慎重に
ガキンッ
頭蓋骨に剣を思い切り斬りつけてみるも硬質な音をたてて、簡単に弾かれた。
コイツ頭硬っ!頭蓋骨って、簡単に剣を弾き返せるものなのか?
それでも、弾き返せれはしたもののダメージは少なからず入っているようでコイツは、斬りつけられた頭を押さえてうずくまっている。
よし、効いてる効いてる。
じゃあ、もう一回!
相手がうずくまっていようが関係ない。今度は振り下ろしではなく、押さえている部分目掛けて思いっ切り突き出してみる。
ガガガッ
よし!鈍い音を出しながらも今度は弾き返されることもなく、何とか突き刺さった。よし、これで大人しくーーーー
カタカタカタカタ!
ならない!なんか凄い暴れだした。
クソッ!なんだコイツ!駄々をこねる子供か!
心の中でそんな文句を言いながら、これ以上暴れさせないように慌ててコイツの上に馬乗りになる。
そして、未だに突き刺さっている剣を捻りながら奥に押し込む。そのままガリガリと骨を削っていき、ついに俺の剣が頭蓋骨を貫通した。
瞬間、今まで暴れまわっていたスケルトンが魂が抜かれたかのように、脱力し、動かなくなる。
それどころか、全身の骨がバラバラと音をたてて崩れ落ち、終いにはバラバラとなった骨さえも塵となって消えていった。
勝ったってことでいいの・・・か?
勿論俺の問いに答えてくれる者は誰もいない。
なので俺は塵となったスケルトンと、握りしめている剣を交互にみて確信する。
コレ勝ったな、と。
さて、ここがラノベとかにある異世界だとすると、戦闘の後は経験値なるものがあるハズなんだけど・・・
俺は自分の体を見渡してみる。
うん、体が全身骨であることを除けば何も変わらないな。そもそもこの世界に経験値という概念すら、あるか分からないしな。まぁ、考えてもしょうがない。
俺は立ち上がるとスケルトンが来た通路の奥を軽く睨む。
・・・この長い通路に、今倒したスケルトン一体しか居ないということはまず考えられない。だとするとこの先、未知の生物との遭遇、戦闘は避けられないと思った方がいいだろう。
今まで以上に慎重に進まないといけない。
今倒したスケルトン程度だったら何とかなるとは思うが、もしそれ以上だったら?間違いなく殺されるだろうな。
というかこの体で死んだらどうなるんだろうか・・・?
そんな不安を抱きながらも、俺は足に力を込めてゆっくりとだが歩き始めた。
歩き始めて約十分。俺は今、腕を組みウンウン唸りながら立ち止まっていた。
何故立ち止まっているかというと左右に分かれた、見事な分かれ道とぶつかってしまったためだ。
さてさてさて、右に進むべきか左に進むべきか。ここはやっぱり俺の利き腕と同じ右に進むべきか?いやでもそれでさっき死にそうな目にあったしなぁ。
考えてもしょうがない、と分かってはいるが、どうしても考えてしまう。・・・左を選んだらスタート地点からやっていた、右手の法則が使えなくなるし、やっぱ右にするか。
割と簡単な理由で道を決め、右の通路に一歩踏み出した瞬間ーーーー
カチリ
という嫌な音がした。
「えっ?なn」
俺が言葉を言い切るより早く、俺の全身にかなり強い衝撃が走り、同時に俺の視界がクルリと反転した。
な・・・に・・・
薄れゆく意識の中で、視界に飛び込んできたあまりもの光景に、俺は無い目玉を見開いた。
その光景とはーーーー
ーーーー壁の横から突き出された幾つもの槍に、粉々に砕け散らされた、首から上のない人骨、もとい俺の体だった。