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それはちょっと安直すぎませんか?

 どうしてこんなことになっていめのだろう、裕太は出かかったため息を慌てて止めた。

 そこはダンジョンビルの受付、隣ではおやっさんがカタカタと事務仕事を片付けている。裕太は特にやることもなく、さっきから黙って座ったままだ。

 奈々美が早退、健一が脱落、マイケルは手続きが長引くらしく、午後から一人だけになった裕太は急遽ダンジョンビルの受付を手伝うことになった。おやっさんも昨日死んだばかりな訳だし、念のために助っ人をつけておこうという配慮らしい。

 マイケルは亡命審査中に死亡したのがいろいろと問題らしく、今日いっぱいは手続きに忙殺されるそうだ。言われてみれば、そりゃそうだろうという感じだ。


 初めに昨日のお礼を言って、それをどうでもいいとばかりに流されて、マニュアルを渡されて、その間の五分がここで会話したすべてだ。それから一時間近く、すっかりマニュアルも読み尽くし、もうやることがなかった。こちらはダンジョンに数日間潜っているパーティーも多く、利用者の数の割に受付の仕事は少ない。マニュアルを何度も読み返すものの、そんなことにはもう飽きていた。

 裕太がもう何回目かも忘れたため息を再びかみ殺した時、おやっさんが立ち上がって、何も言わず控え室に下がっていった。

 裕太がほっとしたのもつかの間、戻ってきたおやっさんが手にしたお盆を何も言わずに裕太の前に置いた。何かと思ったら、ほかほかの蒸しタオルが六本乗っかっている。

「あの・・・・・・?」

「あいつらに渡してやれ」

 裕太がすべてを言うまもなく帰ってきたおやっさんの答えは、まったく答えになってなくて混乱する裕太。その時、問い返すまでもなく、答えの方がダンジョンから歩いて来た。探索を終えた冒険者達だ。

「あの、これどうぞ」

 蒸しタオルを手渡すと、冒険者達が喜んで礼を言ってくれた。

 その後は帰還手続きをしたり、武器を預かったりとしばらく忙しくなる。

 ちなみにダンジョンで使う剣や槍などの刃物は、私物でも当然そのまま持ち出しは出来ない。ダンジョン外で持ち歩く時は鍵付きのケースに入れないといけないが、重いし手続きも面倒なので受付に預けておく冒険者も多い。ヤハギの鎧のように、預けっぱなしで放置されているものもいくつかあるが……

 冒険者達が笑顔で去って行き、再び静寂が戻った。

「あの、どうして冒険者が帰ってくるのがわかったんですか?」

 裕太が訪ねると、おやっさんはカウンターの内側を指さし、

「そこに監視カメラのモニターがある。ダンジョンの出入り口は常に監視対象だ。マニュアルにも書いてあるだろ」

 確かにその通りだと、手持ちぶさたでマニュアルを何度も読み返していた裕太は恥ずかしくなったが、だから蒸しタオルのことは何処にも書いていないことも知っていた。

 昨日おやっさんが助けに来たのを意外に思っていた裕太だが、見かけと態度に反してけっこう細かい心遣いの出来る気配りの人なのかも知れない。

 皆が気軽におやっさんに呼びかけるのも納得だ。

「あの……どうしておやっさんって呼ばれてるんですか?」

 再び訪れかけた沈黙を打ち破ろうと、裕太が果敢に攻め込んだ。裕太の感覚だと、彼はおやっさんと呼ばれるほどの年齢には見えない。シノやヤハギ達よりちょっと上くらいだ。

 問いかけられたおやっさんはじろりと裕太を睨み、その視線をすぐに外してカタカタとまた事務仕事に戻った。失敗したかと裕太がため息をつきかけた時、

「御屋坂っていうんだよ」

 おやっさんから突然言われて、裕太はそれが何かわからず思わず彼を見返した。

「だから、俺の名前がおやさかなんだよ」

 何度も言わすなとばかりにぶっきらぼうな声。おやさかだからおやっさん、割と安直な由来だった。

 裕太は吹き出すのを必死で我慢し、おやっさんはぷいっと横を向いてまたカタカタとやり出した。

 不機嫌そうな顔つきだが、今の裕太にはそれが照れ隠しだとわかって、さらに笑いがこみ上げて来て我慢するのが大変だった。

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