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この世界が現実だもの

作者: 無一文吾

4作目となります。

感想や評価などいただければ物凄く嬉しいです。

そろそろ長編も書いてみたいと考えている今日この頃です。

 僕のお兄ちゃんは、小説を書くのが趣味だ。小学四年生のときから、もう十年は書き続けているそうだ。

 ただ、あくまで趣味であって、決して上手ではない。


 書き上げたら弟である僕に一番最初に読ませてくれるのだが、上手ではないと言うか正直言って面白くないと思う。いつも。


 文章自体は悪くはないし、客観的に見れば下手ではない部類だと思うのだが、どうも僕の趣味とは合わないようなのだ。


 内容は毎回毎回、完全にフィクション物。

 SF、ファンタジー、オカルトと、非現実的な話ばかりを好んで書いている。それも内容は実に軽くて軟派で、完全に娯楽としての小説だ。


 僕はそういうタイプの小説はあまり好きではない。古い考え方だとは分かっているのだが、小説とはもっと堅苦しい物であるべきだと思うのだ。いや、まあ本当勝手な思い込みだとは重々承知している。

 しかし個々人の好みなんてそれぞれなのだから、これもまた仕方ない話だろう。


 なんで非現実的な話しか書かないのかと、お兄ちゃんに一度聞いたことはある。

 そしたらお兄ちゃん、実際にあるかもしれないじゃないか、だってさ。あと、というか実際にあるに決まってる、とも言ってたっけ。


 非現実的な世界に強い憧れをもつお兄ちゃんと、そんなものは存在するわけないし馬鹿馬鹿しいと考える僕。

 考え方こそ正反対だが、別段僕たちは仲が悪いわけではない。

 ただ僕は自分の考え方こそが絶対正しいと信じているけどね。


 だって、魔法だったり幽霊だったり異世界だったり、結局そんなものは存在するわけないのだから。


 だからお兄ちゃんの小説を読むのはあまり好きじゃない。毎回毎回設定からして幼稚だし、よくもまあそんなくだらない話を真面目に考えて書くものだなと、そう考えるとお兄ちゃんが哀れにも見えるからだ。もう二十歳になるだろうにさ、中学生の僕の方が現実をよく見ているんだもの。


 例えば、霊感を持った主人公が幽霊の悩みを聞いてあげたり、怨霊の呪いから人々を守ったりする話。

 幽霊なんているわけないじゃないか。それに怨霊だの呪いだのが実際にあるのなら、殺人犯なんて死刑を待たずとも全員呪い殺されてるだろうにさ。


 例えば、異世界に飛ばされた主人公が勇者となり、剣と魔法でモンスターたちと戦いを繰り広げる話。

 異世界なんてあるわけないじゃないか。それも都合よく言葉が通じたり環境に適応できてたり、空想妄想甚だしいね。


 他にも例えば、実は僕たちがいる世界は、誰かの書いた小説の世界だとかいう話もあったっけ。


 お兄ちゃんが小説を書いて、登場人物を動かしているように、僕たちも誰かが書いた小説の登場人物に過ぎないとかいう話だ。

 僕のこれまでの記憶も、今の思いや考えも、全部全部が誰かによって作られたものだという。はあ、くっだらないことこの上ないね。


 この話は特に馬鹿馬鹿しいと思ったので、読んだとき思わずお兄ちゃんに言ってしまったもの。

 お兄ちゃん、もっと現実を見ようよ、と。

 僕たちがいる世界が小説の世界だなんて、ありえないよ、と。


 そしたらお兄ちゃん、何か可笑しそうに、困ったように笑ったんだ。

 まるでそれこそ、小さい子供が魔法の存在を本気で信じ込んでしまっているのを、大人が本当のことを教えるべきかそれとも可愛い夢を守ってあげるか悩むように。


 あれはとってもイラっとしたし、今でも思い返して腹が立つ。


 あれじゃ、僕が現実を理解していないみたいじゃないか。

 現実が見えていないのはお兄ちゃんの方なのにさ。


 はあ、考えるだけでも本当に馬鹿馬鹿しいしくだらない。


 僕たちがいるこの世界こそが現実だもの。

 この世界が小説の世界だなんて、そんなの、あるわけがないのに。


読んでくださった方、本当にありがとうございます。

やはりまだまだ下手糞だなと、書くたびに痛感しております。

あとジャンル選択で毎回ちょっと迷います。今回のこれもファンタジーとは言えないですよね。

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