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綺麗なだけのお姉さんは迷惑ですか?

 唐突に目が覚めた。

 まるでスイッチを入れたみたいに、裕太の意識は唐突に覚醒した。

 そしたら、知らない中年男性がこちらを覗き込んでいた。

「!」

 裕太が声にならない悲鳴を上げ、慌てて起き上がろうとしたが、身体に力が入らない。

 どうやらおじさんに膝枕的なことをされて、肩を押さえられているらしい。

「気がついたかね」

 男性が優しく微笑む。耳が長いのでエルフ・・・・・・いや、コフュースルだ、裕太は頭の中で素早く言葉を訂正する。

 それでようやく裕太の記憶が繋がった。この男性はフェイと羊羹談義をしていた魔法師だ。

 そしてここは行きに休憩をした広場で、自分は寝かされている。

 何故?

「よっ、裕太ちゃん目が覚めたか!」

 ヤハギの声が響き、

「今回の功労者に拍手ですね」

 フェイの提案で、裕太と中年魔法師以外が盛大に拍手した。激しい呪文戦のせいか、何人かは鎧が焦げている。

 どうやら自分が褒められているらしいと裕太は理解したが、その理由がわからず困惑する。

「それにしても裕太君が二重詠唱出来るなんて、驚きですね」

 裕太も二重詠唱という知識はあったが、試したことすらなかったので、フェイの言葉に逆に驚く。いや、正確には学校でその言葉を習った時に、早速試したことがあるのだが、その時は呪文は発動しないし早口言葉並の詠唱速度で舌を噛むしで散々だった。

 そんなことを思い出しつつ、裕太はようやく自分が意識を失う前に唱えた呪文が二重詠唱の条件を満たしていた事に気づいた。

「あの呪文、発動したんですか?」

「しましたよ。しかも凄い威力で決定打になりましたね。皆、驚きです」

「はあ・・・・・・」

 実際に効果を確かめていない裕太にはいまいち実感が持てず、答えるフェイにも生返事を還してしまう。

「確かに凄い効果だったが、制御法もきちんと身に着けないといかんな。今回は余裕のある編成だからフォロー出来たものの、使うたびに気を失うのでは危なっかしすぎて見ておれん」

 頭の上からおじさんの声がするが、だからどうしてこの体勢なのだろう。

 普通、ゲームとかアニメだと膝枕してくれるのは美少女の役目じゃないだろうか。だからといって見た目だけ美女のフェイに膝枕されてもあまり嬉しくないけれど・・・・・・つい裕太の頭に浮かんだことを見透かした訳では無いだろうが、フェイが説明してくれる。

「ウエダさんは魔力付与の呪文が使えるのですよ。それで余ってる魔力を裕太君に分けて居たところなのです」

 ウエダさん? 誰それ。次から次へと疑問が付きない裕太。

「こっちではよくある名前らしいけどね。トリアルでもそれほど珍しい名前じゃないんだよ」

 よくあることなのだろう、中年魔法師のウエダさんが慣れた調子で補足する。

 魔力付与の呪文はパーティ内で魔力のやりくりが出来て一見便利そうだが、呪文の発音系統が特殊で他の呪文との互換性が無いことや、予備の魔力石を持ち歩いた方が手軽なこともあり、あまり覚える人はいない。今回の裕太のように自前の魔力をすっからかんに使い切って気絶した場合なら、相手の意識のあるなし関係なく使える魔力付与は良い治療方法だが、そもそも普通の冒険者はそんな危険な状態になるまで自分を追い込むことはない。それ、パーティー全滅のフラグだし・・・・・・


「まだ完全回復にはほど遠いが、意識もしっかりしているし、もう大丈夫かな」

 ウエダさんが裕太の肩に添えていた手を放す。

「あっ、どうもありがとうございます」

 礼を言いながら立ち上がった裕太は、しかし立ちくらみを起こしてふらついた。

「おいおい、しっかりしろよ」

 素早く裕太の首根っこを猫のように掴んで支えるヤハギ。

「すいません・・・・・・」

 しゅんと小さくなる裕太。

「裕太君は謙虚ですね。シノならあんな功績を上げたら三日は自慢し続けますよ」

 裕太の態度を謙遜ととったのか、フェイが感心していた。実際には結果を見ずに失神したので実感がわかず、ただ迷惑を掛けているだけのように感じているだけだ。

 それよりもフェイのシノ評価が何か違う気がしたが、

「最近のあいつは随分丸くなったし、そんな自慢はしないんじゃね」

「そうだな。最近は随分指導する立場が板についてきたし、私が指導していた頃から随分成長したな」

 ヤハギとウエダさんがフォローする。

「それに引き換え、お前は昔から相変わらずいい加減だよな」

「そうだな。フェイはもう少し大人になったほうがいいな」

 そしてヤハギとウエダさんの追撃がフェイに刺さる。

「むう、お二人とも辛辣ですね」

 フェイがぷうと頬を膨らませたが、裕太も二人の意見にこっそり同意していた。

 見た目だけ綺麗なお姉さんなのは、いろいろともったいない。

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