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地下二階は迷路でした

 ダンジョンビルはガチの攻略者向けのダンジョンだが、地下一階から三階までは初心者用だ。

 センター側の地下街と同範囲の地下三階はともかく、地下一階と二階は元のビルのフロアと同じ広さしかなくダンジョンとしては狭い。

 狭いということは魔物の湧出地点も少なく、それだけ魔物の数も少ないということだ。

 だから地下一階と二階は予約制であり、時間単位でパーティーを入れ替える。

 シノが地下二階へ行こうとしたのも、予約に空きが出来ているのを見たからだ。

 入れ替えまでの時間で装備を整えて、準備万端で突入したそこは、やはりセンターの地下街と大違いだった。

 広いフロアを、高さが二メートル程度のブロック塀的な仕切りで区切ってあり、まるで迷路のようである。

「この壁、たまに組み替えて道順変えるんだよなぁ。それがけっこう大変でさ、ああでもそろそろ組み換えの時期かなぁ」

 ヤハギのお喋りが止まらないが、それでいて周囲を探る目つきは鋭い。

 前衛の右で皆より一歩先を歩き、その左に一歩下がって健一、左端が盾持ちのマイケルという編成だ。裕太と奈々美が中衛で、シンガリをシノが努めていた。

「あー、この感じは右の方からお出ましだな。

 マイケルちゃん、盾を構えて迎撃の準備。裕太ちゃんは呪文ね」

 ヤハギの忠告どおり、曲がり角の右から魔物の一団が現れる。人型二体に犬型二体の混成だ。地下街で見ていたものより一回り大きく、色も黒っぽい。

 裕太は中級呪文を唱えたが、犬型のスピードが早くて間に合わない。炎の壁に捉えられたのは人型の二体だけだった。

 肉薄してくる犬型の一体をマイケルが盾で弾いて、もう一体を健一が袈裟がけに切り下ろす。

 健一に切り倒された方はそれでも勢いが殺されず、残った身体がそのまま健一に体当りするようにぶつかり、危うく体勢を崩しかけたところをヤハギがささえる。

 盾に弾かれた方はそのまま反転してまたマイケルに襲いかかるが、マイケルが槍を突き出すとその柄に齧り付いた。健一が刀で切りつけようとしても、槍が絶妙な角度で邪魔になり手が出せず、裕太も誤爆を恐れて呪文の狙いが定まらない。

「よっ!」

 ヤハギが魔物を蹴り飛ばし、

「そりゃ、裕太ちゃん!」

 皆と魔物との距離が離れた隙に、裕太が杖を振り下ろして呪文を放つ。

 魔物が爆炎に包まれ、ようやく脅威が去った。

「いいじゃんいいじゃん。初めての地下二階でこの調子なら上出来だぜ。

 この調子でじゃんじゃん行こうぜ」

「ね、いい感じでしょ、この子達」

 我がことのように喜ぶヤハギとシノだった。


 その三十分後。

 ヤハギの宣言通りという訳ではないが、立て続けに連戦して流石に皆の息も上がってきた。

 そういうタイミングを考えてデザインしているのだろう、ちょうど休憩に向いた広場のような場所にたどり着く。ご丁寧にベンチまで設置されていた。

「じゃあちょっと休憩しましょうか」

 ヤハギがちょっと離れたところで警戒役をしながら、水筒からグビグビと水分補給をする。

 勤奉生達はベンチに座り込んで息を整えた。

「地下二階はどう?」

「魔物がすばしっこくて厄介っすね」

 ヤハギに習って水分補給しながら、健一がぼそりと言う。

「私もあの速度は苦手です」

「マイケルちゃんは魔物を倒すことじゃなくて、牽制して引き離すことに集中してみな。槍を刺そうと意識しすぎて、動きが直線的になってんだよ。

 もっとこう、棒でぶん殴るくらいの気持ちでいいからさ」

「なるほど、次は気をつけます」

 マイケルが素直に頷く。

「僕も魔物が近づいてきたらどうしていいか分からなくて・・・・・・」

「裕太君の呪文は近接向きじゃないからね。今はそういうものだと割り切って、乱戦になったら冷静に観察して機会を待つしかないわね」

「そうですね」

 何か近接向きの呪文も覚えたいなと思う裕太。

「うち、深い傷口とか出血とか苦手かも・・・・・・」

 魔物に噛まれたり、爪で裂かれたりと、地下街の頃より深い傷を治癒してきた奈々美が、青ざめた顔でこぼした。

「えっ、ちょっとそれは回復役としてはまずいわね・・・・・・」

 さすがのシノも、咄嗟に忠告一つ思い浮かばなかったようだ。

 トホホとため息をつく奈々美。

「おっ、お客さんが近づいてきたみたいだぜ。そろそろ後半戦に行ってみるか」

 ヤハギが皆に注意を促し、どうやら短い休憩は終わりを告げたようだった。

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