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おまけ 其の二 ヤマトリアルのスカート事情

これも話の流れ的にちょっと本編に挿入しづらかったエピソード。

裕太の勤奉期間の最後の頃のお話になります。

 昼下がりである。

 諸用を済ませた裕太が控え室に戻ったら、奈々美がシノと談笑していた。

 例の事件以降、奈々美とは所属が変わってしまったので、こんな風に出会うのは珍しい。もともと奈々美は勤奉生でなく普通のバイトなので、今の方が本来の形ではあるのだが……

 今日のシフトは終えたのか、奈々美は既に私服である。

 彼女の私服を見るのは初めてではないが、なんとなく違和感を覚えて注視してしまう裕太。

「あっ、スカートだ」

 気づいたことが、思わず口から出てしまった。

「なっ、なんやの、裕太君……」

 突然指摘されて、奈々美が恥ずかしそうに裾を手で押さえる。これではまるでセクハラしたみたいだ、そう思った裕太が焦ってしまう。

「いや、違うんだよ。なんか梅田に来てから、スカートはいてる人ってあまり見たことなかったから、つい……」

 ついなんだと言うのだ、まるでスカートが好きな変態みたいでますますセクハラっぽいじゃないかと更に裕太は焦るが、女性陣は逆に何かを納得したらしく、ぽんと手を打った。

「そういや地方やとまだ制服がスカートなとこ多いんやってね。裕太君とこもそうなん?」

「えっ、うん、僕の学校も女の子はスカートだよ」

 女の子の制服がスカートなんて当たり前だろうと思ったが、よくよく考えるとダンジョンセンターの制服は女の人でもパンツルックだし、夏休みのせいで制服姿の学生も見ていないことに裕太は気づいた。

「ひょっとしてこっちの制服ってスカートじゃないの?」

 裕太はあまりドラマとか見ない方だが、最近の人気動画でも女子高生はスカートだった記憶がある。

「ちゃうねん。スカートでもええんやけど、ズボンでもええねん。でも楽やから、結局みなズボンになるんやけど」

 そんな地方格差があったとは思ってもいなかった裕太。裕太はぶっちゃけ女子がどちらをはいててもかまわないのだが、全員がズボンの学校を想像するとそれはそれで違和感があった。

「コフュースの人はスカートはかへんから、魔法学に力入れてるとこは全部そんな感じやと思うよ」

 言われてみれば、確かにコフュースルがスカートをはいてるのを見た覚えがない。ロングスカートみたいな長衣を着ているのを何かの式典で見た覚えもあるが、あれは男性も着ていたのでコフュース的にはコート的なカテゴリなのだろうと裕太は思った。

「正確に言うとね、コフュース全体でなくてトリアルでの事情かな。

 トリアルでは服装に男女の区別がないのよ。

 私もトリアルのことしか詳しくはないんだけど、他の国だと女性用の服とかあるらしいわ」

 なぜトリアルだけそうなったかについては諸説あるのだが、もともと奴隷出身で男女ともに着飾る習慣がなかったというのが有力だ。

 ちなみにさすがに下着だけは男女の区別が存在して、最近では日本製の下着が急速に広まっている。

 ヤマトリアルでも公式な場でのドレスコードについては、トリアルに合わせて男女の区別なしということになっていた。公立の学校は当然として、私立でもそれに合わせる学校が年々増えている。

「それでこっちだとあまりスカートを見かけないんですね」

 かつて文明開化後に着物が廃れたようなものだと理解する裕太。だがそれは正解ではない。

「そうね、こっちだと不思議とそんな感じよね。でもあっちだと結構スカートが流行って……」

 シノが何か言いかけた時、

「おや皆さんおそろいですね」

 脳天気な声と共にフェイがやってきた。

「ああ、フェイさんこんにちは……?」

 挨拶をしようとして、いつもと違うことに気づく裕太達。

 フェイ自身はいつも通りの綺麗なだけのお姉さんだが、その腰にしがみつくようにして後ろに誰かが隠れている。身長差から見て十歳くらいの子供だ。

「ほら、ファルも皆さんにご挨拶ですよ」

 フェイが身をよじらせて、後ろに隠れていた子供を皆の前にさらす。

「うわ、めっちゃ可愛い!」

 一目見て奈々美が黄色い声を出したのも無理はない。

 銀髪碧眼白い肌と色合いだけならフェイと同じだが、ふわふわの髪質とぱっちりとした大きな瞳は、ありきたりながらお人形のようという形容がぴったりだ。

 顔立ちはフェイより母親のファラステラそっくりである。二人並べれば誰もが姉妹と思うだろう。

 顔立ちだけでも可愛いのに、それがピンクを基調としてふりふりリボン満載のワンピースに包まれている。可愛い×可愛いで、もう最強だ。

 ファルと呼ばれた子供は、おどおどとした表情で戸惑っていたが、意を決してペコリと頭を下げた。

「ファルといいます。いつも姉がお世話になってます」

 その仕草がまた愛らしく、奈々美などは悶絶しそうになっている。

「ああん、もう可愛いなぁ。お姉ちゃん、奈々美ゆうねん。よろしくね、ファルちゃん」

 ついに理性が壊れたのか、奈々美が駆け寄ってファルに抱きつき、その柔らかそうなほっぺに頬ずりしだした。うらやましいなあと思いつつ、この状況をどうすればいいのかと戸惑う裕太。

「ふふん、どうですか。私の自慢の弟の愛くるしさは!」

 奈々美に抱きつかれて困惑しているファルをよそに、フェイは胸を反らして勝ち誇っていた。

「ほんとにかわいらしい弟さん……えっ、弟?」

 遅れて言葉の意味を理解した裕太が、聞き間違いかと耳を疑う。

「間違ってないわよ。ファルはばっちり男の子だから」

 頬ずりしたまま凍り付いている奈々美と、困惑したままの裕太にシノの言葉が追い打ちをかける。

「えっ、でもそのゴスロリ衣装……」

「だからね、トリアルでは服装に男女の区別がないんだって。着たければ男の人でもスカートはくのよ。

 て言うか、むしろ男の人のゴスロリ衣装、むこうだとけっこう定番になりつつあるからね。もう一つのジャンルになってるからね」

 知りたくない事実をシノから告げられて固まる勤奉生達。

 女子高生の制服がズボンOKなだけではない。男子がスカートをはいても許される、それがヤマトリアルのドレスコードなのだった。

 幸いなことに、こちら側ではまだそれが一般的にはなっていないが、あちら側の学校ではスカート男子も珍しくはない状態であった……

これで梅田ダンジョンで説明する予定だったヤマトリアルの設定は消化したので、この物語は完結といたします。

次もヤマトリアルを舞台にちょっと短めの話をする予定です。

よろしくお願いします。

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