使の目"と呼ばれているICチップ。脳内に直接埋め込み、思考回路に直接作用するそのチップはとても人間が作ったとは到底思えないようなものだった。例えば間違った歩みを進めている人から罪悪感を増幅させ、正しい行いに道を戻したり、目の見えない不自由者にICが目の代わりになり常人と同じように暮らすことが出来る…など、多くのメリットが存在した。デメリットが無かった訳では無いが、政府はこれを"格安で提供する"という判断に出た。人々は群がり、今は日本人のほぼ全員がそれをつけて歩いている。
効果はすぐに出た。犯罪件数は史上最小になり、不遇の事故もほとんど起きなくなった。今では世界で1番平和な国と生まれ変わった。
こうして"天使の目"は私たちの生活に無ければならないようなものとなっている。
「いや、私以外…か」
とため息を漏らし、アパートに帰ってきた。昔から建てられているオンボロアパートだが、正直ここの雰囲気が好きである。昔のものが好きな性分、時代に遅れやすい私は昔から異端児だった。それに加え1年前までアメリカで育ったせいか日本の雰囲気になれずにいた。
それはそのチップのせいもあるが…
「未来さん 明日の予定は"9時 出社 5時30分 退社 6時…」
「やめて」
「拒否を検知しました 強制終了します」
ウィーンと小さな音が鳴り、その人に似た形状の金属製品は止まった。これが私のもう一つの憂鬱である。"天使カンパニー"が作り上げたお世話ロボット…と言うと聞こえはいいが、身の回りのことをすべてこなしてくれるのが実態だ。人を堕落させないために作ったチップが完全に相殺されるロボットをあの男は作ったのである。
気を苛立たせているその時、ルームメイトのこーちゃんが帰ってきた。
「ただいま〜っと。帰ってきてたんだ。」
「おぉ、こーちゃんおかえり。今日は何買ってきたん?」
「前食べた唐揚げめっちゃ美味い言うとったやろ?」
「せやなぁ、あれは肉が良かったなぁ」
「ほんでな、今日はその唐揚げ屋のトンカツ買ってきたんや。ご飯に乗っけて食べよか」
「何言うとんねんトンカツはトンカツで食べた方が美味しいやろ。ホラ皿乗っけんで」
「なんでや!トンカツはご飯に乗せる。これが常識やぞ!分けて食べるなんか愚の骨頂ってやつやで」
「愚の骨頂でええからさっさと食うでこーちゃん。はよはよ」
「まったく…あまちは毎回そうなんやから…」
絶え間のない話を続け、風呂に入り、いつものように布団に潜り眠った。
"…シス…ム……ラ…"
思わず目を覚ました。壊れかけのロボットのような音がした。思わず世話ロボットのものかと思って確かめてみたが問題はなかった。
"シッ…テムエ…デス……"
また聞こえた。
"システム…ラーデ……"
耳鳴りのように何度も繰り返しなってくる。思わず耳を塞ごうとしたその時、隣で寝ていたルームメイトが目を覚ました。大丈夫だよと声をかけようとしたその時…
"システムエラーデス…サイキドウシマス……"
その瞬間、ルームメイトの体が震えた。それも大きく。そして細かく震えたあと、私の顔を見てこう言った。
"サイキドウシッパイシャハッケン…アマツカミク…サイキドウヲ…カイシ…シマ"
私は気づいたら家から飛び出していた。何あれ、こーちゃんが、こーちゃんが……
外に飛び出して周りを見ると、何も変わっていなかった。夢のような感覚だった。何か一つ変わったことがあるといえば、静かすぎることで…
"ガチャ"
家のドアが開く音がした。思わず振り向いた。40代くらいの男がこちらを見ていた。その時だった。
"アマツカミク…サイキドウ……"
また聞こえてきたのである。それも四方八方ならである。私は走り出した。どこかにも逃げ場はない、それでも走り続けた…が、それも長くは続かなかった。前方からも死んだような目をして近づいてくる人たちが来たのである。
"アマツ…カミ…ク…………"
"サイ…キド……"
もうダメだと思ったその時だった。後ろの方から爆走するバイクの音が聞こえた。多くの人をなぎ倒していって出てきたその…少女は、私の腕を掴み、人の波を駆け抜けた……
今回はホラー感を重視したSFを書きました。至らぬ点も多いと思いますが暖かい目で見守っていただけると嬉しい限りです頑張って後編で終わらせられるようにします。場合により中編入れます。
感想など、いつでも待っているので送って欲しいです!!アドバイスなども待っています。
えぬえるでした。それではまた。