2 謁見
またまた会話が長い
もう少し縮められるようにしないと
勇者一行が部屋で休憩している頃王の私室では……
「父上、勇者様方が今お部屋に入りました」
「ご苦労。お前の目から見て勇者達はどうだった?」
「何人か面白そうな方がおりました」
「ほう……」
「もの凄い真っ直ぐな方がおりまして、あの方は能力値がよければ、勇者の称号を得られるかも知れません」
「それは楽しみだな」
「あと一番楽しみなのが、私が色々説明した後に皆様が声を出せずに固まって居た所、真っ先に正気に戻られて色々質問されて来た方がおりましたわ」
「頭が回る物が居るのか……鬼が出るか蛇が出るか」
「まあその方は恋人さんでしょうか?ずっと手を繋いでおられる方がいて、その方のためかも知れませんが……」
となんかギリって音が聞こえた
「愛する者を守るためか、そう言った者は強くなるやも知れんな……ってアンリエットよなぜワシを睨む?」
「あ、いえ何でもございません事よホホホ」
「ま、まああれだ。謁見を楽しみにしておくとしよう、謁見にはお前も出るようにな」
「はい勿論です。召喚した者としてしっかり面倒見させていただきます」
そして数時間が過ぎ謁見の時間が来た。
謁見の間に集められた勇者一行。
今度は流石にあかりも手は繋いでないけど、しっかり横に着いてきた。
大木達の視線がウザい。
王国からも大臣ぽい人や、騎士・衛兵みたいな人などかなりの数が参加しており、なかなかの人口密集具合だ。
と王国側の人が緊張したと思ったら
「ウィレム・F・ユースティア様ご入場」
との声が上がった。
その声の後に、国王らしき人とアンリエットさんが入って来た。
って国王すげー強そうなんだけど……2メートルぐらいあるしすげーごついい……あの人一人で戦争勝てんじゃね?
そんな事を思っていたら、国王が王座に座って声を発した
「勇者諸君。召喚に応じてくれて感謝する。我国は現在危機に瀕している。ぜひ皆の力を借り、この危機を脱したい!我国に力を貸して欲しい!」
そう言って立ち上がって頭を下げた。アンリエットさんも続いて頭を下げていた。
国のお偉方が慌ててるから、まさか国王と王女が頭を下げるとは思わなかったんだろう。
とここでお約束の有馬節が炸裂した
「国王陛下頭をお上げ下さい!僕達勇者一行は、この国の為民の為、力をお貸しする事に決めましたから!」
(おいおい!まだ誰も決めてねーよ!)
またまたの有馬の独走に、皆声を出せずに居る
「ありがとう勇者よ。名はなんと申す?」
「はい!有馬鋼と申します。コウとお呼び下さい!」
「ではコウ。皆が手を貸してくれると言う事で宜しいのかな?」
「はい!勇者として召喚されたのであれば当然の事ですから!」
(ちょっと待て!どんどんやばい方に話が進んでるぞ……先生も他の奴らも完全に口ポカーンだし)
と思ってたら、隣でまたあかりが震えてた……そりゃそうだよな。
なんか勝手に話が進んでるし、下手したら戦いたくない奴も戦うって言質取られそうだ。
仕方ないかと思い、あかりの手を握り落ち着かせてから発言した。
「国王陛下宜しいでしょうか?」
「うむ構わぬ。お主の名は?」
「水木和也と申します。彼はこう言ってますが、まだステータカードも作れていません。戦える能力があるか、称号はどうかなどまだわかりません。ですので全員戦争に参加出来るかは、この場では決めれないと思います」
「そうだな。能力自体では、今は良くても後々戦う意思を持てない者も出るであろうしな」
「ですので誠に申し訳ありませんが、参加の有無は、後日改めてお願いしたいと思います……宜しいでしょうか?」
「勿論かまわぬ。今すべてを決める事もあるまい……その辺りは、明日以降アンリエットと決めてくれ。皆もそれで良いかな?」
生徒達の硬直が溶けて、カクカクと首を縦に振っていた。
「では謁見は終わりにしよう。晩餐会の部屋まで案内させるので、存分に楽しんでくれ。我々も後から行こう」
と謁見が終了した。
あかりと、手を繋いだまま廊下を進んでいると有馬が追って来た。あかりを神崎に頼み相手することにした。
「おい水木!みんなが国の為に立ち上がろうとしてる時に、お前はなんで水を差すんだ!」
(いやみんなって誰の事だよ……)
「お前のせいで、保留の奴が出たじゃないか!みんなの足を引っ張るな!」
(えー)
「みんな参加するって、誰がいつ言ったんだよ?少なくとも、俺やあかりは言ってないぞ?それとも、俺ら以外は全員OK貰ったのか?」
「別にOKなんて貰ってない!でも、勇者として召喚されたんだからみんな運命共同体だ!全員参加するのが当たり前だろ!」
(駄目だこいつ……早く何とかしないと)
「困っている人を助けるのは勇者の義務だ!それを放棄する奴が居るはずが無い!」
(なんだこいつ?頭抱えて逃げ出したいんだけど……こいつも異世界来て、更にタガが外れちゃったみたいだな)
「お前は神崎とかも、前線に送って殺し合いさせたいわけ?」
「楓には殺し合いなんてさせない!」
「つまり神崎は前線には出ないと言う事だよな?」
「当たり前だ!そう言っただろ!」
「なら他の奴も自由参加で良いんだろ?後方支援の奴も居れば、戦争自体参加したくない奴は城に居ても良いわけだな?」
「そっ、それとこれとは話が違う!」
「いや一緒だろ?なんで神崎は良くて、他の奴はダメなんだよ……それじゃ差別じゃねーか」
「俺は差別なんてしてない!話をすり替えるな!」
「いやしてるし……とにかく別に参加は義務じゃないんだし、他の奴はともかく俺とあかりは自分たちで決めるからさ、お前さ、一回自分の発言見つめ直せよ?」
と言って離脱した。
「おい逃げるな!」
と叫んでたけどもうしらね。
少し先の柱の陰で、あかりと神崎が待っていた。
「ごめんね水木君……」
「いや神崎が謝る事じゃないだろ?なんかあいつ、異世界来てタガが外れちゃったみたいだから、少し注意した方が良いかも知れないぞ?」
「聞こえた分の話を繋ぐとそうみたいだね……」
「クラスの中心みたいな奴なんだし、一晩寝てもう少し落ち着いてくれると良いけどな」
「その辺は注意しておきます。ちょっと行ってくるね」
「ああ、気を付けてな。あかり行こうか」
「うん……私は殺し合いなんてしたくないなぁ」
「俺も殺し合いはともかく、能力なさそうだから出来て後方支援だろうな」
「え!?殺し合いは良いの!?」
「いや好き好んで殺し合いはしないぞ?切羽詰まった時とか、あかりを守る時とかそういう時な?」
「あうー」
またまた顔を真っ赤にするあかりだった
所変わって王の私室
「どうでしたか父上勇者様達は?」
「まだわからんが、コウと言う者は正義感溢れているが少し危なっかしいな」
「そうですね」
「あの者は、確かに言動が勇者っぽいが直情的すぎる。貴族や大臣などに利用されぬように注意しておいてくれ」
この国も一枚岩ではない。
王に内密に事を進める大臣などもいるだろうし、勇者を取り込み力を持とうとする貴族が出てくる可能性もある。
「はい」
「あとはカズヤと言ったか、あの者はお主に質問してきた者であろう?」
「はいそうです」
「あの者は頭が回りそうだな……能力や称号によってはかなり使えるかも知れんな」
「そうですね。称号に期待したいところです。軍師とか参謀とか出ると嬉しいですね」
「そしてお前のお気に入りか?」
「ななな!何を言ってるのでございましょうや!」
「いや言葉使い変だから」
「さ、さあ!晩餐会に出る準備しますですわよ!」
と言いアンリエットは去って行った。
「本当にあいつは頭が回る者が好きだのう……」
少し父親の顔になる国王だった
有馬君がどんどんバカになっていく