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善は急げといいますし・・・

 シノの足音が聞こえなくなったことを確認した健一が、

「よし、さっそく装備を取りに行こうぜ」

 喜々としてそう言った。

「えっ、でもシノさんが二時間後って・・・・・・」

 裕太が戸惑いの声を上げるが、健一は馬鹿なことをと首を振る。

「他の人が居たら、ポスターのこと調べられないかもしれないだろ」

「それはそうだけど・・・・・・」

 煮え切らない裕太だが、

「ええんちゃう。ひょとしたらポスターは全然関係ないかもしれへんし、二時間以内にちゃちゃっと行って確認して、戻ってきたら誰も気づかれへんし」

 奈々美も乗り気になっているようだ。裕太はちらりとマイケルを見たが、視線が合うと大きく頷いて同意を示す。

 裕太も地下一階の探索に危険性を感じている訳ではない。むしろ百文字以下の下級言語話者がうろついていたような場所で、自分達が危険な目に合うとは思えないくらいだ。

 二時間待って補佐の冒険者をうまく説得してポスターを調べたとしても、何も見つからなければ迷惑かもしれない。それなら自分達だけで手早く調べてくる方がいいのかもしれない。

「わかったよ、行こうか」

 裕太はようやく覚悟を決めた。


 地下二階の探索の時の装備を借りるには、当然おやっさんの許可がいる。シノが許可を取ってくれていたが、それは二時間後のことだ。今から行っては怪しまれる可能性がある。

 地下一階の探索なら装備はいつものままでいいと思った裕太だが、健一だけでなくマイケルも装備にこだわった。二人ともえらくあの装備が気に入っているようだ。

「おやっさん、装備の借り出しに来ました」

 奈々美が受付のおやっさんに恐れ気もなく言う。裕太達があの人は苦手だと言うと、自ら交渉役を買って出てくれたのだ。春からバイトをしているので、かなり慣れているらしい。

 おやっさんは受付の中からじろりと勤奉生達を見回し、

「ああ、なんだって?」

 不機嫌そうに聞き返してきた。裕太はそれだけで肝が縮んたが、奈々美は平気なようである。

「装備やよ、装備。こないだ借りた装備をもう一回借りに来てん。

 シノさんから話聞いてない?」

 平然と畳み掛けた。

「聞いちゃいるが、取りに来るのが随分早いじゃないか」

「そやかて善は急げゆうし、遅れるより早い方がええやん」

 奈々美の言葉には勢いはあるが、まるで理屈になっていない。だが奈々美らしいと言えば、いかにも奈々美らしい。

 おやっさんも真面目に取り合うのが馬鹿馬鹿しくなったのか、

「ほらよ、倉庫のキーだ」

 意外とあっさりキーを渡してくれた。急いで装備を替え、調整をしている時に倉庫のドアが開く。

「おい、お前ら。今シノに確認したがやっぱり・・・・・・」

 おやっさんだ。

 健一がはっとして身を固くし、次の瞬間、

「行くぞ!」

 おやっさんの脇を抜けて、ダッシュで駆け出す。裕太達も慌ててその後に続いた。

「おいっ、お前ら!」

 おやっさんの声が響くが、勤奉生達は振り返りもせず必死でその場から走り去った。


「いいのかな・・・・・・」

 流石に逃げ出したのはまずかったんじゃないかと裕太がしょげる。

「じゃあ、どうすりゃよかったんだよ」

 健一がむっすりと答えるが、それがわかっていればこんなことにはなっていない。

「まあまあ、終わったことでくよくよせんと、先のことを考えたらええやん」

 奈々美が取りなし、マイケルも頷く。

 勤奉生達が暴走していることはバレてしまったが、人手が足りない今の状況では追っ手がかかる可能性は少ないだろう。とは言え、時間が無限にある訳でもない。勤奉生達は裕太が密入国者と出会ったポスターの場所へ急いだ。

 途中、三回魔物と遭遇したが、裕太の呪文を使うことなく健一とマイケルだけで難なく撃退する。かすり傷一つない完勝ぶりに、さすがはよい装備に替えただけはあったと感心する。そのおかげでおやっさんにバレたのでプラスマイナスは差し引きゼロなのだろうが・・・

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