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戦いの準備は大切です

 ダンジョンビルに置いてある装備は、センターのものより多彩だった。

 部屋の隅には、少年心をくすぐる刺々しいデザインの金属鎧が無造作に置かれている。

 ゲームなら中盤以降で重宝しそうなやつだ。

「凄いですね、こんなのホントにあるんだ」

 思わず漏らす裕太に、

「おお、いい目してるじゃん。

 でもやめといた方がいいぜ。見た目は最高だけど、クソ重くて動きにくいんだ、それ」

 ヤハギがまるで経験者のように言い、

「そもそもそれは備品じゃなくて、買ったはいいけど持て余した誰かが置いていったものだしね」

 シノが呆れた声で補足し、

「うち、ヤハギさんがこないだ上の店でこの鎧買ってるの見たで」

 トドメが奈々美の証言だ。

「まあ人生にはイロイロあるんだよ」

 特に彼の人生は回り道が多そうな気配だった・・・・・・


「日本刀もあるんすね」

 健一が武器立てから、鞘に収まった刀を取り出す。

 鞘からスラリと抜き放つと、名刀というような存在感はないが、きちんと手入れされていて刀こぼれひとつない。

 トリアルでは基本的に剣は付き主体の直剣であるが、切り主体の冒険者もそれなりにいる。そんな冒険者を中心に刀の需要も伸び続け、今では生産が追いつかないレベルの人気だ。

「そりゃ切れ味抜群だけどなぁ、その分、逆に扱いが難しいぞ」

 ヤハギがこれまた実感のこもった声で忠告する。

 魔法で切れ味を強化した日本刀は、最新の戦車の複合装甲ですら紙のように切り裂く。うっかり振り回したら大惨事である。

「まあ健一君は剣道の上段者だから、その辺は大丈夫でしょう」

 シノが請け負い、健一は今まで使っいた剣をベルトから外して、代わりに刀を装備する。

「じゃあ武器はそれにするとして、刀じゃ盾は使えねーし、とりあえず兜とか手甲とかで防御力を稼ぐか」

 ロッカーを漁りながらブツブツ言って、ヤハギが幾つか防具を取り出した。

 健一の体格が良すぎるせいでサイズが合わないものもあったが、あれこれ調整して装備させていくうちに、いかにも戦国武者のようになっていく健一。

「ちょっとあんたの趣味が入ってない?」

「いや、否定はしねーが、動きやすさと防御力のバランス的にはこんなもんだと思うぞ」

 健一がヤハギに促されて、腕をグルグル回したり屈伸したりして様子を見る。

「シノさん、これで大丈夫っす」

 健一もかなり自分の格好を気に入っいるようだ。

 裕太もちょっと羨ましそうに彼の出で立ちを見ていた。


「じゃあ次はこっちの兄ちゃんだな」

 ヤハギがマイケルに向き直り、

「パーティーのバランス考えたら盾持ちにしてぇところだけど、あんまスタミナなさそうだなぁ」

「そうですね。私の体力は人並み程度です」

 本人からの告白を受けて、しばらく熟考したヤハギが、

「まあこのバックラーくらいなら大丈夫だろ。こんな感じで手首に固定して・・・・・・これで槍を構えても大丈夫だ。鎧はこっちの袖付きにして、後は槍も軽いのに変えとくか」

 ヤハギのプロデュースでマイケルはあっという間に中世の雑兵っぽくなる。

「うーん、バランスはいいんだけど、見かけがイチイチだよなぁ」

「いえ、これはいい装備だと思います。私は気に入りました」

 どこか不満げなヤハギに、かなり気に入った素振りのマイケル。

 ヤハギはマイケルの為にまだロッカーを漁る素振りを見せたが、

「うちらは? うちらはどんな装備にしよ?」

 そこへ奈々美が待ちきれない感じでヤハギを急かす。

「えっ、後衛はそのまんまでいいんじゃね?」

「あまり装備を重くしても意味ないしね」

 ヤハギとシノの意見が珍しく一致する。

「えー!」

 物凄く不満そうな奈々美。


 結局、奈々美と裕太も小さな盾をそれぞれ持つことになり、更にいつもの装備の上からマントを羽織ることになった。裕太が黒で、奈々美が白である。

 奈々美はマントをヒラヒラさせて悦に入っていたので、裕太はマントが邪魔な感じだと言い出せない。

「じゃあ装備も整ったことだし、出かけましょうか」

 シノの言葉に、ヤハギ以外が緊張した面持ちで頷いた。

「俺がついてんだし、そんな固くなることねーって」

 軽く請け負うヤハギを、シノが後ろから小突く。

 フェイとはかなり異なる人物だが、シノからの扱いだけはあまり代わりないようだ。

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