勇丞と涼の闘い。妖しい敵、遊毒の攻撃。
前回からの続きを急ピッチで仕上げました。どうぞ。
勇丞は部屋に上がり込むと、どかっと胡坐をかいて座った。
「いきなりだが、本題だ。」
ごくりと息を呑む紗々羅と涼。
「連続殺人事件・・・。行方不明事件・・・。
あれは全部天帝軍の仕業だ。わかるよな?これがどういうことか。
そう、・・・人間の殺人鬼の様に放送されてるけど違う!
あれは全部天帝の所業だ!!」
「御ヵ月ノ夜空・・・。」
紗々羅が口を開いて呟く・・・。
「そう。そいつが天帝軍の頭領だ。つまりボス!」
「ボスて・・・。ちょっと勇丞くん、真面目に・・・。」
「俺はいつでも大まじめだ。誰かさんと違って女心も分かる
ジェントルマン(笑)だぞ?だから俺が紗々ちゃんを守ってあげたいわけよ?」
「待て待て待て!!紗々を守るのは俺の仕事だ!空手野郎は
道場で稽古でもしてろよな!!あと、馴れ馴れしくナンパまがいの台詞吐くな!」
涼は苛々しながらそう続けた。
「まあそれは置いといて。スルースルー。
紗々ちゃん、庵南ちゃんは自分の置かれている立場分かってそう?」
ぐっと言葉を詰まらせながらも紗々羅はこう答えた。
「あの子はまだ小学生の子供よ?そんな・・・。
これから先に起こるかもしれない残酷な現実を教えるなんて・・・。」
紗々羅は正座しながら、両手をスカートの上に置き、ぎゅっと力を込めた。
「人身御供・・・だもんな。あの子・・・。」
勇丞はため息を漏らす・・・。
「人身御供ってなに・・・?」
襖が開き、寝ていた筈の庵南が立っていた。
「庵南!!!」
紗々羅は顔面蒼白だ。慌てて取り繕って誤魔化そうとしたいが
言葉が出てこない・・・。
「私はどうなるの・・・?怖い事って・・・?
事件って何・・・?」
「それは・・・!!」
「おじいちゃんもお姉ちゃんもみんな私にはテレビやラジオを
禁止して見せても聞かせてもくれないから変だといつも思ってた!!
何を隠してるの?!!聞かせてよ!!!お願いだよ!!」
庵南は興奮気味にまくし立てて聞く。
「落ち着いて。庵南ちゃん。」
勇丞が諫める様に横から口を挟む。
「君は・・・。選ばれた神なんだ。遠い過去からずっと。
だから・・・。残酷で怖いことが待っている。遠からず。」
「ちょっ!勇丞くん!!やめて!!庵南はまだ小学生なのに!!」
腕を引っ張って止めに入る紗々羅。
その腕を軽く撥ね退け、紗々羅を難しい顔で見る。
「紗々ちゃん。真実を話さなきゃ。逃げてちゃダメだ。」
「私・・・。どうなるの??!死ぬの???」
「死なないよ!!殺させないし、閉じ込められるのも阻止する!!
その為に俺が此処に来たんだ!!安心してくれ。」
ふらふらと揺れる庵南の両肩を手で押さえながら諭した。
「死なない?ほんとう・・・?」
「ああ。」
「閉じ込められるって何・・・?」
「君は「人柱の神」なんだ・・・。」
「なにそれ。わかんないよ!!」
庵南は勇丞の手を払いのけて走り去る。
後を追いかけようとした時、
空間の捻じれが起きる様な感覚が走った。
「やばい!!天帝軍だ!!!」
涼が叫ぶ。
「おでましか・・・!!」
勇丞も冷や汗を流す・・・。
「私は庵南を捜す!!ここはまかせても・・・?!」
「かまわないさ!!行ってこい!!」
勇丞が叫んだ。
その場から離れて走り出す紗々羅。
縁側から慌てて外に飛び出す男2人。
「雲が渦巻いてやがる。不気味なこって!!」
勇丞は苦々しそうに言う・・・。
空の上から、雲の隙間から黒い光が差し込む。
その中から美しくも妖しい艶めかしい女性が姿を現した。
「余は天帝軍の君から使命を任されし者。
名を「遊毒」と申す・・・。
貴様ら天尊の一族を滅しにやってきたのじゃ。」
遊女の様なあられもない和服を着た妖しい美女は
毒々しい笑みを携えて彼らをさげずんだ様に見下ろす。
手に扇子を持っている。
その扇子をばさりと開き、突風の攻撃をしかけてくる敵。
「うわあ!!!」
2人は吹き飛ばされそうになるも両手で風を弾く。
「なかなかいたぶり甲斐のありそうな男共じゃ・・・。
死するがよい!!!」
真っ赤な口紅を塗った妖女は刀を腰から取り出した。
「やばいな・・・。あれでやられたら死ぬぞ俺ら・・・。」
「わかってるよ!!どうする?!!」
「紗々・・・大丈夫かな?!!」
涼が後ろを振り返った瞬間遊毒が放った刀が
涼の肩を掠めて大きく抉る。
「うわあ!!!」
肩から血が零れ落ちた。
崩れ落ちる様に前に倒れる涼・・・。
「しっかりしろ!!」
勇丞がかけよる。
「このアバズレババアめ!!」
「誰が何だと・・・?口を慎まなくてはそちも
同じ目に遭うぞよ?おほほほほ。」
「くっ・・・!」
続。
今回は男2人の闘いの途中まで描写しましたが、
次回は庵南の行く末を左右する場面も描いていきたいです。




