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ダンジョンで鉄砲はマナー違反です

 テーブルに並んだトリアル料理も数が減ってきた頃、シノがおもむろに言った。

「そろそろ一段落したし、自己紹介の続きをしましょうか」

 その言葉に思わず緊張する裕太を横目にして、健一がその体格のいい身体をずいっと前に出す。

「俺は山辺健一っす。高校一年です。

 うちは滋賀で道場をしてるんですが、剣道が実践でどれくらい通用するか確かめてみたくてここを選びました」

 堂々と宣言して、一同を感心させた。

「おお、勇ましいね。今朝もしっかり剣を振り下ろしてたし、さすがは経験者ね」

 シノが嬉しそうに相槌を打つ。

「前衛がしっかりしてるとパーティーが安定するからね、明日からもよろしく頼むわよ」

 真正面から期待されて、健一が照れたように頷く。

「剣と言えばちょっと不思議なのですが・・・」

 会話に水を指すのを躊躇うように、マイケルが遠慮がちに話しかける。

「どうしてダンジョンでは刀剣類を使うのでしょうか? トリアルでは魔物相手に銃火器を使うのが標準的になっていると思うのですが・・・」

 マイケルの素朴な疑問に、

「まあ確かにあっちだと近代兵器が大活躍してるけど、あんなのダンジョンで使ったら壁とか傷んで大変でしょ? 壁の修繕とかも私達の役目だし」

「ああ、そんな理由なんですか・・・」

 ダンジョンの維持管理という視点からは、近代兵器は迷惑なのだ。

 マイケルは拍子抜けしたような顔で納得する。

「それに射線上に他の人がいたら危ないからね。あっちでも火器は基本屋外でしか使わないわよ。屋内で使うのは特殊なケース」

「ちなみに私は下層階だとライフル使いますよ。探査系が得意ですからね」

 ライフルを構えるジェスチャーをして、フェイが得意げに言った。

 何故探査が出来るとライフルが使えるのかピンとこなくて裕太達が首をかしげていると、

「射線上に人がいなかったり、壊しちゃいけない物がないことが分からないようじゃ、ダンジョンで飛び道具を使うのはマナー違反なのよ」

 初心者にも分かりやすくシノが解説する。ダンジョンにもいろいろルールがあるのだった。


 さて健一の自己紹介から始まった話も一区切りつき、シノの視線が裕太に向けられる。最後に出来ないかなと思うものの、隣の健一から肘で突かれるは皆の視線が集まるはで、ついに観念した。

「僕は田上裕太です。山形から来ました、高一です。魔法学の先生に勧められて、こちらで働くことにしました」

 一気にまくし立てる裕太。なんとか噛むことなく話を終えたので一安心である。

「裕太君の魔法凄ったね。魔法が得意だとは聞いていたけど、あれほどとは思わなかったわ」

「いえ、まだ炎系の呪文しか使えなくて・・・」

 思わず謙遜する裕太だが、今朝の討伐では魔物の半数を裕太の範囲攻撃で倒したのだ。シノが感心するのも無理はない。

「その歳で一つでも中級呪文が使えるならたいしたものよ」

「そや、うちなんかまだ初級呪文しか覚えてないし、しかも今朝は一回も出番なかったし」

 奈々美はまだ今朝のことを引きずっているらしい。

 その言葉に、テーブルが笑いに包まれる。

「それにしても日本語式の呪文もけっこう進んでるのね。もう中級まで翻訳されてるんだ」

 シノがしみじみと言う。上級言語である日本語で魔法が使えるのは当然のことだが、当然のことながら魔力がない地球では呪文の組み立て方はまったく未知の領域だった。

 そこで日本語での呪文の組み立て方の研究が進められ、最近ではようやく七割程度の呪文が日本式に翻訳されている。

「シノさんはトリアル式の呪文なんですか?」

「そうよ。私らの世代だとまだ日本式の呪文は無かったから、魔法を覚えようとしたらトリアル語を習得するしかなかったの。あなた達くらいの時にあっちに留学してね、必死に勉強したのよ」

 その時のことを思い出したのか、シノの視線はどこか遠くに注がれていた。

「そやけど、その頃のあっち側って大変やったんとちゃいます?」

「そうね、国土回復戦争の真っ最中で、私達も何度か手伝いにいったなぁ」

 十年前、地球は金融大崩壊で大変なことになっていたが、一方のコフュースでもまた大変なことになっていた。それが魔力大崩壊である。


 魔法を使うと瘴気が発生して人々に害を与える、ダンジョンという瘴気の浄化システムが考案されるまでは発生した瘴気で国が滅ぶということも少なくなかった。逆にダンジョンが出来てから、魔法文明は一気に花開き、そこから大いに栄えることになる。地球での蒸気機関の発明に相当するのが、コフュースでのダンジョン発明なのである。

 これでコフュースでの人類の繁栄は約束されたかに見えたが、何ごとにも想定外ということはある。


 十年前、ダンジョンでも処理しきれない大量の瘴気がコフュース全体に発生し、各地で大型の魔物が顕現したのだ。梅田に出現した百メートル級のようなのが、何百と発生したのである。

 強力な魔法戦士がたくさんいたトリアルも善戦はしたが、人類の居住区は次第に狭まっていった。地球とコフュースが繋がったのが、この頃である。

 その後、地球から持ち込まれた近代兵器と魔法を組み合わせて人類の逆襲が始まるのだが、これがいわゆる国土回復戦争である。魔法を学びにトリアルへ留学するということは、これに巻き込まれることでもあった。

 今ではトリアルも国土の八割を取り返し、ヤマトリアルは地球でもコフュースでも最も安定した国として栄えていた。

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